朝刊連載小説「本心」
連載

「朝刊連載小説「本心」」 (16ページ目)

死んだ母親のVF(バーチャル・フィギュア)と、仮想空間で会話を重ねていく29歳の青年。 あのとき、「安楽死」を口にした母親の本心は―。

2019 9/26 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第17回 第二章 告白

画・菅実花

 僕は、はりきっていた。初めての場所だったので、十分に下調べをして、プランを立てた。

2019 9/25 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第16回 第二章 告白

画・菅実花

 いずれ、この世界から、諸共(もろとも)に失われてしまうなら、肉体が記憶と睦(むつ)み合おうとするのも当然だった。 旅程のすべてを、若松さんのアバターとして辿(たど)ることも可能だったが、長時間は、体力が保(も)たないというので、二箇所の目的地だけに絞ることにした。

2019 9/24 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第15回 第二章 告白

画・菅実花

 自転車や電車で物を運ぶこともあれば、依頼者が行けないような遠い場所、危険な場所に行くこともある。何かのリサーチを頼まれることもあったし、旅行の代理を頼まれることもある。

2019 9/23 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第14回 第二章 告白

画・菅実花

 こういう時には、後悔を残さないために、万が一のためのことはすべてすべきだった。 僕は、母を招き入れるために呼びかけた。

2019 9/22 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第13回 第二章 告白

画・菅実花

 母の後半生の労働が、この小高い丘の上に建つマンションの三階の一室に捧(ささ)げられたという考えは、僕を打ちひしがせるに十分だった。決してその努力に値しないものにさえ、手が届かない努力。

2019 9/21 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第12回 第一章 再生

画・菅実花

ご家族のVF(ヴァーチャル・フィギュア)を望まれる方は、ご病気で意思疎通が出来なくなったり、死別されたりというケイスが多いですから。少しずつ、以前同様のコミュニケーションが回復してゆくことが、大きな喜びになります。

2019 9/20 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第11回 第一章 再生

画・菅実花

「大変、失礼しました。 と神妙に頭を下げた。

2019 9/19 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第10回 第一章 再生

画・菅実花

 ただ、「尤(もっと)もらしい」ことを言っているに過ぎず、実際、こうしたやりとりは、大体いつも、似たり寄ったりなのだろう。情緒的な内容を含んでいるが、銀行の受付機械と、実際はそう大して違わないのではないか。

2019 9/18 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第9回 第一章 再生

画・菅実花

 僕は、半ば救いを求めるように野崎を振り返った。「気になることがあれば、何でも質問してみてください。

2019 9/17 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第8回 第一章 再生

画・菅実花

 野崎が、二人を連れだって戻って来た。 一人は、薄いピンクの半袖シャツを着た、四十前後の痩身(そうしん)の男性で、よく日焼けしているが、僕とは違い、長い休暇中に、ゆっくり時間をかけて焼いたらしい肌艶だった。

2019 9/16 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第7回 第一章 再生

画・菅実花

「はい。成人後の姿を、かなり正確に予想できます。

2019 9/15 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第6回 第一章 再生

画・菅実花

 バッサイアやフィカス、ガジュマルなど、僕でもAR(添加現実)を頼らずに名前を言える木が、目立って生い茂っていて、それが初夏の光を心地良く遮っていた。 よく手入れが行き届いていて、枝にも葉にも張りがあり、生気が感じられた。

2019 9/14 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第5回 第一章 再生

画・菅実花

 と笑ってみせた。あまり陰気な、不安定な精神の人間と思われると、母のVFも、そんな息子向けの仕様にされるかもしれないと懸念したからだった。

2019 9/13 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第4回 第一章 再生

画・菅実花

「――多分、一般的なことくらいしか。「仮想空間の中に、人間を作ります。

2019 9/12 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第3回 第一章 再生

画・菅実花

 話を簡単にしてしまえば、母の死後、僕がすぐに、VF(ヴァーチャル・フィギュア)を作るという考えに縋(すが)ったように見えるだろうが、実際には、少なくとも半年間、新しい生活に適応しようとする、僕なりの努力の時間があった。 それは、知ってほしいことの一つである。

2019 9/11 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第2回 プロローグ

画・菅実花

 だからこそ、尊いのだと、あなたは言うだろうか。「――母を作ってほしいんです。

2019 9/10 7:00
文化

平野啓一郎 「本心」 連載第1回 プロローグ

画・菅実花

 一度しか見られないものは、貴重だ。 月並みだが、この意見には、大方の人が同意するだろう。

2019 9/6 6:30
文化

【動画あり】平野啓一郎さんに聞く 近未来の人間 心や死生観に変化はあるか 6日から小説「本心」

小説家・平野啓一郎さん

 小説家平野啓一郎さん(44)の朝刊連載小説「本心」が6日から始まる。仮想空間をつくる技術が進歩した近未来の社会を舞台に、人間の心について考える物語だ。

2019 9/6 6:00
文化

平野啓一郎さんに聞く「カッコいい」とは何か 自分と社会の関係、考える鍵に 

平野啓一郎さん

 たかが「カッコいい」、されど「カッコいい」とでも言おうか。小説『マチネの終わりに』『ある男』などで知られる著者が10年間の準備を経て上梓(じょうし)した最新刊。

平野氏のメッセージ

私たちの生を、さながら肯定する思想を考え続けています。主人公は、愛する母親を亡くしたあと、仮想現実によって再現された母親と生活することになります。その過程で見えてくる母の本心と、自分の心の変化が主題です。乞うご期待!

平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)プロフィール

 1975年、愛知県蒲郡市生まれ、北九州市育ち。東京都在住。京都大在学中の99年、デビュー作「日蝕」で芥川賞。「ある男」(読売文学賞)など。「マチネの終わりに」(渡辺淳一文学賞)は福山雅治さん、石田ゆり子さん共演で映画化された。

マチネの終わりにの公式サイト

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