珍景品のUFOキャッチャー 企画に込めた熊本復興への思い 元銀行員から転身、アマチュア落語家の挑戦

 ゲームセンターのクレーンゲーム機といえば、菓子や縫いぐるみが景品の定番だが、熊本県西原村の農産物販売所に24日、珍しい1台がお目見えした。ケース内に並ぶのは、土にまみれた村特産のサツマイモ。銀行員からアマチュア落語家に転身した地域おこしのリーダー、中村圭さん(31)=熊本市中央区=が企画した。話を聞けば、おふざけどころか、熊本地震で被災した故郷の復興に向けた真面目な挑戦のようで-。

 阿蘇外輪山の麓。広大な農地の中にある「復興市場・萌(もえ)の里」の店先にゲーム機は設置された。雄大な景色の中、中古機の安っぽい音楽が場違いな空気を醸し出す。ケース内のサツマイモも、何だか居心地が悪そうだ。

 「人を呼び込むには、見た目で笑えるものが必要だと思って」。市民団体「Noroshi(のろし)西原」代表の中村さんは真剣な表情で語りだした。

 地震の4カ月後に開店した復興市場は今、集客が伸び悩んでいる。打開策と村特産品のPRを狙い、考えついたのが「からいも(サツマイモ)UFOキャッチャー」。「イモを取る楽しさを知り、次は本当の芋掘りに行きたいと思ってもらう。ゆくゆくは村で就農したいと思う人が出てくれば…」。計画は壮大。目の前のゲーム機とのギャップがすごい。

 西原村で生まれ、熊本市で銀行員をしていたが、地域のために働きたいと25歳で脱サラ。町おこしイベントを企画したり、アマチュア落語家として高座に上がったりしていた。熊本地震で被災した後は、西原村の仮設団地に花を植えるなど支援活動を続け、中村山椒(さんしょ)の高座名で避難所を回り落語も披露した。大事にするのは「笑い」だ。

 原点は、東北大学在籍時に仙台市で経験した東日本大震災。カラオケなどの娯楽を通して明るくなっていく被災者の姿に接し「笑いは苦難を乗り越える力になる」と感じた。

 今の西原村に何が必要か。農家に意見を求め、年間約2700トンの収量がある村のサツマイモに着目。ゲーム機で取ったイモをすぐ焼き芋にできるよう、隣にオーブントースターも置いた。

 ゲームは1回100円。中村さん自身、何度も挑戦したが、なかなかゲットできない。サツマイモは復興市場でも販売しており、3本200円。店で買った方がお得な気もするが「そこはプラスに考えて」。その心は「思い出が心に残ります」。お後がよろしいようで-。

=2018/03/25付 西日本新聞朝刊=

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