【東筑21年目の甲子園】<上> 臨機応変に「考える野球」

大勢の市民らが見守る中、応援部にエールを送られる東筑高野球部
大勢の市民らが見守る中、応援部にエールを送られる東筑高野球部
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 7日に開幕する第99回全国高校野球選手権大会に、東筑高(北九州市八幡西区)が出場する。夏の甲子園は21年ぶり。昨年は北部大会初戦で敗れたが、青野浩彦監督(57)は「生徒の成長と頑張りで甲子園を勝ち取った」という。その強さの秘密を探った。

 平日の2日朝、猛暑にもかかわらず、JR折尾駅東口に約500人が集まった。東筑高から徒歩約7分の地元で行われた甲子園への出発式。「すごい人数。うわ~」。見渡した選手がいつもと違う光景に驚いた。

 甲子園出場経験のある私学の強豪4校を次々に倒し、134チームの頂点に立った東筑高。その最初の難関、5回戦の九産大九州戦(1-0)がポイントだった。「九産大九州(福岡市東区)に勝って勢いに乗り、瞬く間に決勝まで進み(選抜ベスト8の)福岡大大濠(中央区)を破った」と青野監督は振り返る。

 ■エースを育て

 ずっと勝てない「壁」が九産大九州だった。春の県大会では石田旭昇投手(2年)が6失点。「球速の限界を感じた。内角を攻めるしかない」。その後の投球練習ではなるべく打者に立ってもらった。何度も当ててしまいながらも体近くを攻めて腰を引かせ、次に外側いっぱいに投げたり、変化球でタイミングをずらしたりする練習を繰り返した。

 死球の可能性が高い内角攻めは、プロの投手でも難しい。ピンチの時こそ必要だが、分かっていても萎縮する。石田投手もマウンドで何度も動揺した。

 そんな時、必ず2年生エースを落ち着かせてくれるのが「俺のエラーからのピンチ。失点したら俺の責任。思い切って投げろよ」などと笑顔で声を掛けてくれる上級生たち。石田投手にとり、マウンドは「『緊張して行きたくない場所』から、『落ち着いて投げることを楽しむ場所』に変わった」という。だからこそ、ピンチでも腕が振れる。

 ■弱点を得意に

 東筑高はバント技術でも強豪校を苦しめた。5回戦、準決勝と決勝は、それぞれ違う選手がスクイズを決め、決勝点になった。

 実は春先の練習試合でバント失敗が続いた。夏の大会前、安部滉平主将(3年)の発案で練習グラウンドの一角に、誰もが使えるバント練習エリアを設けた。勉強時間の確保や他の競技との関係で、練習の時間や場所に制約がある進学校。空いたわずかな時間、集中してバント練習をし、皆が「得意」にしてしまった。

 練習中、青野監督が大声で指示を出すことはない。「行動一つ一つに責任感が生まれ、強くなる」と信じるからだ。安部主将を中心に選手がメニューを考えて実践するスタイルを徹底している。

 東筑高の夏の甲子園出場は5回で、うち3回が「石田」姓のエースを擁していたという「石田伝説」が話題になった。勝ち上がるたびに注目度も増したが、石田投手や選手たちは楽しんで野球をやっているように見えた。

 そこには、臨機応変に対応できる「考える野球」を実践し、効率的な練習で培った揺るぎない自信が垣間見えた。新たな伝説が生まれるかもしれない。

=2017/08/03付 西日本新聞朝刊=

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