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新聞記事に使われた語彙(ごい)を説明した新聞用語ひと口メモ。このページでは新聞に掲載されたワードBOXとその関連記事をピックアップして紹介します。

子どもの貧困と進学率

 2012年時点の厚生労働省の調査では、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合は16・3%と6人に1人に上る。14年の全世帯平均の高校進学率は98・7%なのに対し生活保護世帯は91・1%にとどまり、大学・短大進学率は全世帯の平均51・2%に対し、18・5%と低い。

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

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【生きる 働く 第15部】孤立させない 生活困窮者<4>家族丸ごと支えて、連鎖を断つ

 夕方。長机が並ぶ畳敷きの部屋に子どもが集まってくる。中学生が「数学分からんかった」と期末テストの感想を交わし合う。その隣では小学生が足し算の宿題。10を超えると指が足りない。「指貸そうか」。先生役の支援員が手を差し出した。

 福岡県中間市は6月からこの場所で「子どもの学習支援事業」を始めた。週2回、生活保護世帯や家庭に事情を抱えた14人の小中学生が通う。

 昨年4月に施行された生活困窮者自立支援法の対象は大人に限らない。学習支援は経済的に苦しい家庭の子どもに無償で勉強を教え、世代をまたぐ「貧困の連鎖」を防ぐことを目指す。

 市から事業の委託を受けるNPO法人抱樸(ほうぼく)の社会福祉士、中間あやみさん(32)は「強みは勉強だけでなく、家族丸ごと支援する仕組み」と語る。

 中学生の娘が通う30代の母親も、最初は市の自立支援の窓口を職探しの助言を求めて訪れた。会社員の夫の稼ぎだけでは家計が苦しく、娘は月3万円かかる塾を少し前にやめていた。

 母親は面接の練習などの就労支援を受け、秋から電子部品の工場でパート勤務を始めた。家計の見直し法も教わり、外食が多かった食費の切り詰めに努力する。「暮らしの見通しが立って、ほっとしました」。母親の心に生まれた余裕を感じ取ったのか「娘さんの表情も明るくなった」と支援員は思う。

    ◇      ◇

 「子どもの貧困」が社会的に注目される中、国も対策に力を入れ始め、文部科学省が進める学習支援「地域未来塾」(全国約2600カ所)や、民間主導の「子ども食堂」など、家庭に事情を抱えた子どもの学びの場や居場所づくりは各地に広がってきた。

 ただ親も含めた支援までは十分に手が回らないのが現状で、自立支援制度の子どもの学習支援には、親向けの就労支援や家計相談支援との相乗効果が期待されている。

 福岡県久留米市は、学習支援の場に通う子の保護者との面談や、家庭訪問にも積極的に取り組んでいる。

 「子どもが頑張る姿を見ると、しっかりしなきゃと思うようですね」。担当の今岡結希さん(30)は、職探しをあきらめていた親がハローワークに通い始めるなど、子どもへの支援が保護者の前向きな行動につながるケースを目にしてきた。

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 日本ではこれまで、生活が著しく困窮したときに頼れる制度は生活保護しかなかった。自立支援制度は、その手前で自立につなげる仕組みで、法律で福祉事務所があるすべての自治体にワンストップの相談窓口設置を義務づけた。

 ただ本年度の事業費は612億円ほどで生活保護の3兆8千億円とは比べようもない。予算や人手が壁となり、窓口を開いた902の自治体の取り組み具合には差がある。学習支援も事業費の半分を自治体が負担する任意の事業で、実施しているのは47%にとどまる。原則、個人への現金給付が認められないため、子どもの食事や会場までの交通費は民間の支援が頼りだ。

 非正規雇用が広がり、所得減に直面する子育て家庭が増え続ける。「ちゃんと」働く。「きちんと」暮らす。そうした価値観は、大人になって、いきなり身に付けるのは難しい。

 「子どもや貧困世帯への投資は、長い目で見れば、社会を支える働く納税者を育てることにつながるんです」

 「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク世話人で名古屋大大学院の中嶋哲彦教授(教育学)は、生活困窮者への支援は社会投資だと強調する。そして変わるべきは支援される当事者だけでなく、社会そのものだとも。 

 「生活に困っている人に『働け』と言っても、今は『働いても貧困』という現実が待っている。非正規に依存した雇用環境の見直しや、転職でキャリアアップできるような仕組み作りも併せて考えなければ根本的な対策にはならない」

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 【ワードBOX】子どもの貧困と進学率

 2012年時点の厚生労働省の調査では、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合は16・3%と6人に1人に上る。14年の全世帯平均の高校進学率は98・7%なのに対し生活保護世帯は91・1%にとどまり、大学・短大進学率は全世帯の平均51・2%に対し、18・5%と低い。


=2016/12/09付 西日本新聞朝刊=

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