文芸時評
連載

「文芸時評」

2019 8/1 3:00
文化

今村夏子の芥川賞 マルチ小説誌から受賞は地殻変動? 村上春樹の最新短編 「私小説」か。作家自身の素が表れる

 第161回芥川賞は、今村夏子「むらさきのスカートの女」(「小説トリッパー」春号)に決まった。三度目の候補作での受賞だが、私も今回は獲(と)るだろうと思っていた。

2019 7/1 3:00
文化

高山羽根子「如何様」/芳川泰久「ラップ 最後の旅」

 「如何様(いかさま)」(「小説トリッパー」夏号)は、「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」(「すばる」5月号)で7月17日に決定される第161回芥川賞の候補に挙げられている高山羽根子の新作中編である。物語の舞台は先の戦争が終わって間もない頃、記者をしながら探偵のようなこともやっている女性の「私」は、知り合いの榎田から奇妙な仕事を依頼される。

2019 6/1 3:00
文化

石倉真帆「そこどけあほが通るさかい」/古市憲寿「百の夜は跳ねて」

 第32回三島由紀夫賞は、三国美千子「いかれころ」(「新潮」2018年11月号)に決まった。この作品については初出時に取り上げたので詳しくは触れないが、昭和五十八年(一九八三年)の大阪、河内を舞台に、長年農業を営む旧家の四歳の娘の視点から、家族や親類の悲喜こもごもの挿話が瑞々しい筆致で語られる。

2019 5/1 3:05
文化

「たべるのがおそい」終刊号/片岡義男「窓の外を見てください」

 平成最後の月は、月刊の四誌(「群像」「新潮」「すばる」「文学界」)に加えて、季刊の「文藝」、隔月刊の「三田文学」、年二回の「たべるのがおそい」の刊行が重なって、はからずも主要な文芸雑誌の揃(そろ)い踏みとなった。しかも「文藝」はリニューアル号、「たべるのがおそい」は終刊号である。

2019 4/1 3:05
文化

町屋良平「ショパンゾンビ・コンテスタント」/今村夏子「むらさきのスカートの女」

 「新潮」4月号に早くも町屋良平の芥川賞受賞第一作「ショパンゾンビ・コンテスタント」が掲載されている。とはいえ長さとタイミングからしておそらく受賞以前に書き進められていたものだろう。

2019 3/1 3:05
文化

千葉雅也「平成の身体」/古川日出男「三たび文学に着陸する」

 いよいよ文芸誌の世界でも平成の終わりが始まった。今月はまず「文學界」3月号に「シリーズ『平成考』3」として哲学者の千葉雅也による論考「平成の身体」が載っている。

2019 2/1 3:05
文化

2人受賞の第160回芥川賞 赤井浩太「日本語ラップ feat.平岡正明」

 第160回芥川賞は、上田岳弘「ニムロッド」(「群像」12月号)と町屋良平「1R1分34秒」(「新潮」11月号)に決まった。どちらもこの欄では取り上げなかったので、今回触れておきたい。

2019 1/1 3:05
文化

文芸誌の新年号 存在感増す多和田葉子 新連載、対談など4誌に登場/小山田浩子の2作 言葉によって日常から異界へ

 文芸誌は、季刊の「文藝」を除き、12月に1月号が発売される。かつては新年号らしい特集が組まれることが多かったが、近年はその傾向が弱まってきたようである。

2018 12/1 3:05
文化

高橋弘希「アジサイ」/岸政彦「図書室」/長崎健吾「故郷と未来」

 「アジサイ」(「新潮」12月号)は、「送り火」で第159回芥川龍之介賞を射止めた高橋弘希の受賞第1作である。「妻が家を出てから、庭にアジサイが咲いた」という一文から始まるのだが、ある意味で物語はこの最初の文章を延々と堂々巡りして終わる。

2018 11/1 3:05
文化

三国美千子「いかれころ」/須賀ケイ「わるもん」/日上秀之「はんぷくするもの」/山野辺太郎「いつか深い穴に落ちるまで」

 文芸誌三誌で新人賞が発表された。まず新潮新人賞の三国美千子「いかれころ」(「新潮」11月号)は、昭和58年、ということは今から35年前の大阪、河内で農業で生計を立てている旧家を舞台に、当時四歳の奈々子の視点から、家族や親族のさまざまな相克が描かれる。

2018 10/1 3:05
文化

石井遊佳「象牛」/坂上秋成「私のたしかな娘」/古川日出男「ローマ帝国の三島由紀夫」

 「象牛(ぞううし)」(「新潮」10月号)は、デビュー作「百年泥」でいきなり第158回芥川賞を射止めた石井遊佳の受賞第一作である。 「百年泥」はインドのIT企業で日本語教師をしている日本人女性の生活をマジック・リアリズム仕立てで軽妙に描いた好作だった。

2018 9/1 3:05
文化

古市憲寿「平成くん、さようなら」/鴻池留衣「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」/青来有一「フェイクコメディ」

 今月は「今」をテーマにした中編が三つも並んだ。今の世界、今の社会、今の時代、今の日本。

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