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岩田産業グループが取り組むSDGsと地域活性化の新たな挑戦

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岩田産業グループ
2024/6/3 16:102024/6/3 16:10 更新)

 食品、酒類の業務用卸事業や宅配ピザのピザクック事業を手がける岩田産業グループ(本社・福岡市博多区)。九州・山口全域で事業を展開して創業52年を迎え、地域の農家や飲食店が抱える社会課題にも応えようと、新たな経営の軸にSDGsを据える。携帯アプリを通じた農家の働き手不足解消や、若い世代から募るSDGsアイデアコンテストといった新たな取り組みを打ち出す岩田章正社長と、協業する三つの企業の幹部が集い、同社とSDGsとの関わりについて語り合った。(文中敬称略)

【対談者】
岩田産業株式會社 代表取締役社長 岩田章正氏
西日本シティ銀行 取締役常務執行役員 小湊真美氏
コカ·コーラ ボトラーズジャパン株式会社 九州地区統括部長 関敬介氏
株式会社アグリトリオ 代表取締役社長 石川浩之氏

コロナで見つめ直す

岩田 今回、私が皆さんとお話したかったのは、企業が活動する上で、いまや不可欠となったSDGsの取り組みについてです。
 各社の取り組みはさまざまでしょうが、当社できっかけになったのはコロナ禍です。2020年に緊急事態宣言で多くの飲食店が休業する中、食品卸事業がどうなるか見通せず、取引先である飲食店に、賞味期限が迫った商品を販売している時に起きたクレームからです。

岩田産業株式会社 代表取締役社長 岩田章正氏

 飲食店のオーナーから「こんな大変な状況で、安くても買えるわけがないじゃないか」というお叱りを受けて、「はっ」としました。日頃、「お客様の繁盛のお手伝いのために」や、まずは相手のことを考える利他の精神が重要と言っていましたが、苦しくなった時に、実は自分たちのことしか考えてなかったことを思い知らされ、猛反省しました。コロナ禍でも、自社の事業活動を通じて、お客様や社会の課題を持続的に解決するSDGsの考え方について真剣に考え始めることになる出来事でした。

コロナ禍の折、皆さんの会社の状況はどうでしたか。

小湊 金融は経済活動の「血液」と言われる通り、お金の流通なくしては経済が成り立たないので、コロナで人流が止まり、経済が停滞することで、社会に大きな混乱が起こる可能性がありました。そのような中、融資によるお取引先支援やお客様が安心して銀行をご利用いただけるよう、店舗を消毒したり、窓口に間仕切り板を設置したりするなどの工夫をしました。
 また、コロナ禍に、SDGsの視点で取り組みを開始したこととして、「フードドライブ活動」があります。この活動は当行の行員が使い切れない食材を集めて子ども食堂などに寄付するもので、フードロスに資する一方で、未来を担う子どもたちへの支援にもつながっています。

 コロナ禍で、外食業界が厳しくなると同時に、自動販売機事業は、オフィスで働く人たちが在宅勤務となり、学生さんもオンライン授業に切り替わって職場や学校に通わなくなりました。自宅との間にある駅やバス停を利用する人が減少し、売り上げも減少しました。現在でも在宅勤務を続ける企業もあり、働き方は多様化していると感じます。環境の変化に合わせ自動販売機を設置する場所や方法を変えていく時期なのもかもしれません。

石川 当社は20年4月に、愛知県豊橋市にある輸送用機械器具の製造・販売の大手上場会社である武蔵精密工業の社内スタートアップ企業として創業しました。私の出身地でもある豊橋市周辺は農業も盛んですが、農家の人手不足は深刻な課題であり、何か解決する手法はないかと考える中で、生産者と働き手をマッチングするアプリサービスを思いつき、社内で提案、採用されました。コロナ禍で創業お披露目パーティーもできず、厳しい状況でのスタートでした。

岩田 飲食店が閉店する中、私たちはSDGsを経営のベースにすることを社内で宣言しました。経営スローガンに「食を通じて九州を元気に!」を掲げ、自社の企業活動を通じてお客様や社会の課題を解決する持続可能な事業モデルを作る検討を始め、SDGs委員会も立ち上げました。従来から九州の生産者を応援する6次化産業支援に取り組んでいたので、SDGsに対する社内の理解はスムーズに進みました。
 しかしながら、日本には多くの課題があります。世界最速で少子高齢化に伴う人口減少社会が到来しています。ウクライナ侵攻や、ガザ情勢などで食料安全保障の観点もクローズアップされています。食料自給率の低下は深刻で、農業従事者の高齢化や後継者不足は、すぐに解決しなければならない問題です。
 社内では、もっと日本の将来の課題解決につながることをしなければならないという使命感が芽生えてきました。そのような中、西日本シティ銀行から「未来リーダーズ」プロジェクトの話を頂きました。

小湊さん、このプロジェクトを始めた理由をお聞かせ下さい。

西日本シティ銀行 取締役常務執行役員 小湊真美氏

小湊 22年9月、西日本シティ銀行と、西日本新聞社、RKB毎日放送、電通九州の4社が協力し、地元福岡のSDGsに取り組む企業を応援するプロジェクトとして始めました。
 SDGsは30年までに17の持続可能な開発目標を達成することが求められています。その頃、大人になっている子どもたちに「未来リーダーズ」として地元企業を取材してもらい、働いている大人から会社の理念や事業内容、SDGsへの取り組み状況などを聞き、子ども目線で情報を発信することで福岡、そして九州全体にSDGsの気運を高めようというのがプロジェクトの狙いです。
 プロジェクトのスタート直後である1期目の一番始めに、岩田産業グループにご賛同を頂きました。グループが経営している「ピザクック」の製造現場を「未来リーダーズ」が記者として取材し、「地元の食材を食べてほしい」という生産者の願い、そして九州産にこだわって食材を選び消費者のことを考えながら地産地消を進めている会社の理念に共感したという内容の記事が出来上がりました。グループでSDGsを意識しながら地産地消や食品提供に取り組んでいる企業姿勢が、子どもたちにも、広く社会にも伝わったのではないかと思います。このプロジェクトはいま、4期目を迎えました。

岩田 「未来リーダーズ」の記事の中で、「食べてSDGsを応援」という言葉がありました。九州産食材をたくさん食べれば、生産量を増やすことができる。そうすると耕作放棄地も少なくなり、農家の方は収入が増える。食料自給率は高まり、食料安全保障の課題解決もできる。また、光合成が活発化して生産する作物の二酸化炭素の吸収も増えることにつながる。九州産を食べることはSDGsにつながる、と子供たちから気付かされました。ご紹介のように、岩田産業グループのほとんどのオリジナル商品は九州産素材を使用しています。今やっている仕事のほとんどがSDGsの項目に当てはまることにも気づかされました。私たちの仕事に対するプライドについて、再認識することにつながりました。

参加した子どもたちのコメント。 ピザクックでは福岡県産の食材を中心にピザを作り、地産地消を進めている

 子どもたちから素直に出される意見によって、大人が気付かされることは多いですね。本当にそう思います。

農業に寄り添う役割

岩田 九州の人口は日本の10%ですが、農産物の生産割合は日本の20%を占めるため、フードアイランドと呼ばれています。ただ、農家の高齢化や、人手不足は進むばかりです。たまたま見ていたテレビで、アグリトリオが開発したマッチングアプリ「農How」が紹介されていました。この仕組みならば、私たちの食品卸業の根幹にある農業と、生産者の課題を解決することができるのではないかと思いました。流通主体の立ち位置から、今までダイレクトでのつながりがなかった生産者側に寄り添い、生活者の方をクルー(働き手)としてマッチングする。結果として、私たちの事業の主力業態である外食、中食産業の方と、生産者の方、生活者の方をマッチングすることで「三方よし」ではなく、「四方よし」のウィンウィンの関係づくりができると思い、私たち岩田産業はアグリトリオと業務提携しました。

株式会社アグリトリオ 代表取締役社長 石川浩之氏

石川 岩田社長から直接手紙が届いたのを契機に、お互いの熱い思いを語る中で、岩田産業と業務提携することは、親和性が高いと思いました。「農How」アプリは、繁忙期に人手不足で困る農家と、隙間時間に農作業を手伝いたい人をつなぐシステムです。主な働き手は30~50代の主婦や、副業をしたいという人たちです。登録した農家からすれば、求人にかかる手間や費用を減らせます。その一方、農作業の内容は、アプリ上の動画等の作業マニュアルで確認できるため、未経験者でも不安なく作業に臨むことができます。

岩田産業が作成した「農How」のPR用チラシ

 良い物を大量に作るという点では、製造業も農業も一緒ですが、作業マニュアルの有無が決定的な違いです。そこに製造業の知見を入れ、簡単な作業であれば誰でも農業ができる動画のマニュアルを作り、「農作業の見える化」につなげ、多くの人が気軽に働ける状況にしました。今はアプリに登録する農家と、働き手の双方を増やすのが大きな目標です。

岩田 農業の生産者の方を幅広く募り、働き手も登録する。どちらも一緒に増やしてくバランスが大事ですね。
 当社のSDGs委員会では、業務提携する中で、「農How」アプリの告知方法についても議論し、コカ·コーラ社が展開している支援型自動販売機が話題に上りました。自動販売機にアプリの情報を全面ラッピングすることで、生活者の方に告知することができ、同時に、売上の一部を農業支援として寄付する画期的なモデルです。まずは九州各地にある当社事業所に、コカ·コーラ社が配置する自動販売機のラッピングを取り入れようという話になりました。


関さん、支援型自動販売機のお話を伺えませんか。

コカ·コーラ ボトラーズジャパン株式会社 九州地区統括部長 関敬介氏

 アフターコロナの時代に合った自動販売機の役割が必要だと言いましたが、自動販売機は、飲料水で喉の渇きを潤すだけでなく、さまざまな役割を担うことができます。中でも支援型自動販売機は、オリジナルデザインをラッピングすることで、さまざまな取り組みを啓発・PRし、売り上げの一部を設置先が希望する団体に活動資金として寄付することができる自動販売機です。岩田産業の場合、ラッピングで「農How」アプリをPRしつつ、売り上げの一部を農業支援に寄付するフローになりました。時代に合ったSDGsの取り組みの一つであり、当社としても好事例となりました。岩田産業の事業所には、計14台のラッピングした支援型自動販売機を設置させていただいたところです。

岩田産業グループ本社に設置される寄付型ラッピング自動販売機の一つ

小湊 コカ·コーラ社の自動販売機に「農How」アプリのラッピングやアグリトリオさんとの協業を示すデザインを施したことで、両社の社員さんのコミュニケーション促進と、岩田産業グループの「食を通じて九州を元気に!」というスローガンが社内でも浸透されインナーブランティングにつながったのではないかと思います。自分たちの会社が、社会の課題解決に本気で取り組んでいること、挑戦していることを、その自動販売機を見るたびに自覚すると思います。

岩田 社員全員で課題解決しようとする会社を目指しています。まずは、小さな1歩ですが、自社で継続できるよう取り組んでいきます。

石川 全国的に見ても、コカ·コーラ社の自動販売機と「農How」アプリがコラボした事例はありません。アプリのさらなる告知につなげるため、岩田産業の取り組みを他県にも広げていきたいですね。

 そうですね。アプリは全国が対象ですよね。支援型自動販売機全体にラッピングする事が難しい場所もありますが、自動販売機の正面にはA3程度のポスターを貼れます。そこに「農How」をPRするポスターを貼ってもいいかもしれません。もっと生活者の方、農家で働いてみたいという人の目に触れるよう、お手伝いの方法を考えていきます。

岩田 私たちとコカ·コーラ ボトラーズジャパンの事例を、私たち自身も広げていく努力をしていきます。今年10月で設置からちょうど1年となるので、自動販売機の売り上げと寄付額が確定し、SDGs委員会で寄付する団体を選定していきます。

企業のアプリ活用も

岩田 アグリトリオの「農How」アプリによって、福岡県、佐賀県のコメ、イチゴ、ブドウ、トマト、はたまたウサギの餌の草など、多岐にわたる農家さんに登録をしてもらい、新たな出会いとご縁を頂いています。
 当社では、自分たちが経験しなければ、他の方にも説明ができないと考え、「アグリトリオ・農業の日」を制定し、年2日間、社員が農作業に従事するようにしています。またアプリに登録して有給休暇や休日に農家で副業することも推奨しています。私も社員とともに農作業をしていますが、日本の農業の課題を肌で感じます。

アプリ利用者の一人である、「ゆう美果樹園」さんとの一枚
社長自らも足を運び、生産者の思いを受けとめている

 アプリは、個人としてだけでなく、私たちのように企業で登録するという活用法もあります。西日本シティ銀行のウェブ媒体である「colabora」で一度、九州における農業課題の解決のため、私たちが一緒に取り組む企業を探していることが取り上げられました。

小湊 colaboraは九州の企業によるSDGsの各社での取り組みを、当行のHPで記事化し紹介しているものです。登場していただいた際、「農How」アプリが九州における農業の課題解決策の一つになっていると紹介いただき、その中で登録農家が100人、働き手が1,000人前後とお聞きしました。colaboraでは、岩田産業の社員さんが実際に農地に出向いて知り合った朝倉の柿農家の話が紹介されていますが、高齢化・人手不足といった社会課題の解決のため、人とデジタルで真剣に向き合っていることが明確に伝わり、頭が下がります。

石川 岩田産業のような企業がなければ、日本の農業は行き詰ってしまいます。自ら現場に入って体感して、それをどう解決するのか。その先は農業生産法人を含めて、デジタルも活用しながらやっていくということですよね。岩田産業には、ぜひ、先頭を走ってもらいたいと心から願っていますし、応援したい企業です。

若者や食を支える方からアイデアを募集

岩田 先ほど、未来リーダーズによる「食べてSDGsを応援」という言葉がありましたが、それが大きなヒントとなり、「作って、食べて、SDGsに参加!食を通じて九州を元気に!」を新たなスローガンにしました。
 その新スローガンを掲げ、今年新たに取り組むのが「SDGsアイデアコンテスト」です。SDGsが掲げる17の目標からテーマを選び、「食」に関連した社会課題の解決につながるアイデアを、「高校生」「専門学校・大学生」「外食産業、中食産業」の3部門から募ります。

創業以来、初の公募型コンテストを実施。
「食を通じて九州を元気に!」をキーワードにさまざまなアイデアを募集している

 例えば、長崎県の対馬には「バリ」という雑食の魚がいます。藻を食べるため、そこに生息するウニは餌がなくなって育たず、厄介者扱いされています。また、臭みがあるので、釣ってもすぐ捨てられます。しかしながら、きちんと処理すればおいしく、一部のホテルではフライにしてフィッシュバーガーとして提供されました。
 コンテストでは、パワーポイント10枚以内に、このような暮らしに身近なものや、地元の生産者の課題を解決するアイデアを募集します。若くて柔軟な発想を集め、岩田産業が一つでも、二つでも持続可能なビジネスモデルとして実現できれば、若い人たちと一緒に九州を元気にしていくことができるのではないかと思います。

小湊 当行は、九州博報堂と共同開発したオリジナルのSDGs啓発型カードゲームでアイデアを発想する子ども向けイベントを数多く実施しています。子どもたちからはびっくりするくらい素晴らしいアイデアが次々に飛び出します。企画されているアイデアコンテストでも課題解決につながるアイデアが数多く出てくるのではないかと思います。コンテストで選ばれた優秀なアイデアを実装しビジネスモデル化すれば、未来を担う若い人がSDGsや食についてより深く考えるきっかけになるので、人財育成にもつながると思います。良いアイデアをビジネスモデル化する際は、ぜひ私たち銀行にもお手伝いさせていただければと思います。

 私たちも教育現場の方々と接する機会があるので、SDGsコンテストのPRをさせていただければと思います。第1回目のグランプリを獲得した内容をHPなどで紹介すれば、次の参加につながりますよね。

石川 九州の農産物を若い人たち自身が、作って、食べて、という発想が大事ですよね。愛知県の農家さんからも幼少期から農業に触れるなど教育が大事だと伺ったことがあります。こういうコンテストという形で取り組むことによって、楽しみながら社会課題の解決につながり、色々なアイデアが出てくるだろうなと思います。

岩田 今日は皆さんとお話をしながら、貴重なご意見と、さらに次の展開につながるアイデアをたくさん頂きました。これからも「食を通じて九州を元気に!」というスローガンをベースに「農How」アプリやSDGsアイデアコンテストを通じ、弊社が進めるSDGsの取り組みを注目してください。皆さん、本日はありがとうございました。

 (※7月4日締め切り、9月18日最終審査会のアイデアコンテストに合わせ、岩田産業では引き続き、今回のような企画を予定しています)

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