おくのほそ道たどる車旅 曽良の墓は壱岐に 松嶋圭【随筆喫茶】 文化 5/22 15:00 齢五十が見えてきたところで、自然と『おくのほそ道』に引き寄せられる。松尾芭蕉は四十六歳のとき弟子の河合曽良(そら)とともに東北...
サラフィータから 前野りりえ【随筆喫茶】 文化 5/15 17:30 福岡県太宰府市で生まれながら転勤族の娘であったこともあり、18回引っ越しを体験し、小学校も中学校も三校ずつ通うような育ち方をしたわたしはデラシネ(根無し草)だった。200...
サバの寿司 明利英司【随筆喫茶】 文化 4/24 17:30 私は昔からにぎり寿司(ずし)が好きで、自宅でもよく寿司を握る。好きが高じて現在は作家業をやりながら、不定期ではあるが「居酒屋明利」という寿司居酒屋を経営するほどになった。...
旅の喜び 井本元義【随筆喫茶】 文化 4/17 17:30 憧れのパリに初めて行ったのはもう30年以上前だ。それまで仕事上で10日間も時間を取るのは難しく、やっと余裕ができた時、僕はもう40代半ばを過ぎていた。英語もフランス語もで...
オロナミンC 桜川冴子【随筆喫茶】 文化 4/3 17:30 時々、母に付き添って近くの国立病院に行く。母は脳動脈瘤(りゅう)を患っていて、その日は検査結果を聞くことになっていたが、担当医はたまたま病棟の患者さんの処置があって、いつ...
1984年のイカンガー ユキノ進【随筆喫茶】 文化 3/27 17:30 短歌をどこでつくるか、というのは歌人の間で時々話題になる。答えはまちまちで、机に向かわないと書けないという人もいれば、電車の中で思いついたものをスマホにメモする人もいる。...
先生のことば 渡辺浩章【随筆喫茶】 文化 3/20 17:30 歌舞伎役者の図柄の切手に、「筑紫42・21」の消印。ウクライナがロシア軍に包囲されていた頃、福岡・屋形原に住む伯母さんから手紙が届いた。「今日の新聞になつかしい記事がのっ...
西九州から異国へ 須田覚【随筆喫茶】 文化 3/6 17:30 現在、縁あってインドのカルナタカ州フブリという町に住んでいる。デカン高原の西の端になぜ居るのか、我ながら不思議である。そんな僕は40年ほど前、長崎の高校生だった。当時はラ...
「東京オリンピックの夢」から 家原英生【随筆喫茶】 文化 2/27 17:30 九州は、くさいなぁ。それが最初の印象だった。1971年3月、中学3年になるとき、親の転勤で東京から福岡に移り住むことになった。列車が関門トンネルを抜け北九州工業地帯を通過...
多様な作品、映画館の魅力 街や人の営みとともに 石渡麻美【随筆喫茶】 文化 2/20 17:30 苦しい時期を過ごしていた20代半ばの頃、薦められて見始めた映画に価値観をひっくり返された。狭い場所で身動きが取れなくなっていた思考が世界の広がりを前に音を立てて崩れた。無...
コロナ禍のショパンコンクール 小林文乃【随筆喫茶】 文化 2/13 17:30 ショパンコンクールのファイナルのチケットがダブついている、という意外な情報が入ったのは、開催の2週間前のことだった。ショパンの祖国ポーランドで行われる、5年に一度のピアノ...
なぜ博多ラーメンなのか? 織江耕太郎【随筆喫茶】 文化 1/30 17:30 無性にラーメンが食べたくなるときってありませんか?麺の歯触りと絶妙のスープが誘惑してきます。東京在住にもかかわらず、私の場合は博多ラーメン。いつも同じ店。メトロに乗り、3...
ラポールとからだ 松本准平【随筆喫茶】 文化 1/23 17:30 昨年の夏、初めて舞台を演出した。普段は映画という似て非なる分野で活動している僕が、舞台を作ることを決めたのは、やはり役者と正面から向き合う機会が欲しいと思ってのことだった...
朗読の殿堂 私の師匠 POETAQ【随筆喫茶】 文化 1/16 17:30 それは2020年11月30日(日本時間12月1日)のことだった。オンライン朗読会開始30分を過ぎた頃、スタッフが沈痛な表情で現れた。「先ほど、カフェの創設者ミゲルが亡くな...
遠のく「鳥たちの河口」 田島安江【随筆喫茶】 文化 2021/12/19 17:30 11月25日の新神戸・新幹線ホーム。あと数分で到着する九州新幹線の「さくら」を待っていたとき、携帯電話が鳴った。福岡・星野村の山本源太さんだ。「わ、源太さん、どうしたんで...
路傍に生きる・山野草 瀧 春樹【随筆喫茶】 文化 2021/12/5 17:30 小さな俳句誌「樹(たちき)」を創刊して満30年を迎えた。その裏表紙に「花の彩時記」と題した欄を設け、主に山野草の花を中心に会員に書いてもらった俳句とともに掲載している。管...
同人誌のすすめ 木島丈雄【随筆喫茶】 文化 2021/11/28 17:30 「私」という笛を吹いてみる。まともな音を出せない。ほとんどの場合、突拍子もない音が出る。フリー・ブローイングなので行き当たりばったりで、長くは続かない。聴くに堪えない。正...
「西」への眼差し─谷崎と漱石 柴田勝二【随筆喫茶】 文化 2021/11/21 17:30 今年の3月末に長年勤めた東京外国語大学を定年退職となり、4月より本州最西端の都市である山口県下関市の梅光学院大学に勤務することになった。私はもともと関西の生まれなので、西...
没後35年、今こそ島尾敏雄 指宿、宇宿の足跡を追う 宮島孝男【... 文化 2021/11/7 17:30 11月12日は作家島尾敏雄没後35年の命日である。島尾は、第十八震洋特攻艇隊長の体験(加計呂麻島)に基づいた戦争小説や私小説『死の棘(とげ)』などで知られる。九州帝国大学...
ごみ拾いで拾った美談とかわいさ 文化科学・環境 2021/10/31 6:00 【随筆喫茶】イギル・ボラ8月、九州に降った豪雨で海の中はかき回され、福岡の海岸にも大量のごみがあふれた。きれいな海ではない、現実を直視させる光景。近隣住民が数人出てきて掃...