福岡信用金庫、2025年9月に創業100周年/第4回 しんきん合同商談会で得られたもの
2025年9月に創業100周年を迎えた福岡信用金庫。福岡、佐賀、長崎3県の13信用金庫が「合同」で中小企業間のビジネスマッチングを行う、異業種商談会「しんきん合同商談会」(第8回)同年が11月にマリンメッセ福岡(福岡市博多区)で開かれた。地域に根差す福岡信用金庫が商談を取り持ち、その信頼性と成約率の高さから回を追うごとに出展企業が増えている。参加企業の一つ、エフユーの古江健人社長と福岡信用金庫薬院支店の佐方悠成主任に、商談会の感想や手応えについて聞いた。(文中敬称略)
障がい福祉事業と地域金融機関が連携
―エフユーの沿革や事業内容、強みをお聞かせください。
古江 起業したのは2022年4月です。障がいのある方の社会復帰を支援する就労継続支援B型事業所「にじいろキャリア」を福岡市南区弥永と同市博多区雑餉隈の2拠点で運営しています。弥永ではコーヒーの製造や販売、雑餉隈では動画編集に特化した業務ができる環境を提供し、利用者の社会復帰までをサポートしています。どちらの事業所も1日あたりの利用定員は20人で、登録者は約三十数人ずついます。
佐方 「にじきゃり珈琲(コーヒー)」というオリジナルブランドを展開されていますよね。私も飲ませていただきましたが、とてもおいしかったです。
古江 ありがとうございます。豆を手で一粒ずつ選定するハンドピッキングから焙煎(ばいせん)、包装まで一貫して行っています。利用者が自分の特性に合った関わり方を見つけて、各工程に手間をかけることで品質アップにつなげています。
佐方 動画編集業務は、地域の少年野球チームから活動紹介動画の制作を受注するなど、良心的な価格と高いクオリティーが好評とか。事業所には動画編集技術を指導する職員がいらっしゃいますね。
古江 スクールや職業訓練校で動画編集技術を学んだ職員が、利用者向けの教材プログラムを開発して指導しています。教材を活用して学べば誰でも基本的な動画編集ができるようになり、作業の対価も得られるので、技術習得と収入アップの両面から支援できます。
スピード感のあるマッチングが実現し、ワクワクしている
―合同商談会に参加して、どんな手応えを感じましたか。
古江 出展企業は福岡しんきんの取引先ばかりなので安心感があり、初対面でもお互いに話しやすかったです。事前マッチングを利用して、弊社と協業しやすそうな企業とのコーディネートと情報提供をしてもらえたので、9月末には商談予定の企業を4社に絞り込めました。商談会までに提案資料を用意する時間があったので、資料作成を職員に任せ、提案書の作り方を学んでもらうところから始めました。職員数人で課題を洗い出し、ロールプレイを重ねて提案書をブラッシュアップしました。人材を育てる、会社を底上げするチャンスにもなりましたね。
佐方 コーヒーの製造・販売と動画編集、それぞれの事業に分けて商談先を選定したことが好マッチングにつながりましたね。商談する企業に合わせて提案資料を作られていて驚きました。そこまで準備される企業は珍しいと思います。個別対応が功を奏してトントン拍子に話が進んだのではないでしょうか。
古江 商談したポテトチップスのメーカーさんとの間でコラボ商品の企画が持ち上がり、商談1週間後には試作品をいただきました。コーヒーの香りとしょっぱいポテトチップスがこんなに相性がいいなんて、新発見でした。まだ商品化の検討段階ですが、スピード感のある連携にワクワクしています。
佐方 各信用金庫から高校生が1ブースずつ出展していて、部活動として地域課題解決に取り組む高校生との商談も好感触でしたね。次世代の感度の高いビジネスセンスに目を見張りました。
古江 私たちは障がいのある方が働ける社会にしたいという思いがありますから、課題解決のために?コラボレーションをしませんかと提案しました。例えば、商品のシール貼りなどの軽作業や動画配信チャンネルやSNSを使った発信など、いろいろな関わり方ができます。
信頼関係をもとに中長期的な支援を
―合同商談会での気付きや、福岡しんきんならではのサポートについて聞かせてください。
古江 日々の営業活動ではつながる機会のない企業と出合えました。例えば、コーヒーを扱う同業他社が、豆を自動洗浄する技術の特許を取って機械を制作していました。雑味の少ないコーヒーを製造するための発想や技術について、興味深く話を伺いました。
佐方 福岡しんきんとしては、競合他社同士であっても有益な情報交換ができる商談会にしたいと考えています。参加企業にとって事業成長のきっかけになる出合いや情報を得ていただきたいです。
古江 融資や商談会だけではなく、中長期的なサポートもしてもらえます。福岡信金が発行する経営者向け情報誌に記事を掲載いただき、全国に広報するチャンスを得ました。また、26年のイベントで配布するコーヒーを700セット発注してくださったほか、百貨店のイベント出展を実現する“パイプ役”にもなってくださっています。知名度向上や販路開拓など、親身になって成長を後押ししてくださることがありがたいです。
佐方 お困りごとがあれば、まず相談してもらえる信頼関係を大切にしています。福岡信金のネットワークを活用して解決できそうなことがあれば、できる限りお応えしたくて。
利用者と企業が共に成長し社会課題解決へ
―エフユーと福岡しんきんは、互いの未来にどんな期待を寄せていますか。
古江 施設利用者は単なる作業をするのではなく、「おいしいコーヒーを届ける」という一つのゴールをみんなで目指しています。動画編集も同じで、一人一人が小さなステップアップを重ねることで、商品とサービスの質が向上します。今後は利用者がスキルアップできる環境を整えて、個人の成長へのモチベーションも引き上げたい。会社が事業拡大する姿を見せれば、職員と利用者の上昇志向も高まります。そこに良い循環を生み出していきたい。福岡しんきんには“人”を見て支援してくださる頼れるパートナーであり続けてほしいです。
佐方 「にじいろキャリア」の商品やサービスが、福岡市内だけでなく県外や全国へ広がって、障がいのある方が自分らしく働く姿が当たり前になっていくように、店舗の広域展開を目指していただきたいですね。スタートは創業融資でしたが、今後はブランドを拡大する支援に力を入れていければと考えています。将来的に事業規模が大きく成長していけば、多様な人がより働きやすい社会、希望のある未来を実現できると思います。