ワードBOX

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

内密出産制度

 ドイツで2014年に施行された妊産婦支援の制度。性暴力の被害者、経済的事情や宗教的理由などで妊娠を周囲に知られたくない女性が相談機関に実名を明かした上で、医療機関では匿名で出産する。子は16歳になると出自を知る権利を得る。ドイツでは以前から「赤ちゃんポスト」を設置する施設や、匿名での出産を受け入れる病院があったが、子どもの「出自を知る権利」を保障するため、内密出産制度が設けられた。

2018年01月31日更新

【関連記事】

内密出産 法の壁 慈恵病院初会合 熊本市「国の法整備必要」

 親が育てられない新生児を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営している熊本市の慈恵病院と同市は30日、妊婦が匿名で出産し、子は一定期間後に出自を知る権利を得る「内密出産」の導入について、初の意見交換をした。

 会合は非公開で行われ、市側は「現段階で一地方自治体、一病院だけでの運用は困難。国による法整備が不可欠」と指摘。病院側は「危険な孤立出産の回避のためには悠長に構えていられない。できれば現行法の解釈で受け入れたい」と主張しており、立場の違いが鮮明になった。

 会合後、記者会見に臨んだ蓮田健副院長は「現行法の解釈で解決できるか法務省に確認したい。(新たな)法の成立に5年、10年もかかるなら内密出産を望む多くの妊婦が(支援から)こぼれてしまう」と訴えた。

■母の情報保全先未定 無戸籍の子生む恐れ

 熊本市の慈恵病院が検討する「内密出産」の受け入れについて、法律の専門家は必要性を認めた上で、現行法での運用は困難との見方を示す。内密出産を想定しておらず、子が無戸(国)籍になる恐れがあり、母親の個人情報を長い期間、適切に保全する機関もないためだ。市も法改正や制度化を求めているが、国の動きは鈍く、国民的な議論も深まっていないのが現状だ。

 慈恵病院が参考にしているのは、ドイツが2014年に導入した制度だ。妊婦は公的相談機関にのみ実名を明かし、病院では仮名で出産する。子は16歳になると出自の情報を開示する請求権が得られ、母親が拒否した場合は家庭裁判所が可否を判断する。子の出自を知る権利と、母親の身元を秘匿する利益の双方に配慮する仕組みとなっている。

 同院側は07年に開設した「こうのとりのゆりかご」と同様、現行法の運用での導入を検討しているが、戸籍法に詳しい熊本市の由井照二弁護士は「不可能だ」と否定的だ。

 ゆりかごでは、子を預けた親の身元が分からないため、子を「棄児」とみなし市長が子どもの戸籍を作ることで、戸籍法上の問題をクリアしている。しかし内密出産は、生まれた子の母親が判明しているため、棄児とみなして病院側が出生を届ければ「違法になる」(由井弁護士)という。子の戸籍や国籍問題について帝京大の高橋由紀子教授(ドイツ家族法)は「内密出産で生まれた子はドイツ国籍を有する」と法律で定めた同国を例に「国籍法など関連する法律の改正が欠かせない」と強調する。

 実現に向けては、内密出産に踏み切るべき状況なのか妊婦の相談に専門相談員が応じたり、出産後の母親の個人情報が外部に漏れないよう管理したりする組織や体制整備も課題となる。中央大の鈴木博人教授(家族法)は「中立的な専門の支援機関がないと、金銭が絡む不適切な特別養子縁組のあっせんなどにつながりかねない」と懸念する。

 厚生労働省家庭福祉課の担当者は「今後、諸外国の法制度についてまずは勉強したい」としており、法整備に向けた具体的な動きはないという。

【ワードBOX】内密出産制度

 ドイツで2014年に施行された妊産婦支援の制度。性暴力の被害者、経済的事情や宗教的理由などで妊娠を周囲に知られたくない女性が相談機関に実名を明かした上で、医療機関では匿名で出産する。子は16歳になると出自を知る権利を得る。ドイツでは以前から「赤ちゃんポスト」を設置する施設や、匿名での出産を受け入れる病院があったが、子どもの「出自を知る権利」を保障するため、内密出産制度が設けられた。

=2018/01/31付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]