ドラフトで14人の育成選手指名

共同通信

 今年のプロ野球ドラフト会議が10月11日、東京都内のホテルで行われた。

 「高校ビッグ3」と呼ばれた小園健太(市和歌山―DeNA)森木大智(高知―阪神)と並ぶ、ノースアジア大明桜の157キロ快速右腕、風間球打投手の1位指名に成功したソフトバンクだが、もう一つ注目を集めたのが大量14人に及ぶ育成選手の指名だった。

 過去のドラフトを見ても、昨年12人を指名した巨人を上回る、史上最多の育成枠獲得だ。

 常勝チームの指揮官・工藤公康監督の今季限りの退団が報じられている。

 直近5年で4度の日本一。今や巨人に代わって球界の「新盟主」と呼ばれるホークスだが、今季は予想外の苦戦が続き、13日現在4位に低迷。残り試合を考えると、クライマックスシリーズ進出圏内の3位に入るのは難しい状況だ。

 Bクラス転落なら8年ぶりとなる。工藤監督はその責任を取って退任する。

 不振の要因は故障者続出が最も大きい。エースの千賀滉大や主砲の柳田悠岐が開幕から出遅れた。

 さらにリバン・モイネロ森唯斗と投手陣の故障で「勝利の方程式」は崩壊した。

 打線でも昨年まで重要な得点源となってきたジュリスベル・グラシアルの戦列離脱などで破壊力を失っていった。

 一方で、今年の低迷は工藤監督だけの責任なのかという声がチーム内外にあるのも確かだ。

 昨年オフに球団OBであり、侍ジャパンの監督も務めた小久保裕紀氏をヘッドコーチ(HC)に招請、誰もが次期監督候補と認めた上での入閣だった。

 事実、工藤監督も主に野手陣の育成面を小久保HCに任せて、自身は投手陣を見る分業制を敷いて戦いに臨んだ。

 しかし、結果は投打ともに低調のまま。「小久保HCが松田宣浩今宮健太らベテランに気を使うあまり、若手への切り替えが遅れた」という担当記者の声まで聞かれる。

 「二頭政治」がチームの不振を招いたのかもしれない。

 気が付けばチームは老齢化が進んでいる。38歳の松田と川島慶三、今季限りの現役引退を発表した長谷川勇也が36歳。他の野手も30代が多く、世代交代の波は確実にやって来ていた。

 ソフトバンクの王国づくりの源は育成システムにある。

 大黒柱の千賀と女房役の甲斐拓也は、ともに2010年の育成ドラフト組。他にもエース格に成長した石川柊太に、野手では周東右京、牧原大成らも育成から這い上がってきた。

 1、2軍の下に育成枠で獲得した選手を中心に3軍システムを構築したのもソフトバンクが最初だ。

 可能性のある若手を多く集めて、最新設備を誇る練習場で鍛える。厳しい生存競争があって、隙のない強豪チームは出来上がってきたのだ。

 だが、自慢の育成システムも一段落して、気がつけば一時ほどの勢いはない。そんな危機感が今回の14人に及ぶ大量の育成選手指名につながった。

 巨人がFA、トレード、外国人選手の獲得で補強を繰り返すのに対して、ソフトバンクは育成を基本方針としてきた。

 9月中旬のことだった。連敗の続くチームに対して孫正義オーナーは自らのツイッターでこう発信している。

 「攻めよ。勝ちたいなら」

 日頃、資金は出すが、口は挟まないと言われる同オーナーにしては珍しい叱咤激励だった。上昇気流に乗れないチームに、ヤキモキしていたに違いない。

 その直後から3連勝、4連勝と反撃態勢に入ったかと思えたが、再び9月下旬から8連敗を喫した。

 今季のペナントレースはセ、パ両リーグとも本命と目された巨人とソフトバンクが沈み、前年最下位に沈んでいたヤクルトとオリックスが大躍進。もし、この両チームが日本シリーズ進出となれば史上最大の「下克上シリーズ」となる。

 王国を築くには大変な努力と労力を要するが、崩壊する時はあっけない。

 チーム創設以来、右肩上がりの成長を遂げてきたホークスが初めて味わう挫折でもある。

 「負けることが大嫌い」と公言する孫オーナーの意向を受けて、このオフは大幅な人員整理と人事刷新が予想される。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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