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【西スポ・ベンチ裏】3年夏終えても甲子園帰還の夢 ドラマチック明豊、控え外野手は阪神園芸入り目指す

7回無死、代打で登場するも左飛に終わった明豊・松野
7回無死、代打で登場するも左飛に終わった明豊・松野
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 10点のビハインドを背負った7回無死、明豊(大分)の松野航希(3年)がピッチャーへの代打として送り込まれた。チーム3試合目で初出場。逆らわずにはじき返したが、打ち上げて左飛に倒れる。一塁へ走るとき、夢心地だった。

 「いやあ、いいグラウンドでした。スパイクが刺さる感じも良かったですし、走りやすかったですね」

 天理(奈良)との準々決勝。1回表に6点を奪われた。直後に2点を返し、相手が拙攻を続ける間に3回にも1点を返したが、そこで一時停滞した。逆に6回に5点、7回に2点を奪われ、スコアは3-13。3回戦では延長12回裏に3点差を逆転してサヨナラ勝ちしたが、もはや希望が持てる点差ではなかった。

 そんな状況で先頭打者として打席に向かった。「一球も無駄にできない」。意気込む背中に、仲間は「楽しんでこいよ」と声を掛け送り出してくれた。奈良県橿原市出身。一番の憧れだった智弁和歌山には縁がなく、明豊で甲子園を目指した。背番号15、控えの外野手として乗り込んだ。

 凡退後に投手と交代し、後は声を張り続けるだけだった。10点差のまま迎えた9回裏、ドラマチックな展開を目の当たりにする。無死から切り札の三好泰成(3年)が大会史上初となる代打満塁アーチ。この回から登板した2番手をKOし、なお攻勢をかける。

 四死球と単打でつないで2死満塁。先頭打者にこの回2度目の打席が回ると、明豊の三塁側アルプス席の演奏に、場内360度が乗った。「どこ見ても、お客さんが手拍子してくれれて…」。ベンチの松野は、また夢心地だった。2点打が出て4点差、なお一、三塁。反撃はここまでだったが、手拍子はそのまま、360度の拍手に変わった。

 この回打者11人で6点。「やってきたこと全部、最後、ちゃんと出るんやなと思いました。自分たちに返ってくるんやなと」。仲間たちの猛攻に感無量の松野は、冬場の特訓を思い返して苦笑した。「連続で打つティーを100球やった後、1球ごとにスクワットするティーをやって、また連続ティー、スクワットのティー…朝も、昼も。いやほんと、あのときは練習、行きたくなかったです」

 小学校中学年の夏、父正明さんに手を引かれ、初めて甲子園を訪れた。智弁和歌山の試合を見た松野少年の感動は、当日の全試合を終えた後のグラウンドにもあった。「ずっと見てたんです。帰るときに。何かしてるな…って」。天然芝の上を走る芝刈り機だった。

 大学まで野球を続け、甲子園のグラウンド管理などを行う「阪神園芸」へ進むのが夢だ。「野球に関わり続けたいんです。今日、僕がそうだったように、選手がやりやすいように整備できたらいいですね」。仲間たちで豪快に踏み荒らした内野は、きれいに整え直され、続く準々決勝第3試合が始まろうとしていた。甲子園球児が阪神園芸入りした例も実際にあり、事業拡大に伴い、新卒採用も近年は毎年行っているという。

=2017/08/21 西日本スポーツ=

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