柳ケ浦、10人で圧勝発進 バス横転事故乗り越え

2010年07月14日 17:13
スタンドで吉川さんの遺影を掲げて声援を送る野球部員
スタンドで吉川さんの遺影を掲げて声援を送る野球部員
 第92回全国高校野球選手権大会(8月7日から15日間・甲子園)は13日、各地で地方大会を行った。大分大会は柳ケ浦が1回戦で大分豊府に8-1の7回コールド勝ちで発進。昨夏の大会で開会式に向かうチームバスが横転し、当時2年生だった吉川将聖(しょうせい)さんを亡くした柳ケ浦は、吉川さんと同級生の現3年生を中心としたメンバーで甲子園を目指す。鹿児島大会は県内屈指の左腕、鹿児島実の用皆崚(3年)が国分を6回無失点に封じ、10-0の6回コールドで16強に進んだ。

  ◇  ◇

 亡き友との約束を果たす最後の夏が始まった。昨夏のバス横転事故を乗り越えて、柳ケ浦が逆転コールド発進。13安打で8点と、雨雲を吹き飛ばすような快音を響かせた。「9人じゃなくて10人で戦っている。1人多いのだから絶対に勝てる」。主将の田嶋は事故で亡くなった同級生、吉川将聖さん=当時(16)=の見えない力を感じ取っていた。

 雨で1日順延し、この日も予定より1時間半遅れて始まった今夏の初戦。初回先頭打者アーチを浴び、雨脚が強まった2回途中には42分間中断する波乱の幕開けとなった。それでも「勝ちたい気持ちが乗り移った試合だった」と藤久保監督がうなずくように、苦難を乗り越えてきた柳ケ浦ナインの気持ちが切れることはなかった。

 数々の思いを背負ってマウンドに上がったのは、2年生左腕の小谷だ。立ち上がりこそ不安定だったが、2回以降は散発の3安打。「将聖さん、ここ抑えられるかな?」。スタンドで見守る吉川さんの遺影に語りかけながら、丁寧に低めに投げ込んだ。

 入学間もないころ、ブルペンで遠慮していた小谷に、「3年生だったら気兼ねするだろうけど、おれだったら気楽に投げられるだろう」と声をかけたのが1学年上の捕手だった吉川さんだった。それ以来、連日のように球を受けてもらった。

 1年前の事故では、小谷も左肩を骨折。病院で「もう投手は無理かも」と告げられた。1カ月間、腕が上がらなかったが、9月にキャッチボールを再開。くじけそうな時には吉川さんの写真を見つめ、2人の夢をかなえるためにマウンドに戻ってきた。

 今もチームのバスは事故現場を避けて通る。心の傷が完全に消えることはないが、痛みを力に変えるムードがある。「夏が近づくにつれて、一人一人が胸の中にしまっていた思いを言葉にするようになった。結束も強まりました」とは吉川さんと同級生の藪野。合言葉は「将聖を甲子園に連れて行こう!」。柳ケ浦が聖地への第一歩を踏み出した。 (丹村智子)

=2010/07/14付 西日本新聞朝刊=
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