次なる高度人材の源は“ケニア” 山口産業が挑む“地方発”人材戦略
日本の出生数は2024年、ついに70万人を下回り、少子高齢化による労働力不足が一層深刻化している。とりわけ地方の中小企業にとって、人材確保は喫緊の課題だ。
こうした中、山口県宇部市に本社を置く山口産業株式会社(福重晋作・代表取締役社長)は、株式会社商船三井と連携し、ケニアから高度外国人材を受け入れる取り組みをスタートさせた。国際的な人材獲得競争が激化する中、新しい “海外人材モデル”として注目を集めている。
山口産業が迎えたケニアの高度人材
山口産業は2025年8月、現地での選考を経てケニアから3人の高度人材を採用した。いずれも大学または大学院を修了し、「技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)」の在留資格を取得済み。山口産業グループのシステム開発や経営企画の分野で、即戦力としての活躍が期待されている。
大阪市のグループ社にシステムエンジニアとして配属されたルワテ・ポール・インダさんは「ケニアと日本で学んだ知識を生かして発展に貢献したい」と語る。山口産業の経営企画室に配属されたバラカ・ムネネ・ナンギディアさんも「山口産業での経験を通じて、将来は日本とケニアをつなぐような事業に挑戦したい」と意欲的だ。
なぜアフリカか? ケニアに着目した理由
山口産業がケニアに注目した背景には、グローバルな人材市場の構造変化がある。東南アジア諸国では各国の経済成長に加え、欧米各国との人材獲得競争が激しくなっている。そこで目を付けたのがアフリカだった。
ケニアは英語を公用語とし、高等教育を受けた若者も多い。一方で、国内の雇用機会が限られているため、海外で働くことへの意欲も高い。実際、ドイツやイギリスなど諸外国でも多くのケニア人材が活躍しており、国際的な労働力として注目されつつある。
政府も「デジタル・スーパーハイウェイ」構想を掲げ、全国でデジタル教育を推進。デジタルリテラシーの向上や教育格差の解消にも取り組んでおり、若く優秀な人材の育成を国家的に支援している。
こうした背景から同社は「ケニアの高度人材は、人手不足に直面する日本の現場で即戦力として活躍を期待できる」と評価し、採用に踏み切った。福重社長も「3人にはアフリカとの架け橋になり、いろいろな事業に携わってほしい」と期待を寄せる。
宇部市も歓迎、ケニア×地方企業の“共存モデル”に
2025年8月29日には、宇部市役所にてケニアから来日した2名の新入社員を迎える歓迎セレモニーが開催された。式典には篠崎圭二・宇部市長や、駐日ケニア共和国特命全権大使のモイ・レモシラ氏らが出席し、地域を挙げた歓迎ムードに包まれた。
レモシラ大使は「ケニアの若者は勤勉。彼らが体現する“harambee”(ハランベー:力を合わせる・支えあうという意味)の精神は、宇部市が目指す“共存同栄”のビジョンとも共鳴している」と今後の人材交流の進展に期待を示した。
山口産業が描く国際人材戦略
今回の受け入れを機に、山口産業は海外人材紹介・派遣事業を本格展開する方針だ。すでに2025年4月には「有料職業紹介事業」「労働者派遣事業」の許認可も取得。商船三井などと連携し、国際人材の採用から来日後の生活支援も含めた包括的なサポートする体制も整えている。
今後は自社での人材登用にとどまらず、山口県および中国地方を中心に、人材不足に悩む企業へ高度人材を紹介し、地域経済の活性化と企業競争力の向上を後押ししていく考えだ。
宇部の山口産業で始まったこのモデルは、同様の課題を抱える他地域や企業にとっても参考となるモデルケースとなり得る。山口産業は「彼らの実務での活躍を通じて、今後の海外人材紹介事業の足場を築き、企業と地域社会の双方に価値をもたらす体制づくりを進めたい」としている。
◆山口産業株式会社
本社所在地:山口県宇部市琴芝町1丁目1-25
代表者:代表取締役社長 福重 晋作
事業内容:
・エネルギー/潤滑油供給事業
・サービスステーション事業
・ホームライフ事業
・ヘルスケア事業
・教育・文化事業
・IT事業
・車両事業
・海外人材紹介事業