「書評(新刊)」 (2ページ目)
西日本新聞に掲載された新刊の書評をお届けします。
『天涯の海 酢屋三代の物語』 車浮代 著 (潮出版社、1760円)
江戸後期、現在の愛知県半田市で酒蔵の婿養子となった三六(初代・中野又左衛門)は、余った酒粕(かす)で酢を作ることを思いつく……。安価な粕酢の発明で、江戸に「握りずし」ブームを起こした「又左衛門」三代の挑戦と、彼らを支えた女たちを、史実に基づき描く長編小説。
『丁寧に考える新型コロナ』 岩田健太郎 著 (光文社新書、1056円)
新型コロナ対応の長期化が予想されるなか、感染症専門医である著者が「やってる感」や「分かったフリ」はもうやめようと呼びかける本。各国の流行の差、感染対策、検査やマスクの考え方などを丁寧に考察。
『マンガ歎異抄をひらく』 和田清人脚本・太田寿漫画・伊藤健太郎解説
「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」など、親鸞聖人の言葉が記された『歎異抄』。その解説書『歎異抄をひらく』(高森顕徹著)が昨年アニメ映画化され、話題を集めた。
『アメリカ大統領選』 久保文明・金成隆一 著 (岩波新書、924円)
4年に一度、米国の政治をリニューアルする大統領選。第一線の学者とジャーナリストが、その活力みなぎる予備選・本選の現場を歩き、独特の選挙システムの仕組みや歴史的背景から、二極化する社会の縮図としての闇までを考察する。
『幸せグセがつく きらめきのルール 新装版』 西谷泰人 著
手相家・ライフコンサルタントの著者は、8万人の運命鑑定を通して幸せになる人に共通する「幸せグセ」を発見したという。その開運のエッセンスを「良いことはむやみに人に話さない」「運のいい人と付き合う」「軽い心を持つ」など15の法則として伝授する。
『俺、つしま3』 おぷうのきょうだい 著 (小学館、1100円)
ツイッター上で生まれた大ヒット猫漫画の第3巻。人語をあやつる元野良猫の「つしま」と飼い主の「おじいちゃん」(実は女性)との抱腹絶倒の日常が、人間に心を開かない野良猫軍団や永眠した「ずん姐さん」(猫)との感動の秘話などを交え展開する。
『高倉健 隠し続けた七つの顔と「謎の養女」』 森功 著
高倉健の七回忌にあたり、その知られざる実像に迫った既刊の著書を改題、文庫化した。暴力団組長との交友、江利チエミに注いだ愛情と別離の苦悩、そして死後に明らかになった「最後の女性」……。
『図解 武器と甲冑』 樋口隆晴、渡辺信吾 著 (ワン・パブリッシング・2420円)
美術品としてではなく実用品としての武具の変遷を、詳細なイラスト付きで解説している。例えば、南北朝期、弓が高性能化したことで近接戦闘を苦手とする非武士階級も弓射歩兵として動員できるようになるなど、武具と戦術・戦略の関連性がよく分かる。
『学校も地域もひらく コミュニティ・スクール』 宮﨑稔 著(農山漁村文化協会、1760円)
著者は千葉県の元教員。自身が校長を務めた小学校を地域に開放し、学校運営に地域の声を生かす「コミュニティ・スクール」(学校と地域の協働)の先駆けとなった。
『夢中力』 堀江貴文・野村克也 著 (光文社新書、880円)
元プロ野球監督の野村氏とIT企業を率いた堀江氏。活躍の舞台は異なるが、情報を武器に時間を効率的に使い、好きなことに没頭する「共通項があった」と堀江氏は述懐する。
『子どもを守る言葉「同意」って何?YES、NOは自分が決める!』 レイチェル・ブライアン 著
著者は「性的同意」について分かりやすく説明する人気動画「ティー・コンセント」の共同制作者。子ども向けの本書は、暴力やいじめから身を守る「同意」とバウンダリー(境界線)の大切さについて語る。
『新幹線を運行する技術 超過密ダイヤを実現する高速鉄道の秘密』
『新幹線を運行する技術 超過密ダイヤを実現する高速鉄道の秘密』(梅原淳著、SBビジュアル新書、1100円) 超過密ダイヤながら、事故も遅れも非常に少ない新幹線。発券や清掃などの旅客サービス、最適な列車本数を決める技術、遅延を減らす車両・線路の仕組みなど、「高速」で「正確」な新幹線を支える舞台裏を解き明かす。
『美しい数学入門』 伊藤由佳理 著 (岩波新書、902円)
著者は代数幾何学を専門とする研究者。「文系理系を問わない、現代数学入門」と帯にある通り、日常生活に役立つ数学の考え方や、高校までの数学とは異なる現代数学(線形代数学、群論)について分かりやすく語る。