早世歌人の短歌を曲に 有田町・笹井宏之さん没後10年を前に 住職の桃谷さん作曲

 有田町泉山の歌人で、2009年に26歳で逝去した笹井宏之=本名・筒井宏之=さんが来年没後10年を迎えるのを前に、顕彰の輪が広がっている。同町上本の法泉寺住職、桃谷法信さん(70)は笹井さんの短歌に旋律をつけて作曲。福岡市の出版社、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)は笹井さんを記念した新人短歌賞を創設し、短歌ムックも創刊した。

 笹井さんは子どものころから音楽や文学に親しみ、繊細な感性を育んだ。自律神経失調症を患い、武雄高を中退後に短歌を始め、07年に歌人岡井隆さんが主宰する未来短歌会に入った。たぐいまれな才能が期待されたが、09年1月にインフルエンザの高熱で生涯を閉じた。その後、歌集「ひとさらい」「てんとろり」などが出版され、幅広い世代の共感を集めながら若者の短歌ブームを牽引(けんいん)し続けている。

 桃谷さんは7月、地元紙で読んだ笹井さんの短歌に感銘を受け、とっさにギターでメロディーをつけた。

 〈葉桜を愛(め)でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある〉

 〈風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける〉

 「笹井さんの短歌には優しさがある。苦しみを知ってこそ表現できる気持ちで子どもたちにも伝えたいと思いました」と桃谷さん。曲名は「葉桜を」としたが、どの短歌でも乗せて歌うことができる。作曲の翌日に泉山に住む笹井さんの両親を訪ねて曲を披露し、父の筒井孝司さん(66)は「ぜひ合唱団の仲間とも歌いたい」と喜んだ。

 父孝司さんは笹井さんが残したブログを更新し続け、未発表作品の整理をしている。歌人のほかデザイナーなど多分野で笹井さんの歌に想を得た芸術作品が生み出されており、「多くの人が思い続けてくれ、本当にありがたい」と話す。

 没後10年を前に短歌界でも動きがある。福岡市の書肆侃侃房は5月、短歌の新人発掘のための「笹井宏之賞」を創設。笹井さんの誕生日の8月1日には短歌ムック「ねむらない樹」を創刊した。題名は笹井さんの代表歌にちなんでいる。

 〈ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす〉

 笹井さんの歌は、たくさんの思いと呼応して、新しい結実の時を迎えている。

=2018/09/02付 西日本新聞朝刊=

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