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新聞記事に使われた語彙(ごい)を説明した新聞用語ひと口メモ。このページでは新聞に掲載されたワードBOXとその関連記事をピックアップして紹介します。

住宅型の有料老人ホーム

 原則、要介護3以上しか入れない特別養護老人ホームと異なり、比較的元気な高齢者の受け皿として民間参入が広がってきた。介護施設ではなく住居であるため、入居者が介護サービスを受けるには自宅暮らしの人と同様、ケアマネジャーやデイサービス、訪問介護などの事業所を自由に選んで契約することになっている。介護保険では要介護度に応じて公費で利用できるサービスの上限が決まっており、利用者はその枠内で必要な分だけ使う。

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

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「これが現実」認知症あっても受け入れたいけど…職員不足で限界 

コロナ禍 支え手の思い(1)住宅型有料老人ホーム

 お年寄りたちは6~8人掛けテーブルの四隅に離れて座り、黙々と昼食を取っていた。4日昼、福岡市東区の住宅型有料老人ホーム「あいくらす香椎参道」。テレビもソファも片付けた食堂に流れるのは、消毒液の加湿器と並べて置いたラジオの音だけ。「介護の原則はコミュニケーション。職員が声掛けして食事に誘導して、テレビを見ながら談笑して…。それが一切『悪』になってしまった」。施設長の御厨正人さん(59)は顔をゆがめた。

 利益はなくなった

 「コロナを入れない、広めない」ため家族の面会も個人的な外出も原則禁止。買い物も職員が代行する。

 「家だから閉鎖するわけにはいきません。入居者から刑務所みたい、と言われるし、身体機能の低下や認知症の症状悪化も心配ですが…。これが現実です」

 昨年4月、系列のデイサービス事業所が介在する形で、他の2カ所の住宅型老人ホームとともに入居者や職員ら計18人の感染者集団が発生。デイだけでなく併設の訪問介護事業所が、一時閉鎖を余儀なくされた。

 各施設をグループとして経営する「ヒーリングフルサービス株式会社」は、濃厚接触に当たらない職員に協力を求め、入居者の暮らしを維持するために「排せつ介助、食事、入浴、洗濯など最低限のサービス」に努め、何とか乗り切った。

 中には認知症の人も少なくない。PCR検査を受けて陰性と判明する前に、職員の気付かないうちに外出してしまった80代の男性も。「コロナの危険性を説明しても5分後には部屋を出ようとする人や、戻しても窓から出ようとした人もいて…。一瞬も気が抜けなかった」(御厨さん)

 事業所が休業した約2週間の介護報酬はゼロ。「無報酬分とコロナ対策費を合わせて約2千万円の赤字。今期の利益はなくなりました」。社長の原忠興さん(35)もため息をつく。

 囲い込まない弊害

 住宅型の老人ホームは本来、介護保険のサービスを直接行うわけではない。収入は入居費や食費、管理費のみ。同社の3ホームは月約10万円で日常の見守りや食事提供を行い、買い物や夜間対応は別途有償でサービスする。ただ生活保護受給者もおり「支払えないからサービスしないとは言えない」と御厨さん。実際には、無償で対応せざるを得ない場合も少なくない。

 経営基盤を補うため、住宅型の多くはデイや訪問介護の事業所も運営。中にはケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所も併設し、入居者全てを“囲い込む”形で収入を当て込むホームも少なくないとされる。利益を求め、本来は必要ない介護サービスを限度いっぱいまで利用させる悪質な業者の存在も指摘されることから、行政側はかねて囲い込みをしないよう求める姿勢を強めてきた。

 同社では3ホームの定員計114人に対し、デイは小規模の同35人。入居者の半数近くは外部のデイを利用しているが-。「外の事業所を利用している人が多いほど、施設全体の感染リスクは高くなる。予防の観点では、逆に囲い込んでいるホームの方が対策を取りやすい」と原さんは指摘する。

 入居者全てを囲い込める規模なら配置職員も多いため「(非常時に)デイから入居者の世話に回せる人数も、より多く確保できる」のも間違いない。囲い込み禁止ルールを「順守」しているからこその苦境に、釈然としない思いも募る。

 入居抑制やむなく

 認知症でも元気で歩ける人は必ずしも要介護度が重いと判定されるわけではない。

 「周りの入居者の方も症状に理解があるので、本来は見守りやすい」(原さん)こともあり、住宅型のホームはこうした人たちの入居ニーズも高かった。

 ただ3ホーム全体の入居者募集も担当する御厨さんは「昨年5月以降、認知症の方の新規の入居は控える方向になった」と打ち明ける。PCR検査の途中で抜け出した80代男性にも同7月、より職員の態勢が整った他社の住宅型ホームにやむなく、移ってもらった。

 安価で暮らせる入居先の選択肢を、感染症が奪い始めている。

   ◇   ◇

 コロナ禍は、ただでさえ人材不足や経営難に苦しむ介護業界の弱点を浮き彫りにした。介護保険制度が始まって20年が過ぎ、今年は3年に一度の介護報酬改定もある。支え手たちの声を聞き、課題を見つめる。 (編集委員・三宅大介)

【ワードBOX】住宅型の有料老人ホーム
 原則、要介護3以上しか入れない特別養護老人ホームと異なり、比較的元気な高齢者の受け皿として民間参入が広がってきた。介護施設ではなく住居であるため、入居者が介護サービスを受けるには自宅暮らしの人と同様、ケアマネジャーやデイサービス、訪問介護などの事業所を自由に選んで契約することになっている。介護保険では要介護度に応じて公費で利用できるサービスの上限が決まっており、利用者はその枠内で必要な分だけ使う。

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