ベガルタ仙台が12試合ぶりの勝利

共同通信

 東京五輪が開催された夏。7月と8月の2カ月間に行われたリーグ戦8試合で一度の勝利も収めていない。さらにさかのぼれば、11試合も「試合後の喜び」を味わっていない。ベガルタ仙台のサポーターはどんな気持ちで見つめていたのだろうか。4チームがJ2に自動降格する今季のJ1。シーズンの約3分の2を消化した。下位に低迷するチームの関係者は例年以上に危機感を持っているのではないだろうか。

 第27節まで18位。第28節の結果によっては最下位の可能性もあった仙台が、ガンバ大阪のホームに乗り込んだ9月12日の試合。13位のガンバも降格圏の17位とは勝ち点で7しか離れておらず、どちらも負けられない試合だった。

 試合前の予想では、双方が守備的になるのではと思われた。なにせ、両チームそろって前節までの27試合で挙げた得点はわずか19。これはリーグ最少だ。複数得点を挙げた試合もあるが、2点が最多。攻撃的な試合が展開することは考えにくかった。ところが、点の取り合いになった。結局、両チーム合わせて5ゴールが記録された。

 勝敗を分けたのは、スコアが動く前の2つのプレーだったのではないかと思う。

 開始9分、ガンバのFWパトリックと仙台のDFアピアタウィア久が競り合ってつぶれる。そのこぼれ球が、ガンバの小野裕二の前に。完全なフリーだった。しかし、リーグでもトップ級のセーブを見せる仙台のGKヤクブ・スウォビィクが素晴らしい飛び出しでコースを消した。ボールに触れたわけではないが、小野のシュートミスを誘うファインプレーだった。さらに前半34分にも、ポーランド代表歴のある名手のファインセーブが仙台を救った。正面から狙い澄ました矢島慎也の右足のシュートはゴール左隅を襲った。それを抜群の反応でダイブ。的確にはじき出した。

 2点のビハインドを背負ってもおかしくなかった。それを無失点でしのいだことが、仙台の攻撃面にも良い影響を与えた。得点を挙げたのは8月に加入、出場4試合目となる新戦力だった。

 巧みなポジション取りから生まれたゴールだった。前半37分、右サイドをオーバーラップした蜂須賀孝治が質の高いクロスをゴール前に送った。これにヘッドで合わせたのが富樫敬真だ。DF2人の間に巧みに入り込んで、フリーで合わせたゴール右へのシュート。GKがほとんど反応できない完璧なゴールは、FC東京時代以来3年ぶりのJ1での得点となった。

 一方のガンバも、すぐさま反撃に出た。失点直後の再開のキックオフ。一度も仙台にボールを渡すことなく、ゴールをたたき込む。前半39分、左サイドから藤春広輝が上げたゴール前へのセンタリングを矢島がヘッドで流し込んだ。

 ノーホイッスルで、あっという間に奪われた同点ゴール。それでも、ショックを見せることなく仙台は攻め続けた。そして前半42分に、再びガンバを突き放した。右サイドで得たFK。上原力也の正確なキックを、再びヘッドで合わせたのが富樫だった。「加入して3試合ともふがいない試合だった」。そう話すFWは汚名返上の活躍でチームに勢いをもたらした。

 一つの勝利をつかむのが、こんなに大変なのか。特に長期間にわたって勝っていないチームにはよくあることだ。内容的には問題ないのだが、不運が襲う。サイドチェンジされたパスをガンバの矢島がダイレクトで折り返したボール。これが仙台の蜂須賀の腕に当たり、PKが宣告される。これをパトリックが豪快に決めて同点。後半15分にスコアは再び2―2の同点になった。

 ここからは両チームにとって未知の世界。何しろ、両チームとも今季3得点以上の試合が一度もない。

 勝負に出たのは仙台だった。後半21分、手倉森誠監督は中原彰吾、西村拓真、フェリペカルドーゾと攻撃の3選手を同時に投入する。この策が見事にはまった。

 後半34分、見事なカウンターがさく裂する。中盤から中原が前方左サイドにいた西村に縦パスを通す。同時にフェリペカルドーゾが西村と交差するようにダイアゴナルに走る。この動きが相手を惑わした。西村はガンバの昌子源をわずかに右に外すと、右足の美しいコントロールショットでゴールを打ち抜いた。「長い間、(ゴールを)取れていなかったんで、チームを勝たせることができてよかったです」。値千金の決勝点。3―2とする得点が、仙台に12試合ぶりの勝利をもたらすゴールとなった。

 順位表ではかなり厳しい位置にいる。それでも手倉森監督はポジティブだ。試合前に選手たちに、こう声を掛けたという。

 「(ガンバ戦も含め)残り11戦の中で2桁順位との対戦が7回ある。(前日に大分が勝ったので)今は下から2番目だけど、絶対(上位を)食ってやるんだと。そういう思いになれる対戦相手が残っているだろう」

 残すは10試合。そこで獲得できる勝ち点は最多で30ポイント。J1残留争いは、まだどうなるか分からない。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材は2018年ロシア大会で7大会目。

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