この世ランドの眺め
コーナー

「この世ランドの眺め」

作家・村田喜代子さんのエッセーと、装丁家・毛利一枝さんの写真によるコラボレーション連載です。 

2021 12/27 17:30
文化

これでお、し、ま、い 

 朝の台所で鍋、茶碗(ちゃわん)を洗っているとき、よく流れてきたコマーシャル・ソングがいつの間にか消えてしまった。一つのコマーシャルが何年も続くことはめったにない。

2021 11/29 17:32
文化

地図を歩く蟻

 私は子どもの頃からの閉じこもり人間だ。芥川賞から間もなく、アメリカ領事館より現地通訳、一日五千円の生活費付きでアメリカ旅行一カ月間の話が来たとき、断ろうとして家族や友達に「馬鹿(ばか)じゃないか」と呆(あき)れられた。

2021 10/25 17:30
文化

「料理の時間です」

 南極のビルディングみたいな氷河が溶けたり、北朝鮮がまたまたこっちへミサイルを飛ばしたりしているが、私はわが身の不安が差し迫って落ち着かない。私の人生のエスカレータが十年後かそこら、最後の段で停まったら後はどこへ行くのか知らないが、そのときまで自分の認識力というものだけは保っていたい。

2021 9/16 17:32
文化

星と月の山

 コロナ禍の世間と反対に、私は退屈と関係のない生活を送っている。私の居所は山の天辺だ。

2021 8/6 17:32
文化

ああ、美しい音楽

 福岡県筑前町の『大刀洗平和記念館』に、沖縄特攻の企画展を観に行った。久しぶりに外へ出ると、風が吹き抜けて耳が涼しい。

2021 6/25 17:32
文化

百七十歳、バンザイ! 魚だちよ。 この水の下に、ごっつい鉄の艦が沈んでおるのを 見なんだか? 『姉の島』村田喜代子

 今年も六月初めに一冊、新しい小説の本が刊行された。雑誌連載のときは必ず書き上げるという覚悟がいる。

2021 5/24 17:32
文化

閉、じ、こ、も、り 街不意に 林間のごとく黄色くなり 北原志摩子

 この頃、何を言ってるのか、意味のわからない変な言葉が好きになってきた。底の方がどうなってるか見えない、小さい沼を覗(のぞ)いているような感じである。

2021 4/27 17:30
文化

予防接種がやってきた! 神はしも人を創りき 神をしも創りしといふ人を創りし 香川ヒサ『fabrica ファブリカ』

 朝のテレビニュースで、新型コロナの予防接種が始まったと報じている。ところが夫婦交替で予約電話を何十回とか掛けたけど、まったく通じないと言う人々。

2021 3/26 17:32
文化

昭和の片隅で 夢の欠片たくさん落ちていた時代 たまご色した昭和の記憶 松村由利子『光のアラベスク』

 娘時代、カフカの短編小説『断食芸人』を読んだのが先か、それとも福岡県小郡にあった寺で断食体験をしたのが先だったか、記憶は曖昧模糊(もこ)としている。 前回は私の煙草(たばこ)と酒をやめた話を書いたが、食べることをやめるのは簡単ではない。

2021 2/23 17:30
文化

独りの酒盛り 半分のキャベツに迷路ありにけり 竹内愛子

 昔の本は読むべきだ。ときにとんでもないことが書いてある。

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