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タイ軍

 陸軍と海軍、空軍からなる「タイ王国軍」が正式名称。憲法では、国王を軍全体を指揮する総帥と位置づける。実質的には陸軍が最も力を持つとされ、多くのクーデターを主導。政治色が強いのが特徴で、プラユット首相や昨年5月死去したプレム元首相を含め、首相に就いた陸軍司令官OBも多い。軍独自に広大な土地やゴルフ場、スポーツ用スタジアム、放送局などを所有・管理している。

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タイ銃乱射から1ヵ月「なぜ兵士が」広がる軍への疑問と怒り

 タイ軍兵士が商業施設などで銃を乱射、市民ら29人が殺害された事件から8日で1カ月。軍は長く同国の政治や社会に強い影響力を及ぼしてきただけに衝撃は大きく、まだ収まらない。「タイ史上最悪の犯罪」(地元紙)を引き起こした軍の在り方自体に疑問と怒りの声が広がっている。 (タイ東北部ナコンラチャシマ県で、川合秀紀)

 「おれはここにいるぞー。出てこーい」。銃声の合間に、節を付けて叫ぶ歌声が聞こえてきた。一つ下の階で特殊部隊と銃撃戦をしていた容疑者だった。

 商業施設に恋人と映画を見に来ていた近くの大学3年ティーさん(22)はその瞬間、優先トイレの個室内に逃げていた。自分を含め男女10人。泣きながら母と祖母に電話し「死ぬかもしれない。愛しているよ」と伝えた。スマートフォンで容疑者が近くの基地所属の軍曹(31)と知り、混乱した。「なぜ兵士が? 本当か?」

 現場のナコンラチャシマは、基地など軍の中枢施設が集まる有数の「基地の町」。元陸軍司令官で現首相プラユット氏の出身地でもある。事件は発生18時間後の翌2月9日朝、当局が軍曹を射殺して終わった。軍曹は不動産ビジネスを巡ってトラブルとなった上官を射殺し、その後軍関連施設で武器を奪って商業施設に向かったとされるが、詳細は不明のまま。

 「なぜ兵士が多くの市民を撃ったのか。納得いかない」。ティーさんは今月5日、軍の改革などを訴える事件後初の集会を構内で開こうとしたが、前日になって学長に禁じられた。

 基地の町だけに、軍には仲が良い同い年の友人がいる。軍隊自体は必要だとも思う。それでも「こんな事件が起きたのは、軍のシステムのどこかに問題があるはずだ」と憤る。自分の存在をアピールするかのような、あの奇妙な歌声が今も耳から離れない。

    ■   ■

 「確かに許されない犯行だが…」。取材に応じた元陸軍中将のポンサコン氏(64)は続けた。「容疑者をかわいそうだとも感じる。いつ起きてもおかしくない事件だった」

 軍上層部に権力が集中し、下級兵士を待遇などで虐げる組織風土の改革を、軍在籍中も訴え続けたことで知られる。先進国のように透明で効率的な「普通の軍」にしたかったが、異論は封じられた。「容疑者も上官に利用され、自分は何もできないというストレスの矛先を市民に向けたのだろう。彼は氷山の一角で、苦しんでいる兵士が多いことを私は知っている」

 事件後、アピラット陸軍司令官は記者会見で涙ながらに謝罪、軍の改革を約束した。一方で「神聖な組織である軍は非難されるべきではない」とも語った。

 主な改革は、軍が管理するビジネスの見直し、下級兵士が意見を伝えられるホットラインの開設。そして軍退官後も軍管理の住宅に住み続けるOBのリスト公開。そこには、軍退官後に反軍政党「新未来党」に加わった副党首、ポンサコン氏の名前もあった。

 「軍改革の本質とは関係ない問題で関心をそらしたかったのだろう」。ポンサコン氏は結局、副党首を辞任。2月21日には憲法裁判所が解党と、自分を含む幹部の政治活動禁止を命じた。中心になって取りまとめた徴兵制廃止法案は国会でたなざらしになり、軍が繰り返してきたクーデターを禁じる方策を検討する委員会設置案も否決された。

 8日には、元新未来党の国会議員が新党を立ち上げ、引き続き「軍改革」を掲げる。「プラユット氏が首相になれたのは今の軍システムのおかげ。事件を機に軍内部でも批判が強まり、さまざまな混乱が起きる可能性がある」。今も軍の内情に詳しいポンサコン氏は、意味深な表情で予想した。

【ワードBOX】タイ軍

 陸軍と海軍、空軍からなる「タイ王国軍」が正式名称。憲法では、国王を軍全体を指揮する総帥と位置づける。実質的には陸軍が最も力を持つとされ、多くのクーデターを主導。政治色が強いのが特徴で、プラユット首相や昨年5月死去したプレム元首相を含め、首相に就いた陸軍司令官OBも多い。軍独自に広大な土地やゴルフ場、スポーツ用スタジアム、放送局などを所有・管理している。

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