台湾の盗塁王が見た甲斐キャノン「僕も被害者になった」

9回2死一塁、打者・郭永維(右)の時、王威晨の二盗を阻止する甲斐
9回2死一塁、打者・郭永維(右)の時、王威晨の二盗を阻止する甲斐
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9回2死一塁で試みた二盗を甲斐に阻止された王威晨(左)。遊撃手・田中広
9回2死一塁で試みた二盗を甲斐に阻止された王威晨(左)。遊撃手・田中広
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 ◆ENEOS侍ジャパンシリーズ2018:壮行試合 日本5-6台湾(7日・ヤフオクドーム)

 台湾リーグで今季44盗塁を決め、盗塁王に輝いた台湾代表の王威晨(ワン・ウェイチェン、27=中信兄弟)にも、球場の空気が変わったのが分かった。

 日本代表は9回、バッテリーを交代し、投手山崎、捕手甲斐を送り込んできた。1死後、王は中前打で出塁。すると「急に、球場のみんなから『今から対決』という雰囲気が出てきた」と言う。

 先の日本シリーズで、甲斐はシリーズ新記録の6連続盗塁阻止で、ソフトバンクの2年連続日本一に貢献。打撃面での活躍ありきだった前例を覆し、MVPにも輝いた。王は「日本シリーズで守備でMVPを取った」という異色さも理解していた。

 「僕も甲斐選手のことを知っているし、彼も僕のことは知っていたと思います。僕にとって、いいパフォーマンスを見せる、大事なチャンスでした」。捕手甲斐との対決は「台湾を出発するときからイメージしていた」場面だった。

 甲斐は3日まで日本シリーズに出場していた疲労を考慮され、9回の1イニングのみの出場。打順も含め、王にとって願ってもない巡り合わせだった。一度きりの勝負。「ビデオで見ていただけだったので。実際に、この打席だけでしっかり見ようと」。次打者の8番・林祐楽の打席ではチャンスをうかがいつつも、山崎のモーション、甲斐の動きの観察に主眼を置いた。

 3球目まで外角のストレート。当然の警戒感がうかがえた。2ナッシングからの4球目で初めて変化球だったが、ツーシームでそれほど遅い球ではない。林は空振り三振で2死。9番・郭永維に打席が回った。

 王は初球ストレートでスタートを切った。甲斐も二塁送球へ身構えたが、打者がファウル。2球目のストレートは低めに外れ、3球目、これも低めに外れたツーシームでもスタートは切らない。4球目、また低めに外れたストレートで走った。「自分のスタートもあまり良くなかった」が、結果は余裕のアウト。「本当にキャッチャーもピッチャーも反応が速くて、完敗でした」と潔かった。

 本来のスタートを切れなかった。甲斐が一塁けん制のそぶりを見せていた影響については「それはない」ときっぱり否定し、プライドをのぞかせる。「感じたのは球の速さと、テンポの速さ」という。「バッテリーのテンポが、もともと速かった。しかも(早い段階でスタートに)気づかれましたから」。タイミングを計る間を与えられなかったことが、最大の敗因と分析した。

 3アウトチェンジ。「結果は失敗だったし、甲斐選手の勝ちだった。それでも悔いはありません」と、王はすがすがしい表情だった。「あれだけ送球のいいキャッチャーは台湾にはいないと思う。アジアに限らず、世界的に見ても送球の速さが上位の選手じゃないですか」。多少の社交辞令も込みだろうが、相手をたたえた。

 王はこの試合2安打1得点。「打撃も守備も、走塁も力は発揮できた。自分にとってはいい経験でした」とうなずくと、9日から日米野球に臨む甲斐にもエールを送った。「自分も被害者になりましたから(笑)。メジャーの盗塁を捕まえてほしい。自分もそうだし、コーチや、監督もみんな言ってたんですよ。このキャッチャーは、本当にすごいと」。悔しさと、勝負の余熱を帯びて、球場を後にした。

=2018/11/07 西日本スポーツ=

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