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校則も、スマホも、生徒と共に変えていく。共学化を機に始まった「新しい学校づくり」

2026/3/16 8:002026/3/16 8:00 更新)

発表する中村学園女子高校の生徒

 「校則は誰のためにあるのか」。2026年4月から共学化を控える中村学園女子中学校・高等学校(福岡市)で、生徒自身が「みんなにとってより良い学校とは何か」を考えるプロジェクトが動いています。校則や行事、学校の発信のあり方について考え、学校側に直接提言する初めての試みです。

 「共学化」という大きな変化を前向きに捉え、悩みながらも自分たちの手で学校をつくろうと奮闘する生徒たちの姿を追いました。

生徒30人が挑む「新しい学校プロジェクト」

昼休みや放課後に集まり、テーマごとに議論を重ねた生徒たち

 プロジェクトが始まったのは2025年6月。「共学化を機に、生徒自ら学校の課題を見つけ、解決する力を身につける機会にしてもらいたい」と企画されました。

 参加したのは、立候補した約30人の生徒たち。議論するテーマも生徒たちが設定しました。

 「校則・制服」「学習環境・放課後自習」「スマートフォンの使用とキャッシュレス決済」「行事」「生徒広報」の5つに絞り、昼休みや放課後を使って約8カ月にわたり議論を重ねてきました。

 提案に向けて生徒たちが意識したのは、「なぜ今のルールや運用になっているのか」その背景や理由を理解したうえで提案すること。教職員に直接質問し、ルールの背景や過去の経緯も調べたといいます。

 単なる個人の要望で終わらせないために、なぜそれが必要なのか、メリット・デメリット、実現可能性まで整理し、プレゼンテーションの内容を練り上げました。

「自由には責任が伴う」校則の変更とスマホの議論

資料を示しながら、スマホの使用・キャッシュレス決済のメリット・デメリットを整理して提案内容を説明する生徒

 迎えた2026年2月下旬のプレゼンテーション本番。石丸篤志校長や、新学校の設置準備に携わる樋口浩二先生らを前に、各班が提案を発表しました。

髪型の自由化

髪型の自由化について、懸念されることについて解説する生徒

 最初に発表した班のテーマは「校則と制服」です。
「横髪や後ろ髪が耳のラインを超える場合にはヘアゴムで結ぶ」という校則の一文をスクリーンに投影し、生徒たちは「髪型の自由化」を提案しました。


 生徒たちがまず示したのは、ヒアリングで集めた学校側が持つ懸念点。「前髪や毛先が気になって集中力が下がる」「清潔感が損なわれるかもしれない」といった先生たちの声を紹介したうえで、自由化について次のよう提言しました。

 「体育や調理実習、式典では、肩につく場合は髪を結ぶ。それ以外は自己判断に任せる」

  「ルールを『守らされるもの』から『自分たちで守るもの』へ変えたい」と力を込める生徒たち。単に「自由にしてほしい」と求めるのではなく、校則の目的を理解したうえで、よりよい形を探って出した答えでした。       

キャッシュレスとスマホ
 

 「スマートフォンの使用とキャッシュレス決済」をテーマにした班は、現金のみの対応となっている食堂の長蛇の列を解消するため、キャッシュレス決済の導入を提案しました。

 さらに「授業でタブレットを使っているのに、スマホだけを特別視する必要があるのか」と問いかけ、スマートフォンの校内所持・使用の解禁についても踏み込みました。具体的には「スマートフォンの使用を昼休みや食堂付近に限定し、目的は決済のみ」とする案です。違反者は使用禁止というルールも盛り込みました。

 「社会に出る前に、適切な金銭管理を身につける練習にもなる」と教育的な意義を説明し、教職員の現金管理の負担が軽くなるといった学校側のメリットにも触れています。

提案に耳を傾ける石丸篤志校長(左)と樋口浩二先生

  提案を聞いた樋口先生は「学校側も決済方法について課題は感じているので、キャッシュレス決済の実現は近いうちに可能だと思います」と前向きな姿勢を示しました。
一方で「スマホの所持と使用を提案するなら、むしろ昼休みだけで十分でしょうか? 朝の時間や他の休み時間も含めて、もっと掘り下げて、生徒全体の意見を集約してほしい」と、さらなる検討を促す言葉もありました。

行事、広報、学習環境……広がる「新しい学校」へのアイデア
 

 このほかにも、学校生活をより良くするための提案が幅広く示されました。 例えば、インスタグラムで行事の過程や日常の様子を生徒目線で発信する「生徒広報部」の設置案。放課後の過ごし方に関しては、「校内アルバイト制度」の導入も挙がりました。さらに行事では、文化祭を現在の3月から11月に変更し、隣接する中村学園大学と合同開催する案もありました。

 「出てきたアイデアを、学校全体にとってどうなのかという視点で整理し、みんなが納得できる形にまとめていくのが難しかった」と、プロジェクトに参加した川崎李桜さんは振り返ります。

「学校はつくるもの」へ 生徒の意識の変化

提案資料は発表ギリギリまでブラッシュアップした

 「もっと楽しめる学校にしたくて。イベントを増やして、中村学園中学・高校の志願者も増えたらいいなと思って参加しました」と、行事をテーマに取り組んだ野口彩月さん。

 「そのアイデアを聞いた人がどう受け止めるか、他の生徒や全体にとってもいいものなのかを考える大切さに気づきました」と、中越智香さんはプロジェクトを通じた変化をそう語ります。

 すべての発表を聞いた樋口先生は「意外と『ルールを増やす』という条件付きの提案が多かったですが、せっかく校則を変えるならルールをなくしても守れる生徒・学校を目指してほしい。そこまで踏み込んで考えた提案を、ぜひまた聞かせてほしい」とさらなる期待を寄せました。

共学化はゴールではなく、新しいスタート

 生徒たちの提案について、石丸校長は前向きに受け止めています。「実現可能性を踏まえ、しっかり考えられた案ばかり。全校生徒に議論を広げていく際にはまた『生みの苦しみ』があると思いますが、ぜひ具体的に話が進められるよう、あきらめずに取り組んで」とエールを送りました。

 生徒たちの提案は、発表して終わりではありません。 提案内容は新中高設置に関する委員会にて議論され、実際に具体化が決まったものもあります。
 具体化が決まった主な項目は、次の通りです。

  • 食券販売機のキャッシュレス化
    2026年4月より導入決定。あわせてスマートフォンの利用も、学びと安全を最優先として使用可能とする方針
  • 学習環境の整備
    電子黒板や単焦点プロジェクター等の随時更新、拡充
  • 頭髪・制服に関する決まり
    「学習や運動などの活動に適した、清潔感のある状態を保つ」という考え方を前提に、頭髪に関する細かな決まりは撤廃予定。また、靴下等の色指定なども廃止する方針

 このほか、行事に関する要望などについても、設置委員会の各担当部で引き続き検討が進められる予定です。

 「校則を変えてほしい」という一言で終わらせず、どうすれば実現できるかを考え、背景を調べ、議論を重ね、発表という形で学校側に届けた生徒たち。その姿は、すでに「新しい学校」の始まりを感じさせるものでした。

 中村学園中学校・高等学校では、生徒の主体的な学びを後押ししています。今回のプロジェクトで見られた、生徒自身が課題を見つけ、背景を調べ、話し合いながら解決方法を提案する姿からは、そうした主体的な姿勢が日々の学校生活の中で育まれていることがうかがえます。

 2026年4月からは共学化がいよいよ始まります。より多様な価値観が交わるなかで、対話を重ねながら学校をつくっていく営みは、これからも続いていきそうです。

◇    ◇

 2026年4月から共学化する中村学園中学校・高等学校の学校生活や学びの環境に関する詳細は、学校公式特設サイトで紹介しています。

中村学園中学校・高等学校 特設公式サイト

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