守備を意識しながらフランスに4―0の大勝

共同通信

 豪華メンバーのブラジルに1―0の勝利を収めた「マイアミの奇跡」。これを含む2勝を挙げたにもかかわらず1次リーグで敗退した1996年アトランタ五輪を知る者には不安がある。2チーム勝ち抜けの4チームのリーグ戦で、1弱がいると3チームが2勝1敗で並ぶことがある。日本は得失点差であの大会を去ったが、かなり不完全燃焼だった。

 また同じことが起こるのでは。相手は思うような選手の招集ができなかったとはいえ、強豪のフランスだ。点差によっては敗戦で立場がひっくり返ると考えると、一切楽観はできなかった。しかし、終わってみれば予想もしなかった4―0の完勝。あらためて日本五輪代表の潜在能力の高さを「見直せ」と言われているような感じがした。

 中2日の過酷な連戦が続く。本来ならば2勝しているチームは、控えメンバーを使う「ターンオーバー」で戦える立場にあるのだが、それも怖くてできない。森保一監督がメキシコ戦から入れ替えたのは3人だった。

 よく考えられた人選だった。けがの癒えた冨安健洋が板倉滉に代わったのは、チームの基本形だろう。他の2人は1トップと2列目の左のポジション。先発した南アフリカ、メキシコの2試合では攻撃だけでなく驚くような運動量で守備にも奮戦した林大地は休ませる必要があった。前田大然は隠し玉として取っておきたいので、万能型の上田綺世が起用された。

 林と同じく、第2戦で攻守に奮戦した相馬勇紀も休ませたい。そうなると左にはドリブラーの三笘薫が起用されるのか。結果として、ここに起用されたのは旗手怜央だった。左サイドバックとしては中山雄太の第2チョイスだが、このチームが立ち上げられた当初はアタッカー。川崎フロンターレでサイドバックとしてプレーの幅を広げたことで、攻守に幅広いプレーを身に付けた。

 へたをすれば、フランスとの立場が逆転することを考えれば、攻撃のポジションでも守備力が必要だった。メキシコ戦での残り10分あまり、三笘が入ったことで日本はリズムが悪くなった。それは三笘がドリブルをカットされることで、メキシコの数的不利が関係なくなったからだ。三笘の個の力で攻める能力は間違いなく武器だ。ただ、失点を防ぎながらの試合運びには、旗手の方が計算できたのだろう。

 ビッグトーナメントを勝ち抜くためには、チームを勢いづかせるラッキーボーイが必要だ。能力的には大きな驚きとはいえないのだろうが、ゴールを決めるということについては20歳の久保建英がその役を担っている。3試合連続の先制点を得意の左足で決めた。前半27分、久保の横パスを受けた上田が、ストライカーらしいプレーを見せる。右サイドからのパスをDFの背後に持ち出すと、角度のないところから強引にシュート。ボールはGKベルナルドニにはじかれたが、こぼれ球を久保がゴールに送り込んだ。

 フランスに実質的にとどめを刺したのは前半34分の2点目だろう。久保のスルーパスから再び上田がシュート。GKのはじいたボールをゴール前まで駆け上がってフォローした酒井宏樹が無人のゴールにプッシュ。これで「4点が必要」となったフランス。日本が相手の戦意をくじく追加点を挙げた。

 シュートを放つ。それがいかにゴールの可能性を高めるかを上田は示した。直接決まらなくても、こぼれ球に反応すれば1点だ。

 後半25分とアディショナルタイムに、それぞれ三好康児と前田が追加点を決め、予想もしなかった4―0の大勝。1次リーグを3戦全勝で突破したのは日本ただ1チームだった。もちろん、気候に慣れているし、生活面でもあまり不自由さを感じないというホームのアドバンテージが大きく関係している。ただ、それに加え、勝ち上がるチームだけが持つポジティブな流れを味方につけている気がする。

 最初の2戦と同じく、日本は本当に良い時間帯にゴールを挙げた。それも先制点だ。守備が安定しているから結果として先制点になるのだが、常に自分たちのリズムを保って試合を進められるというのは、精神的にも楽だ。ましてや試合は高温多湿の環境で行われている。同じ走るのでも、主導権を持って走るのと、ビハインドで走るのとでは肉体的にも、精神的にも消耗が違うだろう。それを考えれば、ここまでは理想的な展開といえる。

 酒井がこの大会で2枚目のイエローカードをもらって、決勝トーナメント初戦は出場停止となった。しかし、対戦するニュージーランドは勝ち上がった中では、おそらく最も力が劣る。油断さえしなければ、第3戦でできなかった「ターンオーバー」を使って、かなりの確率で勝てるだろう。主力を休ませるチャンスだ。

 勝負はメダルを懸けた準決勝からになる。対戦相手はスペインとコートジボワールの勝者になる。どちらがきても消耗しているだろう。そのチームをどのようにたたくのか。日本がコンディションを一度リフレッシュした状態に持っていけたなら、8月3日の準決勝でメダルを確定する確率はかなり高くなるのではないだろうか。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材は2018年ロシア大会で7大会目。

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