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高齢者の貧困

 高齢者のうち生活保護を受けている人の割合は最近20年間でほぼ倍増した。厚生労働省によると、65歳以上のうち生活保護受給者が占める割合は1995年の1・55%から2015年は2・89%に。15年の調査では、高齢の生活保護受給者でも48・96%が公的年金を受け取っているが、平均受給額は月約4万7600円。

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

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【生きる 働く 第15部】孤立させない 生活困窮者<2>暮らし立ち行かない老後

 四十数年、働いてきた。なのに老後は毎月ぎりぎりで綱渡りのような生活。寒くなっても長袖の下着が買えなかった。

 熊本県玉名郡の徹さん(67)=仮名=は、20歳で通信関係会社の正社員になり機器修理の仕事を続けてきた。家計は妻に任せっきりで、給料の額もよく把握していないほどだったが「妻と子どもの家族3人、人並みに暮らしてきた」と思う。

 40代後半、社内の人間関係がこじれ、閑職に追いやられて辞めた。同じ頃、妻とも離婚。それからは船の塗装や発電所のメンテナンスといった非正規の仕事を渡り歩き、月収は10万円を切ることもあった。「毎日毎日が精いっぱいで貯金はできんかった」

 3年ほど前、働けなくなった。心臓の手術で4カ月ほど入院した。高血圧や糖尿病の持病も悪化していた。

 生活保護の医療扶助が認められ、病院代の心配はなくなった。それでも年金は月8万8千円で「階段が腐れて1階しか使えん」2階建ての古家の家賃を払うと残りはわずかになる。1日に350ミリリットル缶1本と決めている第三のビールを飲むのが今は何よりの楽しみだ。

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 生活保護を受けるお年寄り世帯の割合は高齢化を上回る勢いで増え、今年初めて、受給世帯全体の5割を超えた。

 老後の備えとなるのは公的年金制度だが「そもそも老後の全ての支出を賄えるようには設計されていない。誰もが生活困窮に陥るおそれがある」と、「下流老人」(朝日新書)の著者でNPO法人「ほっとプラス」(埼玉県)代表理事の藤田孝典さん(34)は指摘する。

 生活に困る人を支援する「ほっとプラス」に年間300~500件寄せられる相談も半数は高齢者からだ。病気や事故で多額の医療費が必要になったり、熟年離婚で年金を分割したら暮らしが立ち行かなくなったり。さまざまなアクシデントが「人並み」の暮らしを「困窮」に変える。派遣労働など不安定な働き方が広がり、若い世代は、年老いた親を援助したくても、自分の生活で精いっぱいという人も増えた。

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 貧困への転落をどう防ぐか。各地の自治体は、家計の見直しで生活再建を支援する試みに取り組んでいる。昨年4月に始まった生活困窮者自立支援制度の家計相談支援事業。制度は就労による自立支援に力点を置くため、現金給付はほとんどない。そこで「今あるお金をどう使うか」を指導し、生活苦の悪循環を断ってもらうことを目指す。

 福岡県久留米市の家計相談では、高齢者が全体の2割近くを占める。市から委託を受ける「グリーンコープ生活協同組合ふくおか」の支援員、俣野啓子さん(57)は「年金生活になっても、現役時代の感覚のまま暮らす人が多い」と感じている。

 外食が頻繁、携帯電話で高額プランを契約したまま、コンビニに行くたびペットボトル飲料やお菓子を買ってしまう…。支援事業は、こうした貧困の裏にある「無駄」を洗い出す。とりわけ単身の高齢男性は家計管理に不慣れで、浪費が隠れていることが多いという。

 冒頭の徹さんも地元自治体の独自事業で家計を見てもらった。事業を請け負う熊本市のNPO法人「お金の学校くまもと」代表の徳村美佳さん(53)は「とにかくレシートを取っておいてもらう。レシートには生活の問題が現れる」と説明する。

 徹さんの場合も食費を弁当、肉、野菜など細かい品目に分けて支出をグラフ化。それが栄養バランスの管理にも一役買い、持病の高血圧は最近、病状が落ち着いてきた。

 消費税率10%への引き上げは先送りされ、生活保護費や年金は抑制の方向に向かう。今の若い世代が高齢者になるとき、状況は一段と厳しくなっているだろう。徳村さんは言う。「お金の貸し付けや給付だけでは生活は立て直せない。家計を把握し、先の見通しを考える。こうした支援はもっと若い世代にこそ必要と思う」

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 【ワードBOX】高齢者の貧困

 高齢者のうち生活保護を受けている人の割合は最近20年間でほぼ倍増した。厚生労働省によると、65歳以上のうち生活保護受給者が占める割合は1995年の1・55%から2015年は2・89%に。15年の調査では、高齢の生活保護受給者でも48・96%が公的年金を受け取っているが、平均受給額は月約4万7600円。


=2016/12/07付 西日本新聞朝刊=

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