小気味いい投球と安定感が魅力

共同通信

 5月11日、野球の日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督の姿は仙台にあった。同日に楽天生命パークで行われた楽天対西武を視察するためだ。

 お目当ての選手は複数いた。楽天なら侍ジャパン常連の浅村栄斗内野手やクローザー候補の一人である松井裕樹投手らだ。

 この日の出番はなかったが、大リーグのヤンキースから復帰した田中将大投手もその一人だ。

 西武では堅守の源田壮亮内野手に、打てる捕手として魅力のある森友哉らの動きも気にかかる。そんな中で、ひときわ輝いていたのが21歳の平良海馬投手だった。

 セットアッパーとして、いつも通りの八回に登板。同点の緊迫した場面でも、堂々とした投球で打者3人をわずか9球で料理してベンチの期待に応えた。

 これで開幕以来20試合連続無失点(5月11日現在)。今や日本一の安定感を誇る中継ぎ投手と言っていい。

 平良の名が全国区になったのは昨年のこと。最速160キロの快速球を武器に頭角を現し、中継ぎのエース格として1勝1セーブ33ホールドの活躍が認められてパ・リーグ新人王に輝いた。

 ぐいぐいと速球で押す投球は小気味いい。いわゆる“投げっぷりのいい”若者が、今季はさらに進化を遂げている。

 武器であるストレートをあえて最小限に抑えてスライダー、カットボールにチェンジアップを駆使して投球の幅を広げてきた。

 大リーグのエンゼルスの大谷翔平が投手として登板すれば、対戦する打者は当然160キロの速球を意識する。だからスライダーやスプリットボールで三振の山を築ける。

 平良の場合も大谷同様、打者に快速球のイメージがあるから、より変化球が生きる。

 20試合連続無失点の内容を見ても19回2/3の投球回で奪三振は29。いかに対戦相手に的を絞らせず、手玉に取っているかが分かる。

 「クイック(モーション)で、あの力強い球というのは(打者が)初見で合わせるのは難しいと思う」。試合後、稲葉監督は平良の投球を高く評価した。

 2月のキャンプ視察時点で「ジャパンでも中継ぎはすごく大事。平良投手は球も強いし、バッターとの駆け引きもうまい。緊張したプレッシャーのかかる場面でも堂々と投げられる。期待したい一人」と語っていた指揮官の前で、あらためて素材の良さをアピール、初の日本代表入りが濃厚だ。

 「海馬」の名が表すように沖縄・石垣市で生まれ大自然の中で育った。

 野球エリートではないが、八重山商工高時代は県大会で1勝もしていない。それどころか、3年時には部員不足で他校との合同チームで出場したほどだ。

 未完の大器を、沖縄の球場に視察に来ていた西武・渡辺久信現GMが評価してドラフト4位で入団が決まった。

 そんな「雑草球児」が、ある時テレビ番組で当時西武のエースだった菊池雄星投手(現大リーグ・マリナーズ)が、オフに取り組むウエートトレーニングの姿を見て一念発起。自らも体を鍛えると球速は150キロ台まで上がった。

 今春の自主トレ、キャンプでは主戦投手格の高橋光成が平良に“弟子入り”した。

 年齢は高橋が2歳上だが「先生」と呼んでいたという。多少のジョークはあったにせよ、トレーニング法と快速球を生む秘訣を学びたいとの思いがあったからだ。

 今やエースからも一目置かれるほどの存在なのだから、五輪メンバーに選ばれても驚きはない。

 チームは開幕から故障者続出で苦戦が続いている。主軸打者の山川穂高栗山巧らが戦列に戻ってきたと思ったら、抑えエースの増田達至が不調で2軍での調整を命じられる。

 そんな苦しいブルペン陣を、リード・ギャレットとともに平良が支えている。

 昨季のセーブ王に輝いた増田に対するベンチの信頼感は揺るぎないが、近い将来守護神の座を平良に明け渡す時期は必ずやって来るだろう。

 コロナ禍で、開催を巡りさまざまな議論が交わされている東京五輪。それでも日の丸を背負う平良の快投は見てみたい。何せ、昨年の対外国人選手の成績は、22打数1安打13奪三振と抜群なのだ。

 底知れぬ潜在能力を感じさせる逸材の今後が楽しみである。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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