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介護サービスの利用控え

 淑徳大の結城康博教授が5月4~17日、在宅介護に関わる介護職にインターネット上でアンケートを実施。503人が回答し、在宅サービスの利用を控えている利用者がいると答えたのは82.3%、利用控えなどで心身の機能低下が起きていると答えたのは62.3%だった。介護事業者は休業や利用制限で経営が悪化しており、コロナ収束後の介護サービス量が、廃業などで「減少すると思う」と答えたのは約3割に上った。

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

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「足が言うこと聞かん」リハビリ休止、進む機能低下 男性の苦悩

「コロナ禍の介護」(下)

 車いすに乗り、手で膝をさする。「この2カ月で、足が言うことを聞かんようになった」。福岡市の男性(48)はうつむいた。

 男性は脊椎の病気で10年ほど前、足が自由に動かなくなり、車いすの生活になった。隣県の病院のリハビリや、デイサービスなどの介護サービスを利用し、自宅で1人暮らしをする。

 だが、新型コロナウイルス流行による4月の緊急事態宣言で、県境を越える移動の自粛が求められ、通院を控えることになった。病院側も宣言から間もなく、感染防止のためリハビリ外来を休止した。

 病院のメニューは専門的で調子がいいと平行棒につかまり立ちもできるようになっていた。2カ月以上も受診できず、「体がパキパキに固まって動かん」。6月に入って外来は再開されたが、感染対策で受け入れ人数が減り、以前のように通えるかは分からない。

 自宅近くには自分に合ったリハビリのある医療機関がない。訪問リハビリも利用しているが、家のベッドで受ける方法では限界があると感じている。

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 さらに、新たに通うことにしたデイケアも利用を拒まれた。「コロナが心配なので遠慮してほしい」

 リハビリと入浴を増やすためだった。風呂に入るのは今、別のデイサービスで週1回だけ。ヘルパーが自宅で洗髪してくれるものの、せめて週にもう一回は増やしたい。「リハビリも風呂も、コロナでうまくいかんようになった」

 介護事業者にはこの間、感染リスクを減らすため、新しい利用者の受け入れを断る傾向があった。ある事業所の男性職員(66)は「長く付き合っている高齢者なら、発熱しても原因の予想がつく。新しい人はそうはいかず、慎重にならざるを得ない」と明かした。

 基礎疾患があるため、感染を避けようと介護サービスを控えた人もいる。

 福岡県の女性(52)は、精神疾患のある要介護3の母(81)を自宅で介護する。デイサービス2カ所に行っていたが、4月に利用者の周辺で感染が確認され、通うのをやめた。

 母は肺の疾患と糖尿病がある。感染すれば重症化しかねない。女性は訪問介護のヘルパーで、高齢者宅を回ることも頭にあった。母から自分にうつれば、顧客に迷惑がかかってしまう。

 1人になると不安になって外出する恐れがあるため、妹やめいと協力し、目を離さないようにした。

 だが、やはり影響は出た。母は歩くのが遅くなり、つまずくことが増えた。呼んでも反応は鈍い。「デイを休んだ影響は大きいです」。女性はため息をつく。

 第2波が来たらどうするか。女性と妹は仕事があり、めいは学校が休校から再開した。つきっきりになれる家族はいない。女性は「4、5月は細心の注意で休んだけど、今までくらいのリスクなら、今後は行かせるしかないかな」

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 高齢者や障害者の在宅生活で、通所や訪問系の介護サービスは大きな役割を果たす。一方で事業者は難しい対応を迫られている。

 福岡市のデイサービス事業所「ハートフィールド筑紫丘」は、休業せず高齢者を受け入れてきた。手洗いやマスク着用、施設内の換気、消毒を徹底。飛沫(ひまつ)感染を防ぐため、テーブルには透明の間仕切りを置いた。

 リスクを避ける日々は苦労の連続という。認知症の人が多く、説明しても数秒で忘れてしまう。マスクを外したり、他の人のものを着けたり。裏側に名前を書き、外さないよう言い聞かせる。消毒などで業務量は増え、職員の負担は重い。

 利用者には徘徊(はいかい)の恐れもある。石橋真由美施設長は「家にいると生命の危険がある人ばかり。ここが休業したらどうなるか。責任は重いけど、事業者の役割として続けないと、と思っています」と話す。

 試行錯誤が続く介護現場。淑徳大の結城康博教授は、事業者の受け入れ制限が感染防止で今後も続くと見る。その上で「事業者の経営は悪化しており、サービス提供を続けられるように、来年度の介護報酬改定で反映させるべきだ。高齢者の利用控えも機能低下を招くため、必要なサービスを受けるよう公的機関の啓発が必要になる」と行政を交えた対応を求めている。 (編集委員・河野賢治)

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【ワードBOX】介護サービスの利用控え

 淑徳大の結城康博教授が5月4~17日、在宅介護に関わる介護職にインターネット上でアンケートを実施。503人が回答し、在宅サービスの利用を控えている利用者がいると答えたのは82.3%、利用控えなどで心身の機能低下が起きていると答えたのは62.3%だった。介護事業者は休業や利用制限で経営が悪化しており、コロナ収束後の介護サービス量が、廃業などで「減少すると思う」と答えたのは約3割に上った。

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