「6ポイントマッチ」は見応えのあるドロー

共同通信

 3位と4位の間にある差は想像以上に大きい。今夏の東京五輪3位決定戦で敗れた代表チームを持つ日本の人たちは、そのことを痛いほど思い知らされた。この失望感を2012年ロンドン五輪でも味わった吉田麻也と酒井宏樹はどんな感情を持ったのだろう。

 Jリーグでも3位と4位では大きな違いが出てくる。J1の3位以内には翌年のACLの出場権が与えられるからだ。

 前節を終えて勝ち点60のヴィッセル神戸と勝ち点57の名古屋グランパス。10月24日のJ1第33節に3位と4位の直接対決があった。勝てば勝ち点3を獲得でき、しかもライバルの勝ち点を上積みさせないという意味でのいわゆる「6ポイントマッチ」。神戸の三浦淳寛監督が「どの試合も大切だが、特別重要な試合」と位置付けた一戦は見応えのある内容になった。

 立ち上がりから理想的に試合を進めたのはホームの名古屋だった。ダイヤモンド形に組まれた神戸の中盤。アンカーに入ったサンペールの両脇にできたスペースをうまく活用してサイド攻撃が機能した。

 前半6分、カウンターがさく裂する。自陣右サイドのガブリエルシャビエルが広い視野をいかし、目の前にスペースが広がる左の相馬勇紀にサイドチェンジのパスを送る。自慢のスピードでゴールライン深く切れ込んだ相馬は、GKとDFを引き付けて逆サイドにグラウンダーのセンタリング。フリーでゴール前に走り込んだ前田直輝がこれを押し込んだ。完璧な崩しからの得点だった。

 先制点を奪った名古屋は追加点を狙う。巧みな守備組織で神戸のパスをたびたび網に掛けるなかで、前半14分に神戸の菊池流帆の縦パスを狙っていたのが稲垣祥。判断良くパスをインターセプトすると、間髪を入れずにスルーパスを繰り出す。それを受けたシュビルツォクはドリブルで突進。ペナルティーエリア正面で追いすがった菊池を右足のシュートフェイントで倒すと、切り返しから左足でシュート。ボールはタックルに入った神戸のフェルマーレンの股間を抜けゴール右隅に決まった。

 シュートを放ったのが現役のポーランド代表、タックルに入ったのは現役のベルギー代表。ともに今夏の欧州選手権に出場した選手というのが、なんともぜいたく。それにしてもシュビルツォクは正統派のCFらしいCFだ。シュートに持っていくまでの選択肢の多さと、シュートレンジの広さ。残念ながら、このようなCFは日本では長い年月を通して見当たらない。釜本邦茂さんまで半世紀ほど見当たらない。

 守備が持ち味のチームが効果的なカウンターから2点のリード。前半を終えた時点で、名古屋は勝ちパターンだと思ったに違いない。しかし、後半に入り神戸は猛攻を仕掛けた。

 後半9分、イニエスタの芸術的なパスで後半から出場したボージャンが抜け出す。GKとの1対1。名古屋とすれば絶体絶命のピンチだったが、この男がいた。9月の月間MVPのGKランゲラックが、左手一本でファインセーブを見せる。さらに2分後の後半11分、ドウグラスのヘディングシュートを再びランゲラックが美技で防いだ。

 J最高級の守護神が立ちはだかる名古屋のゴール前。それを神戸が破ったのは、後半14分だった。初瀬亮の左CKをファーサイドのフェルマーレンがヘッドで折り返す。そのボールにいち早く反応したのが武藤嘉紀。はずんだボールを右脚付け根あたりでコントロールすると、左足でランゲラックのすぐ横を抜くシュート。これには守護神も対処できなかった。

 後半19分に武藤が放った決定的なヘディングの一撃にランゲラックが指先で触れ、クロスバーに当たってピンチを逃れた後、名古屋にも追加点のチャンスはあった。後半27分にオーバーラップした吉田豊のクロスを抜け出した柿谷曜一朗がフリーでシュートを放つ。「1点もの」のビッグチャンスだった。しかし、神戸のGK飯倉大樹が足でブロック。ファインセーブで追加点を許さなかった。

 この飯倉のワンプレーが、最終的に大きな意味を持った。後半30分すぎ、神戸の武藤がドリブルでゴール前に攻め込む。これに対応しようとした名古屋の吉田ともつれ、倒れ込んだ。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の介入で判定はPK。イニエスタがゴール左上隅に豪快に蹴り込んで2―2とし、後半36分に試合を振り出しに戻した。

 お互いが持ち味を発揮してゴールを奪い、一方で両GKが素晴らしいプレーで失点を阻止した。2―2で引き分けた試合は緊張感があり内容としてとても締まったものだった。確かにお互いが勝ち点3を得て、相手に対して優位に立ちたかったに違いない。それでも考えようによっては、勝ち点1を得られたことで満足する試合だったのかもしれない。

 「GKの好セーブもあった中で、どちらにもチャンスがあり、結果的に見応えのあるゲームになったと思います」。試合後の名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督の感想がこの試合のすべてだったのではないだろうか。見応えのある、印象に残る好試合だった。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材は2018年ロシア大会で7大会目。

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