本のおすそわけ
コーナー

「本のおすそわけ」

歌人の川野里子さんによる寄稿連載

2022 8/7 14:30
文化

アイヌの神々と野良猫ブー 萱野茂編「アイヌと神々の物語」【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 子供のころ、猫はものすごく強い生き物だと思っていた。なにしろ母の宿敵だったのだから。

2022 7/31 17:30
文化

南の島のマラソン大会と鉄道 W・シヴェルブシュ「鉄道旅行の歴史」【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 赤道に近いパラオ諸島コロール島。ホテルのベッドから起き上がると空気が生ぬるくマンゴージュースのようだ。

2022 7/24 17:30
文化

カマキリ先生の摂氏零度 石原吉郎「サンチョ・パンサの帰郷」【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 カマキリというあだ名の理科の先生がいた。顎を突き出し、スリッパを引きずって歩く痩身(そうしん)は寂しい秋のカマキリそのものだった。

2022 7/17 17:30
文化

世界の始まりのイチゴ、終わりの猫 デイヴィッド・マークソン「ウィトゲンシュタインの愛人」【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 世界の始まりと終わりとはとても似ているのじゃないかと思う。 わたしにとっての世界の始まりは真っ赤な赤い実だった。

2022 7/10 17:30
文化

時間の止まった小屋で スザンナ・タマーロ「マッテオの小屋」【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 そこは麦畑で、初夏には黄金色の麦を刈り取る作業を祖父が一人でしていた。このたいして広くもない畑の隅に手作りの粗末な小屋があった。

2022 7/3 17:30
文化

掠れつつ飛ぶ金の鶴 渡辺京二「逝きし世の面影」 【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 実家に古い塗り物の蓋(ふた)つきの吸い物椀(わん)があった。外側が黒く、内側が赤くて蓋には金色の鶴が掠(かす)れながら飛んでいた。

2022 6/26 17:30
文化

葉っぱの宇宙に恋した京子さん 三浦しをん「愛なき世界」 【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 京子さんはとにかく葉っぱが大好きだった。夫の母親だからわたしにとっては義母なのだが、ギボという言葉の響きのギザギザを全く感じさせない人だった。

2022 6/19 17:30
文化

モンスーンの大河に浮かぶ マルグリット・デュラス「太平洋の防波堤」 【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 ミルクティー色、と現地の人が呼ぶ濁った水がこちらへこちらへ流れてくる。わたしはベトナムのホーチミンからメコン河を遡(さかのぼ)るジャンクボートに乗ったばかりで、ぽつぽつと流れてくるホテイアオイの花を見ていた。

2022 6/12 17:30
文化

ニコライ・ゴーゴリ『鼻』 尻尾がない! 鼻がない! 【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 ある夏のこと、ウチの裏にある雑木林に奇妙な生き物が現れた。犬?ではない。

2022 6/5 17:30
文化

多和田葉子『献灯使』 空から運命が降ってくる 【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 本当にまれにだが、空からはとんでもないものが落ちてくる。 二〇二〇年七月二日二時三二分に千葉県の習志野市に隕石(いんせき)が落下した。

2022 5/29 17:30
文化

アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』 世界の真ん中にあるベッド 【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 母が亡くなり、実家に残っていた介護ベッドを片付けることにした。簡易なベッドだが、電動式で上半身を起こせる。

2022 5/22 17:30
文化

「亡命ロシア料理」故国の味 ピョートル・ワイリ、アレクサンドル・ゲニス著 【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 食欲は、生きるために不可欠なもっとも動物的な欲望だが、同時に繊細で詩的な側面を持っている。それは華やぎ、闘争心、感傷、愛、共感といったありとあらゆる感情の絡まりあう渦である。

2022 5/15 17:30
文化

象が、回転寿司が、やって来る ジョゼ・サラマーゴ「象の旅」【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 平穏な日常に見たことのないものがやってくる、というのは実に大変な事だ。ジョゼ・サラマーゴの小説『象の旅』は、贈り物となった象がポルトガルからオーストリアまで隊列を組んで行進する話である。

2022 5/8 14:40
文化

ある夜、ゴキブリとなる カフカ「変身」【本のおすそわけ 川野里子】

挿画・マルミヤン

 夜。水を飲みに階下へ降りると目の前を何かが走った。

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