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ホスピス(緩和ケア病棟)

 治癒の見込みのない末期がん、エイズ患者らを対象に、延命よりも痛みを取り除く治療を優先し、精神的ケアも提供する医療施設。語源は「もてなし」を意味するラテン語。国内では1981年に聖隷三方原病院(静岡県)が最初に開設。90年には国の基準を満たせば定額の診療報酬が支払われる制度ができた。日本ホスピス緩和ケア協会によると、2019年11月現在の届け出施設は431施設、8808床。

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

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「家族に会いたい」コロナ、ホスピスも苦悩 面会制限の病院も

 新型コロナウイルスが医療現場にさまざまな影を落とす中、穏やかな死を迎えるためのホスピスにも余波が及んでいる。九州で最初に緩和ケアに取り組み、全国最多のホスピス病床がある栄光病院(福岡県志免町、178床)では、感染防止のため初めての面会制限に踏み切った。ホスピス長の下稲葉順一医師(49)は「患者と家族のケアという、今まで重きを置いてきたことができない。ウイルスに分断されるつながりを何とかつないでいきたい」と苦悩する。

 病棟は今、しんとした静けさに包まれている。新型コロナの感染拡大を受け、4月上旬、家族の面会を制限した。原則、週1回、2人に限って30分だけ。「家族に会いたい」と繰り返す人、硬い表情が張り付いた人も出てきた。

 同病院は1986年から終末期のがん患者への緩和ケアに取り組み、90年に九州で初めて「緩和ケア病棟」として認可された。現在、全国最多の71床があり、ほぼ満床だ。平均入院日数は37日。本来は痛みをコントロールしながら、安らかな死を迎える。面会は原則、自由。みとりが近づけば家族が泊まり込んでゆっくりと別れを告げ、ペットも病室で過ごすことができる。

 患者や家族の多くは現状を理解してくれているが、「泊まり込ませてほしい」「自宅に帰したい」との願いも届く。30代の女性患者は他の患者との接触が少ない病室に移した上で、まだ幼い子2人と面会してもらった。感染者が最も多い東京から駆け付けた家族は院外で2日間を過ごし、発熱がないことを確認してからやっと面会が実現した。50代の担当医は「はがゆかったと思う。ホスピスで『孤独死』をさせてしまいかねない状況。情けない」と嘆く。

 ボランティアも立ち入ることはできず、花見などの季節行事も中止となった。それでも、スタッフが1人ずつ花見に連れ出し、病棟を花で彩る。家族の希望があれば、毎日電話で様子を報告したり、LINE(ライン)で動画を送ったりしている。下稲葉医師は「こんな時期だからこそ、これまで培ってきた患者と家族に寄り添う姿勢を発揮したい」と前を向く。

 いつしか、体を動かせる患者は「誰かの役に立ちたい」と布マスクを手作りするようになった。

 ただ、ホスピスには免疫力の低下した患者が集まる。「いったん院内感染が起こったら致命的」という危機感は強い。入院や他施設からの転院を希望する患者の中には発熱している人もいる。コンピューター断層撮影(CT)で肺炎症状がないかを検査するなど、細心の注意を払う。

 同病院は24時間体制の救急病院でもあり、夜間は発熱や呼吸器症状を訴える患者も訪れる。にもかかわらず、感染が疑われる患者を診るのに必要なマスクや消毒液など医療資材は不足が続く。「物理的に対応できない」状況で、疑い患者は玄関で問診し、聴診器を胸に当てることさえできない。「お力になれなくて申し訳ありません」と謝罪して、別の医療機関を紹介するか、解熱剤などを処方するしかない。

 5月以降、福岡県の新規感染者は減少し、学校や飲食店などは以前の「日常」を目指して動きだしている。しかし、ホスピスでは面会制限の緩和に慎重にならざるを得ない。「2カ月前のような、本来の状態にするのはかなり先になる。いつ戻れるのだろう」と下稲葉医師。感染が終息するまで、緊張と模索の日々が続く。

 (編集委員・井上真由美)

 【ワードBOX】ホスピス(緩和ケア病棟)

 治癒の見込みのない末期がん、エイズ患者らを対象に、延命よりも痛みを取り除く治療を優先し、精神的ケアも提供する医療施設。語源は「もてなし」を意味するラテン語。国内では1981年に聖隷三方原病院(静岡県)が最初に開設。90年には国の基準を満たせば定額の診療報酬が支払われる制度ができた。日本ホスピス緩和ケア協会によると、2019年11月現在の届け出施設は431施設、8808床。

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