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“英語で自分を語れる”中高生が育つ—中村学園が実践する「生きたグローバル教育」

2025/10/31 10:002025/10/31 10:00 更新)

 英語は今の時代に欠かせない力。だからこそ「わが子には話せるようになってほしい」と願う保護者の方は多いと思います。しかし、中村学園女子中学校・高等学校(福岡市)は、単に“話せるようになる”のではなく、英語を通して「考え・伝え・行動する力」「世界へ羽ばたく力」を育むことを目指しています。

 2026年度の共学化を機に、これまで一部クラスで行っていたグローバル教育を全生徒に拡大。立命館アジア太平洋大学(以下、APU)の国際学生と交流する「グローバルキャンパス」を皮切りに、「英語を使って伝える」体験を通じて、世界を理解し、自分を発見する学びが始まっています。

「伝わる」が自信に変わる—グローバルキャンパスで育つ“対話力”

APUの国際学生に母国のダンスを教えてもらい、一緒に踊る生徒たち(提供:中村学園)

 「間違えても安心して挑戦できたので、英語のハードルが下がりました。伝わったときの達成感が大きかったです」と笑顔で話すのは、高校3年の池田桜子さん。高校1年のときに参加した「グローバルキャンパス」で、APUのインド出身の国際学生と身振り手振りを交えて会話した経験をそう振り返ります。

 中村学園が2017年に始めたこのプログラムでは、高校1年生全員が国際学生と英語で交流し、異文化を肌で感じながら「伝える力」を磨きます。

英語を交えて交流を深める中村学園生徒と「アジア架け橋プロジェクト」(アジア高校生架け橋プロジェクト+)にて在籍している留学生とAPUの国際学生(提供:中村学園)


 2025年9月に実施したテーマは「オーバーツーリズム(観光と地域の共存)」。生徒たちは福岡の魅力を海外に発信する英語字幕付き動画を制作。アジア、ヨーロッパ、アフリカなど16カ国の国際学生と英語で意見を交わしながら、地域の課題と世界の課題を結びつけて考えました。

 「APUには英語が母語ではない国際学生が多いので、彼らも砕けた英語で話してくれます。『自分の英語が通じるんだ』という実感を持ってくれる生徒が多いですね」と教育開発部長の西岡隆行先生は語ります。

 中村学園との高大連携を担当するAPU事務局次長の前田さんは「この交流は中村学園の生徒にとってだけでなく、APUの国際学生にとっても大きな学びの機会です」と話します。
「多文化が混じり合う別府で学ぶ彼らにとって、“福岡の中高生”と出会い対話することは、日本社会を多角的に理解するきっかけになります。生徒とのディスカッションは、互いの視野を広げ、次の学びにつながる動機付けとなります」 

 今回2回目の参加という国際学生のMayさんは「外国に直接行かなくても、文化交流ができる貴重な機会です。プログラムを通じて異文化や言語の理解が深まり、オープンマインドな姿勢が育まれたように思います。生徒たちにはダイバーシティに対する尊重・理解を大切にし、世界で活躍してほしい」と話します。

 英語が“教科”から“人とつながる言葉”へと変わる体験。2日間でも、「楽しかった」「もっと話してみたい」という声が多く、その体験が生徒の英語学習への興味や新しい挑戦のスイッチとなっています。

中高6年間で磨く、“使える英語”の力

提供:中村学園

 2026年度の共学化に合わせ、同校は現GIクラスで行っていたグローバル教育を全生徒へ拡大。その土台を支えるのが、中学校から始まる体系的な英語教育です。

 中学英語では、英語の4技能(聞く・話す・読む・書く)をバランスよく伸ばす「ケンブリッジイングリッシュ」を導入。授業はオールイングリッシュで展開します。

 「受験のための英語ではなく、“使える英語”を育てるためにケンブリッジを採用しました。授業内のやりとりもすべて英語で行うので、最初は戸惑っていた生徒も、自然と英語で考えられるようになります」と石丸篤志校長は話します。

 体験型英語学習施設での研修や中学3年時の海外修学旅行など、実際に「英語を使う」体験の場も数多く設けています。

 さらに、仲間と協働して課題を解決する「問題提起型学習(PBL)」を取り入れ、探究学習と英語教育を融合。生徒自身が問いを立て、解決策を英語で発信する姿が日常に根づいています。

海外で見つける、“自分を語る 勇気”

海外の留学提携校での様子(提供:中村学園)

 短期(約3カ月)・中期(約6カ月)の留学制度も充実。独自の留学支援金制度もあり、現地提携校での中期留学では単位認定も可能です。日本での学業を中断せずに海外で学びながら単位を取得でき、現地の文化を肌で感じつつ成長できます。

 高校1年の終わりにカナダへ留学した高校3年の原田怜奈さんは、現地校でカナディアンヒストリーを受講。「“かもしれない”という日本語のニュアンスが通じない文化に驚きました。常に自分の意見を求められることが多く、判断力が上がったと思います」と振り返ります。

 池田さんもまた、グローバルキャンパスをきっかけに、APU主催のグローバルキャンプにも自主的に参加するなど、視野を広げてきました 。「外の世界に出ると、知らなかった考え方 や価値観に出会えて、自分の世界が広がる」と実感したそうです。

  英語を学ぶことが目的ではなく、「自分をどう伝えるか」「どう世界と関わるか」を考える過程が、彼女たちにとっての“自己実現の探究”になっています。       

これからの時代に求められる 力と  

 社会は今、“VUCA(ブーカ)”と呼ばれる先の見えない時代に突入しています。求められるのは、知識やスキルの多さではなく、多様な価値観の中で自分の軸を保ちながら、他者と協働できる力です。

 APUの前田さんは「変化の時代には、英語を含めて『これを身につけておけば安心』という能力・スキルは存在しません。だからこそ大切なのは、変化にしなやかに対応する力、そして環境を前向きに変えていく力です」と話します。

 そして、中高生に向けてこうメッセージを送ります。
 「どんなときも自分の成長を信じる『成長のマインドセット』と、新しいことへ踏み出す『好奇心』を持ち続けてほしいと思います。世界はまだ、驚くほど多くの“知らないこと”であふれています。その一歩が、きっと未来を切り拓く力になるはずです」

多様な世界で、自分を持って生きる力を

石丸篤志校長(左)と西岡隆行教育開発部長

 では、そうした“変化を前向きに受け入れる力”をどう育むのか。その土台となるのが、中村学園が重視する「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン=多様性の受容)」です。

 石丸校長は「グローバル教育の本質とは、英語を教えることではなく、“多様な世界の中で、自分を持って生きる力”を育てることだと思っています。大切なのは『こういう考え方もあるんだ』と相手を理解しつつ、自分の考えをしっかり持つこと。そういう姿勢を身につけてもらうことこそがD&Iの実践であり、本校が目指すグローバル教育の姿です」と力を込めます。

 英語を学ぶことは、世界を知り、自分を見つめ直すこと。生徒たちはその学びを通して、自分の未来を切り拓く、しなやかな力を身につけています。

中村学園中学校・高等学校 特設公式サイト