21世紀枠の熊本西、亡き友と「常に笑顔」で挑む 「あいつと一緒に」夢舞台

21世紀枠での選抜大会出場が決まり、帽子を投げて喜ぶ熊本西の選手たち
21世紀枠での選抜大会出場が決まり、帽子を投げて喜ぶ熊本西の選手たち
写真を見る
練習開始前、バックネット裏に置かれた花束の前で手を合わせる野球部員
練習開始前、バックネット裏に置かれた花束の前で手を合わせる野球部員
写真を見る
練習試合で亡くなった部員の話をする熊本西の横手文彦監督
練習試合で亡くなった部員の話をする熊本西の横手文彦監督
写真を見る
写真を見る

 校長室に吉報が届いた瞬間、感極まった横手文彦監督の頬に涙が伝った。「いろんなことがありながら、選手たちは前を向いて頑張ってくれた」。昨年の練習試合中に部員を亡くす事故が起きた中で得た選抜切符。喜びが込み上げると同時に悲しい思い出がよみがえる複雑な胸の内を隠さなかった。

 部員全員が地元中学出身。2016年の熊本地震での被災を乗り越え、高校に入って硬式ボールを握った選手がほとんどだ。「力では強豪にかなわない分、一体感を意識した。守り勝つ野球で一球一球丁寧なプレーを心掛けてきた」とエースで主将の霜上幸太郎(2年)は胸を張る。一体感の大切さは熊本地震後、避難所で支援物資を運ぶうちに選手個々が実感した。ボランティアへの思いも強く週末には近隣を清掃するほか、地元の小学校やこども園と野球を通じて交流してきた。

 その交流が部員を救ってくれた。昨年11月に2年生部員が練習試合中の死球で亡くなり、チームは約10日間練習を自粛。遺族の願いもあって活動を再開し、交流会に臨んだ。傷心の部員たちを癒やしたのが、満面の笑みでキャッチボールをする小学生たちの姿だ。「逆に元気づけられた。応援してくださる声も力になった。ここまで来られたのは自分たちの力だけじゃない」と霜上主将は感謝する。

 スローガンは常に笑って勝つを意味する「常笑常勝」。部員45人の中でそれを最も体現していたのが、ムードメーカーの亡くなった部員だった。練習前にグラウンドで手を合わせ、甲子園出場決定を報告した選手たち。霜上主将は「あいつと一緒に戦い、甲子園で2勝して地元の方々に元気や勇気を与えたい」と誓う。感謝の思いもエネルギーに、亡き友と熊本県民のため、笑顔で全力野球を披露する。 (末継智章)

   ◇    ◇

選出は「総合的判断」高野連会長 選考理由

 熊本西は昨秋、練習試合での死球で部員が死亡する不慮の事故があった。21世紀枠の選出に先立ち、各地区の代表者が推薦理由を発表する3分半のプレゼンテーションでは、この事故について触れられたが、選考理由の発表に際しては事故に関する言及はなかった。

 日本高野連の八田英二会長は「総合的に判断しました」と語り、3年前の熊本地震後、自身が被災者でもある部員らがボランティア活動に協力するなどして、地域とのつながりを深めたことなどを、選考理由の大きな要因に挙げた。

 また九州4校は、昨秋の九州大会4強が順当に選出された。補欠1位校の興南(沖縄)は、大分、日章学園との比較で打力の弱さが指摘された。

 ◆熊本西高校 1974年10月に設立され、翌年4月に開校した県立校。普通科、理数科、体育コースがある。野球部は76年創部。甲子園は85年夏に初出場。部活動はなぎなたやラグビー、柔道の女子も強豪。主な卒業生はラグビー元日本代表の平島久照(神戸製鋼)ら。生徒数は1038人(女子467人)。熊本市西区城山大塘5の5の15。柿下耕一校長。

=2019/01/26付 西日本スポーツ=

西日本新聞のイチオシ [PR]

ホークス下剋上日本一!西スポ2018アーカイブス

西日本新聞のイチオシ [PR]