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新聞記事に使われた語彙(ごい)を説明した新聞用語ひと口メモ。このページでは新聞に掲載されたワードBOXとその関連記事をピックアップして紹介します。

こうのとりのゆりかご

 赤ちゃんの遺棄死を防ぐため、匿名で赤ちゃんを安全な場所に預けられる仕組み。ドイツの事例を参考に、熊本市の慈恵病院が2007年5月から全国で初めて運用を開始。2015年度までに預けられた乳幼児は計125人。24時間体制の妊娠相談窓口には同年度5466件の相談が寄せられた。その数は07年度の10倍超に当たる。

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

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こうのとりのゆりかご 必要ない社会に 運営に携わった田尻由貴子さん 本を出版 命の大切さ伝え 相談員の育成も

 親が育てられない子どもを匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)。熊本市の慈恵病院で、この取り組みの企画や運営に携わった、同院元看護部長、田尻由貴子さん(66)=同市=がこのほど、「はい。赤ちゃん相談室、田尻です。」を出版した。本では自身の経験のほか、妊娠相談など全国的な妊婦支援の体制づくりを呼び掛け、田尻さんはその相談員育成にも乗り出している。

 田尻さんは、慈恵病院の看護師や熊本県菊水町立病院(当時)の総婦長などを経て、2000年から慈恵病院の看護部長に就任。間もなく同院は妊娠相談窓口を開設し、07年5月からは「ゆりかご」の運用を始め、そのころ相談窓口も24時間体制となった。昨年3月に定年退職した田尻さんは現在、生涯学習事業に取り組む一般社団法人スタディライフ熊本(同市)の特別顧問として、妊娠相談を受けたり、学校などで命の大切さを伝える授業を実施したりしている。

 出版は、「ゆりかご」が必要になった原因を説明することで、赤ちゃんの遺棄が起こらない社会にしたいとの思いで手掛けた。

 本では「ゆりかご」設置のいきさつや、預けられた子どものその後などがつづられている。窓口に寄せられた相談のうち、思いがけない妊娠に関する内容では未婚のケースが最多で、若年での妊娠や不倫による妊娠も多いことを紹介。誰にも相談できず、追い詰められて電話してくる女性の現状を伝えている。

 「ゆりかご」が子どもの命のセーフティーネットになっていることや、赤ちゃんを育てられない女性と妊娠中から関わることで、里親や特別養子縁組など新しい家庭に命を託せていることも説明している。

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 児童虐待で死亡した子どもの中で、最も多いのは生まれて間もない赤ちゃんだ。

 厚生労働省が9月に発表した、児童虐待による死亡事例の検証報告では、2014年度に死亡した子ども71人のうち心中以外の虐待死は44人。うち6割超の27人は0歳児で、月齢別でみると0カ月が最多の15人だった。

 また、全年齢を対象にした分析では「望まない、計画していない妊娠」が最多の54・5%、次いで妊婦健診未受診(40・9%)が多かった。これは虐待加害者となった親の多くが妊娠期から課題を抱え、医療や福祉とも接点がなかったことを示しており、報告では妊娠期や周産期の相談体制充実が、虐待死防止につながると提言している。

 しかし、田尻さんは「窓口さえあればいいわけではない」と指摘する。過去には、慈恵病院が妊婦から「どこに相談したらいいのか」という相談を受け、相談者の居住地にある相談窓口を紹介すると、そこでは「生まれてから来てください」と取り合ってもらえず、再度同院に電話してきたケースもあったという。

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 妊娠相談窓口の相談員のスキル向上に取り組もうと、田尻さんを含む助産師有志は昨年11月、「妊娠SOS相談対応ガイドブック」を作成した。今年4月にはそのメンバーや医師、元児童相談所職員などを発起人に「全国妊娠SOSネットワーク(全妊ネット)」(事務局・東京)が発足。田尻さんも理事となり、全国に研修に出向いている。今後は政策提言もしていきたいという。

 田尻さんは「妊娠の経緯を責めるのではなく、赤ちゃんの生きる権利、育つ権利を尊重し、温かく見守れる環境こそ、『こうのとりのゆりかご』が必要ない社会を実現する」と話している。

 1944円。ミネルヴァ書房=075(581)5191。

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 【ワードBOX】こうのとりのゆりかご

 赤ちゃんの遺棄死を防ぐため、匿名で赤ちゃんを安全な場所に預けられる仕組み。ドイツの事例を参考に、熊本市の慈恵病院が2007年5月から全国で初めて運用を開始。2015年度までに預けられた乳幼児は計125人。24時間体制の妊娠相談窓口には同年度5466件の相談が寄せられた。その数は07年度の10倍超に当たる。


=2016/10/25付 西日本新聞朝刊=

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