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介護保険優先原則

 障害福祉サービスに相当するサービスが介護保険サービスにあれば、介護保険の利用が優先される。65歳以上は原則、介護保険の被保険者になるため、高齢者が使い慣れた障害福祉サービス事業所を利用できなくなる例があった。障害者施設の入所者は介護保険が適用されない。2018年度の制度改正で「共生型サービス」が創設され、障害福祉、介護保険のどちらの事業所でも指定を受ければ、障害者と高齢者双方に通所介護や訪問介護などを提供できるようになった。

2018年07月05日更新

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 6月下旬、福岡市早良区内野の一軒家。麦わら帽子をかぶり、タオルを首に巻いた男性3人が一心不乱に、庭の雑草を抜き取っていた。「取った草はここに集めましょうか」。同じ格好をした女性スタッフ2人が汗をぬぐい、声を掛ける。

 男性たちは、知的障害者の生活介護事業所「くれぱす」(定員30人、同区東入部)の通所者。日中活動の一環として「お助け隊」と銘打ち、1人暮らしや老夫婦など地域の高齢者から困り事の依頼を受け、主に庭の草取りなどを請け負う。

 くれぱすも、同区南部の介護や医療の事業所でつくる「さわら南よかとこネット」に名を連ねる。

 ●感謝を励みにして

 お助け隊は2011年の開所当初から開始。同ネットに入った16年4月、本格的にPRを始めた。費用は半日で500円、1日千円。同ネットのケアマネジャーの事業所やいきいきセンター(地域包括支援センター)の仲介により「口コミもあって依頼が増えました」と、生活支援員の灘香織さん(26)。依頼は2年間で計26件。草取りは梅雨前と9月の彼岸の頃が多く、約半数はリピーターだ。

 おととしから何度も利用している70代の女性は、地元の住宅団地の一戸建てに1人暮らし。足を手術したのを機に頼むようになった。

 「ここの葉っぱ取ってと言ったら『はい!』って…もう素直で、気持ちが純真」と目を細める。作業終わりにお菓子を渡すことも。「安いし、1~2時間できれいにしてくれる。今後もお願いするつもり」

 長時間の作業や他人との関わりが苦手な通所者もいるが、灘さんは「地域の方にダイレクトに感謝の気持ちを伝えられ、やはり励みになるようです」。自信にもつながっている。

 ●働くモデル事業に

 くれぱすはもともと「施設の通所者が地域の中で働くことを目指している」と、同じく生活支援員の古屋貴啓さん(29)。障害が重ければ、飲食店や工場などへの就労はハードルが高い。草取りなどお年寄りの生活を手助けする活動を事業化し「重度の方でも、地域に出て働けるモデルにできないか」と夢を語る。

 同ネットに加わったのも、積極的に地域に関わる姿勢に賛同しただけではなく「介護の事業所での清掃実習などにつながっていけば」との思いもある。

 ただ一番大きいのは、今は20~40代半ばの通所者がいずれは高齢者になること。国の制度は原則、65歳になれば障害福祉サービスではなく介護保険のサービス利用が「優先」となり、介護の施設に移るケースも出てくる。「やはり今からは施設同士のつながりが必要じゃないかと考えて」-。

 ●見聞広めてほしい

 1985年に開園した知的障害者の支援施設「早良厚生園」(入所定員50人、同区重留)は今、入所者の平均年齢が64歳、最高齢は92歳。入所施設は「65歳ルール」の適用外だが「自分で歩いたり食べたりできなくなれば次の生活の場は高齢者施設になる」。施設長の枡田充生さん(61)はそう考え、同ネットに加盟した。

 急に高齢者施設を探しても空きがあるとは限らない。園の職員にも、今後は高齢者施設と同じような介護技術が求められる。同ネットの介護職員らと情報交換し「見聞を広め、スキルを磨いてほしい」と願う。

 枡田さんはかつて、別地域の支援施設で勤務。障害者のグループホーム(GH)を立ち上げようとした際、地元に異論もあった。「もともと地域に出てきていないのに、なぜここにGHかと言われて」。障害のある人たちと、支え手の事業所の存在を、まず住民に知ってもらうこと。それが地域全体の理解につながると痛感したという。

 障害があっても、高齢者でも。自立した生活が送れる人も、施設に移る人も。「ライフステージに応じた暮らしの選択肢を提供できたら」。地域の多職種とも手を携え、試行錯誤が続く。

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 【ワードBOX】介護保険優先原則

 障害福祉サービスに相当するサービスが介護保険サービスにあれば、介護保険の利用が優先される。65歳以上は原則、介護保険の被保険者になるため、高齢者が使い慣れた障害福祉サービス事業所を利用できなくなる例があった。障害者施設の入所者は介護保険が適用されない。2018年度の制度改正で「共生型サービス」が創設され、障害福祉、介護保険のどちらの事業所でも指定を受ければ、障害者と高齢者双方に通所介護や訪問介護などを提供できるようになった。

=2018/07/05付 西日本新聞朝刊=

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