ワードBOX

※ワードの説明及び記事の内容は更新日のものです。

ユマニチュード

 体育学の教師だったイブ・ジネストとロゼット・マレスコッティのフランス人2人が考案した。尊厳を重視するケアは「バリデーション」など他にもあるが、相手との関係を円滑にする接し方だけでなく、入浴や歩行など生活全般の動きを支える技術として体系化したのが特徴。妊産婦などケアが必要な全ての人に応用できる。ユマニチュードの研究や普及を進める「ジネスト・マレスコッティ研究所」(フランス)は欧米9カ国に国際支部を設置。日本にも2014年に置き、24の医療・介護施設が導入を進める。名称は「人間らしさ」を意味するフランス語の造語。

2018年07月06日更新

【関連記事】

【ユマニチュード 普及進む】<上>認知症の人へ 400超す接し方 仏のケア技法 尊厳を重んじ 愛情を伝える

 認知症の人の尊厳を重視するフランス発祥の認知症ケア技法「ユマニチュード」が、国内外の病院や介護施設で広がりつつある。「見る」「話す」「触れる」「立つ」の四つの基本行動を柱に400以上の接し方の技術があり、介護拒否や暴言、歩行困難などの症状の改善につながっているという。在宅介護でも実践でき、福岡市は全面的に市民に広げる活動を始めた。技法と導入の取り組みなどを、2回に分けて報告する。

 病室のドアを3回ノックする。間を置いてまた3回。さらに1回。中に入るとベッドの端をまたノック。そしてようやく語り掛けた。「こんにちは、また来ましたよ」

 福岡市東区の原土井病院。ユマニチュードの認定インストラクターで、作業療法士の安武澄夫さん(33)がケアの様子を見せてくれた。ベッドには認知症で寝たきりになった要介護5の女性(80)。手足は関節が曲がる拘縮が進む。

 あおむけに寝た顔に自分の顔を正面から20~30センチまで近づけた。手のひら全体で肩や背中に触れる。膝の裏に手を当て「足を上げましょう。お手伝いします」。腕も上げる。「今、腕を上げています、大丈夫?」

 週2、3回のリハビリの日。終わりに「今日はありがとう、また来ますね」。女性は小さくうなずいた。

 女性は当初、大声で介護を拒んでいた。長女(59)は「病院の方に『来るな、帰れ』とか『触るな』と言って。今は本当に穏やかになった」と驚く。

    □   □

 次のリハビリは要介護5の男性(70)。10年ほど前に若年性認知症と診断された。入院当初は大声を出したり、ベッドで暴れて下に落ちたりしていた。

 同様にノックを繰り返して病室へ。「お元気ですか?」。正面から視線を合わせ、車椅子に乗せる。食堂に移り、拘縮した手足を手のひらで支えて上げる。常に穏やかな声を掛けた。

 病室に戻る途中、「ここから歩きましょう」。男性が車椅子から立ち上がるのを介助する。2人がかりで腕を下から支え、足を進める。男性はケアで穏やかになり、介助があれば歩けるようにもなった。

 以前の立ち上がり介助は、相手と抱き合うように両脇の下から腕を入れ、腰をつかんで持ち上げるようにしていた。今は腕や肘を手で下から支え、相手が立つ動きを妨げないようにする。安武さんは「自分で立つ感覚を引き出すのです。そのケアには人間関係づくりが必要ですが、ユマニチュードの技術で可能になりました」。この日の2人もケアを許容する範囲が増え、負担が軽くなったという。

    □   □

 安武さんが実践しているケアは、基本行動である四つの柱に基づく。

 認知症の人は視界の中心しか認識できないことがある。「見る」で相手の正面に入り、近い距離で目を合わせたのは、このためだ。「話す」では認知症の人が今、何をしているか分かっていないことがあり、ケアの様子を実況中継のように語り続けた。広い面積でゆっくり触れると愛情が伝わるとして、「触れる」では手のひら全体を当てる。「立つ」は骨粗しょう症予防などに有効で、自力で歩くよう手を引かなかった。

 ノックの繰り返しも、意識の度合いが明確でない認知症の人に、誰かが来たことを知らせる技法の一つ。こうした400以上の接し方を技術として確立したのがユマニチュードだ。

 この病院は技法の導入を進め、今は全11病棟のうち6病棟で看護師などが学ぶ。看護部の中島治美課長(58)は「認知症の人との関係がよくなった。以前は患者さんが中心、尊厳を大切にと分かっていても、重度の方は動かさない方がいいとも思っていた。病院側が中心のケアになっていたのかもしれない」と語った。

    ×      ×

 【ワードBOX】ユマニチュード

 体育学の教師だったイブ・ジネストとロゼット・マレスコッティのフランス人2人が考案した。尊厳を重視するケアは「バリデーション」など他にもあるが、相手との関係を円滑にする接し方だけでなく、入浴や歩行など生活全般の動きを支える技術として体系化したのが特徴。妊産婦などケアが必要な全ての人に応用できる。ユマニチュードの研究や普及を進める「ジネスト・マレスコッティ研究所」(フランス)は欧米9カ国に国際支部を設置。日本にも2014年に置き、24の医療・介護施設が導入を進める。名称は「人間らしさ」を意味するフランス語の造語。

=2018/07/06付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]