アメリカン・エキスプレス特別セミナー「未来店舗会議 今、わたしが街にお店をつくるなら」開催レポート!
「I’m donut ? (アイムドーナツ ?)」や「AMAM DACOTAN(アマムダコタン)」といった大人気店でシェフ・経営者として活躍する平子良太氏と、福岡市で「台所ようは」「食堂ミナトマル」を手がける大塚瞳氏らが語り合う、アメリカン・エキスプレス特別セミナー「未来店舗会議 今、わたしが街にお店をつくるなら」(西日本新聞社主催、アメリカン・エキスプレス共催、福岡市後援)が10月28日、福岡市中央区の大名カンファレンスで開かれた。抽選で選ばれた50人の来場者は、メモを取りながら熱心に話に聞き入っていた。司会はDJ LUE氏。

人気店のスタートと店づくりの発想法
―まずは平子さんと大塚さんのそれぞれの歩みを聞かせてください。
平子 パスタ食堂から始めて、パン店とドーナツ店を福岡と東京で展開しています。パスタ店を営む中で、パンも手作りしたいと始めたのがパン店「AMAM DACOTAN」です。次に出した「ダコメッカ」は、パンの"メッカ”、つまり聖地になればという願いを込めて、福岡に唯一の店舗をつくりました。
そして、「I’m donut?」は、パン生地をオーブンで焼くのではなく、違う調理法でおいしいものを生みだそうという発想からできた生ドーナツの店です。いつか専門店を出したいと思っていたところ、東京・中目黒の商業施設で何かやってほしいと相談を受けて、出店しました。さらに、スタッフたちが未来を想像して働けるように、多店舗展開を視野に入れたパン店の新ブランド「ダコー」を立ち上げました。

peace put 代表取締役兼オーナーシェフ
平子 良太氏
ひらこ・りょうた 1983年長崎県生まれ。高校卒業後、長崎のホテル、東京のイタリア料理店や和食店で研さんを積む。福岡のイタリア料理店で料理長を務め、2012年「パスタ食堂ヒラコンシェ」を独立開業。その後イタリア料理店、ドライフラワーショップ、ベーカリー、ベーカリーカフェなど多分野にわたって店舗展開を進めている。生ドーナツ専門店の「I’m donut?」は、米ニューヨークに出店予定など、世界にも挑戦し始めている。
大塚 もともと出張料理人として、好きな土地で数日限定の食空間をつくるイベントを十数年やっていました。でも、コロナ禍で動けなくなったとき、店をやってみないかと声をかけてもらい、2020年秋から店舗を持つようになりました。
今は福岡市で2店、佐賀県唐津市で1店の飲食店をやっていて、4店舗目を改装しているところです。最初の「台所ようは」はすでにあった店をリノ ベーションして、唐津はスケルトンから造るなど、どれも違う雰囲気になっています。
―どうやって最初の店を立ち上げたのでしょうか。
平子 先のことをあまり考えていないタイプだったので、100万円の軍資金のうち50万円で店を全て手作りしました。柱を壊したくて500円のハンマーで友達と1日中柱をたたいていたら、ハンマーの根元が折れて…。お金がなくて、とにかく予算をかけずにスタートしました。
大塚 私も同じ感じでした。1店舗目は古いアパート内の、数年前まで中華料理店だったところでした。ホームセンターでペンキを買うところから始め、塗ってみたら髪にいっぱいペンキが付き、シャンプーしても取れなくて。本当に自分がやれるか心配で誰にも告げず、アシスタントと2人で立ち上げました。

pupil代表取締役・料理家・食空間演出家
大塚 瞳氏
おおつか・ひとみ 1981年福岡県生まれ。料理上手でおもてなしを大切にする祖母や母の影響で、幼い頃から料理や客礼に興味を持つ。大学在学中の2004年、居心地の良い空間で過ごす食のひと時をテーマに会社を設立。「出張料理人」として、気に入った土地に数日限りの食空間を演出するイベントプロデュースを十数年間行い、店舗や特産品のメニュー開発、プロデュース、フードコンサルティング、雑誌などの執筆を行う。「台所ようは」店主。
―店のコンセプトはどのように作られたのですか。
平子 「ヒラコンシェ」というパスタ店は、フランスの田舎町のパスタ食堂がコンセプトでした。「AMAM DACOTAN」は、こんな店があったらうれしいというパン店にしました。おいしいというパン屋を聞いて休みに日に行ってみても、内装や雰囲気でがっかりすることが何度かありました。
私はスタッフがパンを焼く様子も含めて、かわいいパンの世界観が好きなので、できる限り工程が見えるようにするなど、お客様目線にこだわりました。またゲームに迷い込んだ主人公のように、ワクワクする仮想の世界に没頭する感じを表現したつもりです。
大塚 出張料理人の時は、立派な空間をつくってもほんの2、3日で壊してしまうし、料理も食べたらなくなっていました。お客様は料理以外の、場所やテーマなどにも面白さを感じて来てくれていたのです。だからこそ、ずっと同じ場所で同じ状態で店をやることに勇気が出ませんでした。でも何度も話を頂いて悩んだ末にやることに決めました。
私の場合は先に物件が決まっていて、そこのキッチンを磨き、もともとあった調理器具でメニューを考えました。
日本のお客さまをまずは大事にしたい
―最近、海外からのお客さまが増えて、飲食業界は大きな追い風ではないですか。
平子 インバウンドは多いですね。友人が東京で店を出す際、値段設定について相談されたので、「誰に向けて出すのか、どのくらい将来を見据えているのか」を聞きました。数年だけのつもりなら海外の方向けの値段設定でいいけど、末永くと思うなら、日本の人がどう思うのかがポイントではないかと。ここはあくまで日本で、インバウンドを意識しすぎると本末転倒になってしまうと思っています。
大塚 うちはあまりインバウンドを意識していません。外国に行ったとき、店のメニューなどで親切にされた記憶もなくて。日本はすごく親切だからこそ、どこまでやればいいか終わりが見えない。ご飯は食べたら良さが分かりますし、頼んでみたら違うものがきたという経験も、私の中では面白い思い出になっていますから。
津釜 日本のお客様を大事にするのはもちろんですが、最近では世界各国から弊社の会員の方が日本に来て、カードを利用されています。会員の方は旅慣れている方が多く、インバウンド向けのレストランより、日本の食通が行く路地裏にあるような店を知りたいとのことで、お薦めリストを作っています。
また、弊社のカードを取り扱う店に、多言語の指さしボードを無償で提供しています。よく使う会話が英語と中国語と韓国語で書かれていて、質問や答えを指させば通じるようになっています。

アメリカン・エキスプレス加盟店事業部門
マーケティング アジア太平洋地域 副社長
津釡 宜祥氏
つがま・のりよし 2008年アメリカン・エキスプレスに入社。14年よりオーストラリア・シドニーオフィスにて、日本・アジア太平洋地域の数々のブランド・キャンペーンなどの発表に携わる。20年、日本で広報担当副社長に就任し、広報、ソーシャルメディア、ESG戦略などを統括。22年より現職。加盟店向けのマーケティングなどをアジア太平洋地域で統括し、マーケティング施策を通したカード利用の促進を行っている。
―キャッシュレス対応についてはいかがでしょう
平子 「I’m donut?」の東京・原宿店は駅前にあり、海外の方が多くて小銭を使い、待ち時間が長くなっていたため、完全キャッシュレスにしました。収益アップにつながり、スタッフの給与に還元できています。
大塚 うちは現金もカードも両方対応できるようにしています。
津釜 日本ではコロナの影響も大きくて、キャッシュレス対応の店舗がものすごい勢いで増えています。お客さまが簡単に決済できることで消費の後押しになっているのはもちろん、小規模の店舗にとっても、現金を扱う煩雑な作業がなくなるため、どんどん増えているのでしょう。日本では消費の4割がキャッシュレスで、韓国では8、9割ですから、さらに進むとみています。
お金もうけではなくワクワクするものを
―挑戦を続けるために、どんなことに気を付けていますか。
平子 先のことを考えすぎないようにしています。最初に話したように、店を出したのには全て理由があって、一歩ずつ進んできました。例えば、フランス・パリでカツカレーがはやっているから出店しようとか、突拍子もないことはやりません。
お金もうけではなく、自分にしかできないワクワクするものをつくりたかったわけで、自分はなぜ店をやりたいのかを考えることから始めるのが店づくりだと捉えています。
―未来の会社や店づくりに関して考えていることをお聞かせください。
平子 最近、社名を「peace put(ピースプット)」に変えました。うちの職人たちが誇りを持って作ったものが、その地域の人をうれしく豊かにして、その結果、平和にしたいという思いを込めて名付けました。
スタッフには独立の道があるし、僕らの会社でしか見えない景色もあると思います。より広い世界が見えるようにすることが会社の役目であり、選択肢を増やしていきたいと考えています。
大塚 私は昔から横町が好きで、北海道の小樽や帯広で仕事をしたとき、横町を見つけて1軒15分と決めて全部巡ってみたら、どの店もそれぞれ良かったんですよ。今は1店舗を充実させようとしているけど、いつか横町みたいに「隣の店にも行ってみて」みたいな空間をつくれたらいいですね。
SHOP SMALL® とは

「SHOP SMALL®」(ショップスモール)は、2010年にアメリカン・エキスプレスが米国で始めた、加盟店、行政、NPO、企業が連携し地域コミュニティーの中小ビジネスを支援し、経済の活性化を促す取り組み。現在ではカナダや英国、オーストラリア、シンガポール などにも広がり、各国の大統領や州知事も参加するなど、世界中で社会的な運動として定着している。日本では、17年横浜市で日本版「SHOP LOCAL」(ショップローカル)としてスタートし、翌年から全国に拡大した。20年、コロナ禍での中小加盟店応援では総額 1億米ドル(約110億円)以上を投資し、日本では約10万店の加盟店が参加、21年は、特に厳しい状況にあった飲食店の加盟店支援を行った。
アメリカン・エキスプレスについて
1850年に米国ニューヨーク州にて創立したグローバル・サービス・カンパニーです。個人のお客様向けには多様なライフスタイルをサポートする商品やサービスをお届けし、法人のお客様向けには経営の効率化を実現しうる経費管理やデータ分析のツールを提供し、大規模/中堅企業や中小企業、個人事業主にいたるまで幅広いビジネスの成長を支援しています。日本では、1917年(大正6年)に横浜に支店を開設して事業を開始し、現在では世界200以上の国や地域に広がる独自の加盟店ネットワークとトラベル・サービス拠点を通じ、最高品質のサービスを提供しています。