投資と金融リテラシーを考えるシンポジウム「金融・資産運用特区『福岡』」~資産運用立国と私たちのくらし・ライフプラン~
投資と金融リテラシーを考えるシンポジウム「金融・資産運用特区『福岡』」が5月26日、福岡市・天神のアクロス福岡で開かれた。第1部は金融庁、ふくおかフィナンシャルグループ、日本FP協会から3人が登壇。特区となった福岡県・市の強みや可能性、人生設計を踏まえた資産形成についてそれぞれの立場から語った。第2部は特別ゲストを交えた5人のパネルディスカッションを展開。少額投資非課税制度(NISA)の年間投資枠拡大など、投資による資産形成が期待される今、「貯蓄から投資へ」の取り組みや金融経済教育の重要性について意見を交わした。1、2部とも、モデレーターはアイドルグループの元メンバーで投資歴約10年、現在は経済番組の司会を担当するAFP認定者・武藤十夢氏が務めた。
主催/日本FP協会 共催/西日本新聞社 後援/金融庁/金融経済教育推進機構(J-FLEC)
■モデレーター 元AKB48/AFP認定者 武藤十夢氏
【第1部】 金融・資産運用特区「福岡」について語る
アジアのゲートウエーとして…金融庁総合政策課長 池田賢志氏
「金融・資産運用特区」は、国内外の金融・資産運用企業の集積促進や成長分野への資金供給強化を目的としており、福岡(県・市)、大阪(府・市)、東京(都)、北海道(道・札幌市)の4地域が指定されています。
特区に指定された福岡県・市は、アジアに近く、歴史的にも結び付きが強い、日本におけるアジアのゲートウエーです。スタートアップ(新興企業)支援の施策によって企業の集積が活発に進んでおり、地理的には災害時の金融バックアップセンターになり得るという強みもあります。こうした強みを包含する「特区福岡」には今後さまざまな投資機会が生まれ、成長していくと期待しています。
新NISA開始を契機に「貯蓄から投資へ」の動きが加速しています。この動きをより確かなものとするために、政府は「長期・積立・分散」投資を推奨しています。国民の金融リテラシーを高める取り組みを進めるとともに、個々のライフステージに応じた資産運用ができるよう、NISAの活用をどう進めていくかについても丁寧に検討していきたいと考えています。
経済発展とともに高まる投資熱…ふくおかフィナンシャルグループ取締役社長 五島久氏
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、地域に「真のゆたかさ」をもたらすため、二つの重点テーマに取り組んでいます。
一つは、「地域の産業振興」です。地域企業の成長支援とともにスタートアップ支援に注力しています。スタートアップについては、「スタートアップ都市ふくおか」宣言から10年間で、創業支援施設「Fukuoka Growth Next」を利用した起業が800社を超えました。開業率は18年から6年連続で政令指定都市のトップです。FFGはこの動きに対して220億円に上るファンドを運営しています。
もう一つは「人々のゆたかな生活の後押し」です。窓口での説明に加え、学校や職場での金融経済教育を通じて資産運用の必要性や分散投資のメリットなどをお伝えしています。福岡銀行のNISA口座開設数は現在、地方銀行で全国一です。半導体受託生産大手のTSMC(台湾積体電路製造)の熊本県進出は、10年間で23兆円の経済波及効果を九州にもたらすと想定されていますが、そうした中、投資熱の高まりにも手応えを感じています。「投資は怖い」と抵抗がある人にも丁寧な説明を重ね、時間を味方にしてじっくりと育てる投資のメリットを知っていただき、皆さんの「ゆたかな」生活をサポートしていきます。
人生設計を考えて資産形成を…日本FP協会理事長 白根壽晴氏
日本FP協会は1987年に設立された組織です。会員数は全国で約20万4000人、47都道府県に支部があります。家計を管理し、将来の人生設計を考えて必要な資産を形成していくファイナンシャルプランニングの普及啓発活動をしています。
人生100年時代と言われる中、2019年に「老後20~30 年間で1300万~2000万円が不足する」との試算が発表されました。「2000万円」という数字が独り歩きして、多くの方が漠然とした不安を抱えています。しかし、この数字はあくまでもモデルケースです。
では、ご自分の場合はどうでしょうか。給与、退職金、年金などの収入と年間の支出額を書き出し、80歳、85歳、90歳になった時、資金に余裕があるのか、あるいは不足するのか。「見える化」してご自身のライフプランをしっかりと見極め、ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現することが大切です。
政府は今、国民がライフプランを考え、自らの金融リテラシーを高めて資産形成につなげることを国家的な戦略としています。日本FP協会は全国各地でお金の専門家であるFPによる無料の相談会やセミナーを実施していますので、ぜひご自身の金融リテラシー向上に役立ててください。
【第2部】 パネルディスカッション~特別ゲストを迎えて
特区福岡で企業を呼び込む施策が多数実現
■<特別ゲスト>ジャーナリスト・東京科学大特命教授 池上彰氏
武藤 福岡県と市、そして九州の経済的な魅力はどこにあるとお考えですか。
池上 まずは、半導体受託生産大手TSMC(台湾積体電路製造)の熊本県への進出ですね。地価も最低賃金も上昇し、シリコンアイランド復活と言われていますし、産業の集積は学問や大学の集積につながります。
池田 既に特区では出資関係の規制緩和や海外企業向けの多言語サポート窓口の開設など、投資を促進し、新たな企業を呼び込む施策が多数、実現しています。
五島 企業の持続的な成長によって賃金が上昇し、それが投資資金へ、その投資資金が企業の成長投資に、そしてさらなる企業の成長へと循環していく。地方銀行として、このような地域経済の好循環を主導していきたいと思います。
武藤 金融庁が提唱する「貯蓄から投資へ」。これを加速させるための取り組みとは。
池田 政府は長期・積立・分散投資を推奨しています。世の中の平均に投資すると、長期的には世界の経済成長に伴って、あるいはそれを上回るくらいのリターンも見込めるのです。
白根 投資にはリスクがあると敬遠されがちですが、実は、金融経済の世界で言うリスクは危険・損失ではなく「不確実性」を意味します。投資を始める段階の期待収益率に対して、結果が下振れすることもあれば上振れすることもある。この不確実な変動の幅をリスクと言います。このように正しく理解することが重要です。
武藤 家計の金融資産の構成比を見ると、日本は現金・預金が圧倒的に多く投資はまだまだ少ない。欧米とは大きく異なります。
池上 そもそも金融教育が違う。米国で日本の家庭科に当たるのは「ホームエコノミクス」=家庭の経済。子どもたちは投資の仕方も学びます。日本でもようやく高校の家庭科で投資などを教えるようになりましたが、教師自身の金融経済教育も必要ですね。
リテラシー向上へ金融経済教育の推進を
武藤 池上さんはSNSの「なりすまし投資詐欺広告」に名前を使われたことがありますね。
池上 私が投資情報の宣伝をすることは絶対にないですし、そもそも「必ずもうかる」とか「元本が確実で年利20%」なんてあり得ません。しっかりと金融教育を受けていれば、このような詐欺被害も防げると思います。一方で、気になるのが証券口座乗っ取りの被害多発ですが、この対策はいかがですか。
池田 パスワードの管理が不十分なことも一つの原因です。パスワードと生体認証というように複数の認証要素を組み合わせる多要素認証を勧めています。
五島 生体認証や自動生成のワンタイムパスワードなど、セキュリティー対策に日夜取り組んでいます。金融機関や行政が、電話やメールで口座番号とパスワードを聞くことは絶対にありません。そのことをしっかりと認識していただきたい。
白根 「うまいもうけ話は全て詐欺」が基本です。
武藤 金融リテラシー、金融教育が大切だということですね。
池田 昨年、政府や日銀を中心とする組織、金融経済教育推進機構「J-FLEC」が設立されました。将来のライフプランを考えて上手に資産形成していくための金融経済教育の司令塔として、講師派遣やイベント、個別の無料相談などを展開しています。
白根 その個別相談「はじめてのマネープラン」を担当する認定アドバイザーのおよそ85%がFPであり、日本FP協会が認定しているCFP®・AFP資格保有者が多く活躍しています。
五島 地域の金融リテラシー向上は、私たちの使命です。昨年、福岡県の委託を受けて、他の金融機関と連携して全ての県立高校95校で出前授業を実施しました。その他、小学生から高校生までの職場体験の受け入れや、お取引先の社員向けのセミナーなどを実施しています。これからも他社と連携して、地域の金融リテラシー向上に積極的に取り組みます。
武藤 最後に特別ゲストの池上さんから九州、福岡の皆さんへメッセージをお願いします。
池上 東海道新幹線のアナウンスは日本語と英語だけですが、九州新幹線に乗ると中国語、韓国語も流れ、「アジアのゲートウエー」を実感します。TSMCや金融・資産運用特区によって産業の集積が高まれば科学技術や学問の集積にもつながり、アジアの若者たちが最先端の研究を目指して九州へやって来ます。アジアや世界に開かれた九州、人とモノを引きつける九州にしていくことが、福岡県・市の経済発展にもつながるのではないでしょうか。