「おすすめの本」
「おすすめの本」に関するこれまで扱われたニュース一覧を最新順に掲載しています。
『ごんげん長屋つれづれ帖【二】 ゆく年に』金子成人著
酒樽を運ぶ「樽ころ」を生業とする国松の身重の女房おたかが倒れ、長屋の女たちが交代で世話を焼く表題作をはじめ、根津権現門前町の「ごんげん長屋」を舞台に庶民の哀歓を描く連作4編。65歳で小説家デビューした人気脚本家が手がける市井人情物シリーズ第2弾。
日常に潜む「落とし穴」 芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』
芦沢央は平穏だと考えていた日常を侵食する「小さな悪意」を通して小説のリアリティーを築くのが上手(うま)い。「汚れた手をそこで拭かない」は、人々が穏やかな日常生活の中で見落としているような「小さな悪意」を起爆剤として、喜怒哀楽に還元しがたい際どい感情を表現した優れた短編集である。
宮城谷昌光著『奇貨居くべし』(全5巻)
人気漫画『キングダム』では政(始皇帝)の敵役の呂不韋を主人公にした長編歴史小説。書かれたのは20年以上前だが、秦という国のあり方は、戦狼外交の現代中国を彷彿とさせる。
田中翼著『働くコンパスを手に入れる』 「旅」としての職業体験提供
ヨーロッパなどでは、学校と会社を行き来しながら20代後半で大学を卒業する学生は珍しくない。一方で日本は新卒一括採用が続いてきたこともあり、22~23歳で社会に出る人がほとんどだが、これは国際的に見るとかなり特殊な状況だ。
『ヒップホップ・アナムネーシス ラップ・ミュージックの救済』 山下壮起、二木信編 BLM台頭と時を同じくして
本書の編者、山下壮起は日本基督教団阿倍野教会の牧師である。彼は単独の前著『ヒップホップ・レザレクション--ラップ・ミュージックとキリスト教』において、とりわけ日本人には理解しづらいヒップホップと信仰の関係を、自身の米国留学の経験も踏まえて理論的・歴史的・体験的に繙(ひもと)いてみせた。
『恋するアダム』イアン・マキューアン著 架空の1982年のアンドロイド
アンドロイドが小説に描かれるときは、ダウンロードが完了した、人間と見分けのつかない姿で登場することが多いが、この小説はそうではない。主人公チャーリーが「アダム」を購入して自分の家に運び込むところから始まる。
『野球にときめいて』王貞治著
2010年、読売新聞に連載された「時代の証言者『ホームラン王 王貞治』」に大幅加筆して再構成した書籍の文庫版。虚弱だった幼年期、一本足打法を生んだ荒川博氏との出会い、長嶋茂雄氏の意外な素顔など、ファンならずとも興味深い挿話に事欠かない。
『いまきみがきみであることを』 詩・白井明大、画・カシワイ
那覇市在住時の2016年に丸山豊賞を受賞した詩人と『107号室通信』などで知られる漫画家・イラストレーターによる詩画集。「詩をもとに生まれた絵も、絵をもとに生まれた詩もある」という本書はどこか甘く切なく懐かしく、詩と絵が美しく溶け合っているのが印象的。
『研究者が本気で建てた ゼロエネルギー住宅』三浦秀一著(農山漁村文化協会、2420円)
脱炭素社会の実現へ向けて、エネルギーを自給する「ゼロエネルギーハウス」(ZEH)が構想されている。快適なZEHをどう実現するか。
『へんてこはっけん! むずむずまちがいさがし』 riekim/作・絵
ページ内にびっしりと描かれた同じイラストの一群の中から間違いを見つけたり、同じに見える見開きページのイラストの違いを見つけたりする本です。簡単なようで「むずむず」するほど難しく、うまく見つけられた時に達成感が味わえます。
「開拓」続ける谷川俊太郎さん 初詩集から70年 言葉のインフレ憂う
詩人の谷川俊太郎さん(89)が来年に初詩集「二十億光年の孤独」の発表から70年の節目を迎える。常に読者を考えて詩作してきたが、反応はいつも意外だったという。
『新敬語「マジヤバイっす」 社会言語学の視点から』中村桃子著(白澤社、2420円)
「マジっすか」など、ヤンキー・体育会系の若者言葉と言われる「っす」言葉。「下品」と批判されがちだが、テレビCMで利用されるなど使用が広がる。
『科学で大切なことは本と映画で学んだ』渡辺政隆著 ジャンルを超え、時空に遊ぶ
俳人であり物理学者だった寺田寅彦、またその系譜に連なる湯川秀樹や中谷宇吉郎らは、科学が詩や芸術と近いことを繰り返し語った。しかし、私たちが科学の世界の美しさや楽しさを享受するには、仲介してくれるサイエンスライターという存在が欠かせない。
『ウィーン近郊』黒川創著 現代を堪えた男の生の軌跡
四半世紀をウィーンで暮らしたもうすぐ50になる兄が、帰国すると告げた飛行機に乗っていなかった。空港まで行ったものの乗らずに、ウィーン近郊の部屋に帰り、自死したのである。