マラソン界で勃発した熱すぎるシューズ競争 「厚底VS薄底」デッドヒート

【写真・左】ニューバランスの新作発表会に出席した三村氏(左)と神野【写真・右】シカゴ・マラソンで日本記録を出した大迫(ナイキジャパン提供)
【写真・左】ニューバランスの新作発表会に出席した三村氏(左)と神野【写真・右】シカゴ・マラソンで日本記録を出した大迫(ナイキジャパン提供)
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 男子マラソンの日本記録保持者、大迫傑(ナイキ)の足元に注目が集まっている。記録を打ち立てた10月のシカゴ・マラソンで着用したシューズは、かかとの部分が高いナイキ社製の「厚底靴」。2月の東京で16年ぶりに日本記録を更新した設楽悠太選手(ホンダ)も履いていた。この“厚底ブームに待ったをかけたのが数々の名ランナーの靴を手掛けたシューズ職人、三村仁司氏(70)だ。ニューバランス社と提携し、これまで作ってきた「薄底靴」に進化を加えた新商品を発表した。2020年東京五輪を控え、各社が技術開発でしのぎを削る「シューズ競走」はデッドヒートを繰り広げている。

 今月16日に東京都内で行われた記者発表会で、壇上の三村氏が胸を張った。「今までにない履き心地。足は第2の心臓で選手にとって練習しやすい、結果を出せる靴を開発したいとやってきた」

 三村氏は女子マラソン五輪金メダリストの高橋尚子や野口みずき、野球界でも米大リーグ・イチローのスパイクを手掛けた靴作りの名工だ。「足首の硬い人はクッションがある方(厚底)が走りやすい。ただ、日本人は僕が知る限り、10人のうち8人くらいは足首が軟らかい」というのが三村氏の考えだ。

 これまで主にトップアスリートの靴を手掛けてきた三村氏がニューバランス社と共同開発して一般市場でも来月に発売する「NB HANZO V2」は、シカゴで大迫が履いていたナイキ社の最新作「ズームヴェイパーフライ4% フライニット」と比べ、かかとの厚さが約半分の1・4センチしかない。前のモデルは反発性素材とクッション性素材の2層構造だったが、1枚仕立てに改良した。

 三村氏が蓄積した膨大なデータを基に靴型を作り、足を覆う部分の素材も福井の町工場に製造を依頼するなどこだわったという。会見には青学大時代に箱根駅伝で活躍し「山の神」と称せられた神野大地(東京陸協)が出席。「フィット感があって、繊細(な作り)」と、このシューズで来月2日の福岡国際マラソンに挑むことを明かした。

 一方、日本人初の2時間5分台を樹立した大迫が履いていたのは、これまでの常識を覆すシューズだった。年々、軽量化を求めて薄くなってきた靴底が、かかと部分で約3センチになるほど厚いのが最大の特徴。独特の靴底は曲線状で反発力のあるカーボンプレートを柔らかい素材で挟んである。最初は驚いたという大迫も「薄い靴だと疲労が残ってしまう部分があるが、それが軽減される」と好感触を口にしている。

 シカゴでは2時間5分50秒で3位に入った大迫だけではなく上位5人がナイキ社の最新作を着用。9月のベルリン・マラソンで2時間1分39秒の世界記録を出したキプチョゲ(ケニア)も愛用し、2月の東京マラソンで日本記録を16年ぶりに更新する2時間6分11秒で2位に入った設楽は、この一つ前のモデルだった。箱根駅伝の強豪校など、採用する選手やチームが増え、市民ランナーの人気も高まっている。

 国内メーカーのミズノは、衝撃を吸収しながら足元の安定感と前への推進力を生み出す独自に開発した靴底を採用。東京五輪を前にしたトップアスリートの要望やランニングブームもあって、シューズを巡る開発競争は激しさを増すばかりだ。厚いか、薄いか-。ランナーを支える“足元”にも注目だ。(伊藤瀬里加)

=2018/11/21 西日本スポーツ=

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