スーパースター大谷翔平を支える好漢

共同通信

 メジャーリーグ、エンゼルスの大谷翔平の調子が上がってきた。

 6月21日(日本時間22日)のロイヤルズ戦では2本塁打を含む8打点の大暴れ。続く22日の同カードに先発すると、自己最多タイとなる13奪三振の快投で6勝目をマークした。

 今や、元祖「二刀流」のベーブ・ルースさえしのぐスーパーマンは、世界中の野球ファンを虜にする。その存在は「至宝」とさえ言える。

 そんな大谷が“事件”に巻き込まれそうになったのは26日のマリナーズ戦のこと。

 エンゼルスの先発ワンツがマリナーズの4番ウィンカーに死球を与えたのをきっかけに、両軍選手が乱闘となり、試合は18分間中断の末、両チーム合わせて8人が退場処分となった。

 メジャーリーグにはいくつかの「掟」が存在する。相手に死球をぶつけられそうになったら、報復は当たり前。さらに乱闘となれば全員参加も絶対条件。外野の後方にあるブルペンからでも選手は駆けつける。

 大谷にとっては「初参戦」となった大乱闘だが、輪の後方で止めに入る大谷よりも話題を集めたのは意外な人物だった。専属通訳の水原一平さんだ。

 スーパースターにもしもの事があったら一大事と、身をていして大谷をかばう必死な姿にネットには「英雄的」や「史上最高のボディーガード」と水原さんをたたえる声が多く寄せられた。

 常に大谷のそばに水原さんがいる。単に通訳の業務だけではない。自動車の運転から、試合前のキャッチボール。試合中にはタブレットを手に相手選手のデータや攻略ポイントを伝えている。通訳の枠を超えた私設マネジャーでもある。

 野球との関わりは2010年にさかのぼる。当時レッドソックスに入団した岡島秀樹投手の専属通訳として採用された。

 料理人の父がロサンゼルスで店を開くために子どもの時に移住。カリフォルニア大リバーサイド校卒の英語力が生きた。その後帰国して、日本ハムの通訳時に大谷と知り合う。17年、大谷のメジャー挑戦が決まると二人三脚の旅が始まった。

 今でこそ、チームメートの間でも一目置かれる存在となった大谷だが、初年度から溶け込めたわけではない。

 言葉の壁に苦しむのを目の当たりにすると、選手間ではやっているゲームを覚えて大谷に伝授。昨年のオールスターゲームでは、前日に行われるホームラン競争の捕手役に指名された。

 そんな献身的な仕事ぶりに、シーズンオフには球団から「最優秀通訳」として表彰された。

 球団と雇用関係にありながら、実質大谷のマネジャー的な役割までこなす水原さんが最も苦しんだのは、昨年から今春にかけて続いた労使交渉だった。

 ロックアウトの期間中は選手と球団職員の接触を禁じられている。そこで取った窮余の策は、球団を一時退職するというものだった。あくまで、大谷サイドに立ってサポートを続けている。

 今は再び球団職員に戻ったが、なかなかできることではない。そんな大谷一筋の仕事ぶりが評価されて、今では多くの「一平ファン」が存在するほどだ。

 「自分が最も感謝するのは一平さん」と大谷は言う。水原さんにとっても、スーパースターの身近にいて、底知れぬポテンシャルを見てきた。他の選手の何倍も努力している大谷も知っている。

 通訳とは本来、選手を補助する「黒子」だ。しかし、水原さんにそれ以上の魅力を感じるファンは多い。乱闘で体を張って大谷を守る姿がそれを物語っている。

 日本時間の7月20日に行われるオールスターゲーム。大谷が選ばれれば、今年も水原さんが寄り添っているはずだ。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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