ワードBOX

新聞記事に使われた語彙(ごい)を説明した新聞用語ひと口メモ。このページでは新聞に掲載されたワードBOXとその関連記事をピックアップして紹介します。

心肺蘇生の不実施(DNAR)

 終末期や老衰の患者が心肺停止状態になった際に、本人の希望を家族らから伝えられて、蘇生処置をしないこと。消防法は蘇生中止を想定していないが、患者の尊厳を守るため、かかりつけ医の指示の下、行われることがある。DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)とも略される。

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

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119番後に「蘇生拒否」九州で357件 救急隊員、国の指針なく困惑

蘇生中止91件

 119番で駆け付けた救急隊員が、心肺停止の患者の蘇生処置を家族らに断られるケースが全国で相次いでいる。九州では昨年、蘇生拒否が357件あり、うち約4分の1に当たる91件は蘇生を中止していたことが西日本新聞の調べで分かった。延命治療を望まず、自宅で最期を迎えようとしていた高齢者らの家族が、気が動転するなどして通報し、蘇生を拒否するケースが多い。蘇生の不実施について法的な規定はないため、各地の隊員は対応に苦慮している。

 消防法上、救急隊は蘇生を実施し、医療機関へ搬送しなければならない。では蘇生拒否された場合にどう対応するか。総務省消防庁の調査(2018年)では、何らかの対応方針がある消防本部は全体の46%、そのうち蘇生の不実施や中止を認めているのは30%だった。

 九州各県の対応も分かれている。長崎、大分の両県は、かかりつけ医に連絡を取った上で蘇生の中止を認めている。熊本県は拒否されても蘇生するのが原則だが、実際には現場の判断で中止した事例もあった。

 福岡、佐賀、宮崎、鹿児島は県として方針を定めていない。福岡県は24の消防局・本部のうち、少なくとも5本部が策定。福岡市消防局は必ず蘇生して搬送することにしている。昨年は蘇生拒否が16件あったが中止した事例はなかった。家族に消防の法的任務を説明し理解を求めているという。

 ある隊員は「救命を使命だと思っているので蘇生拒否には戸惑う」と打ち明ける。別の消防本部では「家族で考えが違うこともあり、本人の意思か確認するのは難しい」「対応に地域差があるのはおかしい。救急隊が判断の責任を問われる恐れもあるのでは」という声もあった。

 近年は、受けたい医療を事前に話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)が医療現場で広がっている。心臓マッサージなどの蘇生処置は受けたくないという選択も含まれる。また、治る見込みがない病気になった場合、60歳以上の51%が「自宅」で最期を迎えたい(19年版高齢社会白書)としており、蘇生拒否の意思表示は今後増えていくと想定される。

 消防庁は統一方針の策定を検討していたが、昨年、実態把握が不十分として見送った。蘇生の不実施に絡む事例の全国統計はないが、九州で年間約1万2千件ある心肺停止の搬送人数に照らすと、蘇生拒否は全体の3%程度と推測される。

 日本医科大大学院の横田裕行教授(救急医学)は「蘇生の中止を一切認めない運用は社会情勢に合わなくなっている」とした上で、「元気なときの本人の意思を尊重できるように、中止の基準や手順を定めた統一のルールが必要だ」と話している。

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