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【パネルディスカッション・前編】九州新幹線西九州ルート整備促進シンポジウム2025 in 福岡 〜かもめ、その先へ〜

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九州新幹線西九州ルート整備推進協議会
2025/11/7 18:052025/11/7 18:05 更新)

 九州新幹線西九州ルートの整備促進について考えるシンポジウム「かもめ、その先へ」が8月29日、福岡市中央区のアクロス福岡で開かれ、約800人が参加した。西九州新幹線は、2022年9月に武雄温泉―長崎間が開業したが、新鳥栖―武雄温泉の整備方針は未定となっている。シンポは全線フル整備の気運を醸成しようと長崎県内の経済団体でつくる「九州新幹線西九州ルート整備推進協議会」が主催した。

 パネルディスカッションでは、登壇者が九州新幹線鹿児島ルートや北陸新幹線の事例を基に九州新幹線西九州ルートの全線フル規格整備がいかに九州の発展に寄与するか、さまざまな観点から強調した。(文中敬称略)

西九州にインバウンドを呼び込む  ~「行きづらい」を解消~

大久保 まずは日本のインバウンドの現況を、リサーチなさっている松本さんにお伺いします。

松本 2024年のインバウンドは3687万人、消費総額は8.1兆円です。これは25年目標(3188万人超、早期に5兆円)を大幅に上回りました。しかしながら、地方部の宿泊期間は1.36日で目標の2泊を下回り、インバウンド受け入れは地方分散が課題です。

イラスト①②

 訪日国別に回遊ルートをみると(=イラスト①②参照)、米国、豪州、英仏独など欧米系は東京、関西(大阪、京都)のゴールデンルート+広島に集中し、韓国、台湾、中国、タイ、ベトナムなどアジア系はより分散し、九州にも多く訪れています。九州からすれば、欧米系を広島よりさらに西の九州の奥まで行きやすいルートの整備が重要になっています。

 ㈱リクルート じゃらんリサーチセンター 研究員
松本 百加里氏
 

インバウンドやDXに関する研究を推進。「インバウンド都道府県ポジショニング研究」「地図で読み解くインバウンド地方分散研究」「生成AI活用による持続可能なインバウンド観光研究」など発表。上級ウェブ解析士。観光庁専門家派遣事業に専門家として登録。

 

井上 確かに地方におけるインバウンドの成功地域は、雪が魅力の北海道のニセコ、長野の白馬、美術館巡りを有名にした瀬戸内などに限られてます。インバウンドは欧米系であれ、アジア系であれ、圧倒的に個人客です。地方誘致の課題は明確で「知られていない」「行きづらい」「磨かれていない」の3点です。課題が解消されれば地方にもインバウンドが訪れるでしょう。

 長崎国際大学 人間社会学部長 国際観光学科 教授
井上 英也氏
 

1983年に全日空エンタプライズで人事や海外事業に従事。ナイキジャパン、カルフール・ジャパン、日本ロレアル、コーチ・ジャパンなどで人事部門をリード。2016年から長崎国際大学で国際観光学科の教授を務め、2019年より長崎県観光審議会会長として観光振興に貢献。

 

松本 その「行きづらい」を解消する手段として、新幹線は有効です。速く、清潔・快適で遅延がほとんどないからです。新幹線に乗ること自体が日本の魅力を知る体験になっています。

新ゴールデンルート

大久保 そうした中で2015年長野―金沢、24年金沢―敦賀と開通した北陸新幹線は、北陸地方もインバウンドにどんな影響を与えたのでしょうか。

コーディネーター テレビ長崎 常務取締役報道局長
大久保 昭彦氏
 

熊本市生まれ。1988年、西日本新聞社入社。東京報道部、都市圏総局長などを経て2017年取締役、24年テレビ長崎取締役、25年6月から現職。

 

松本 インバウンド向けには「ジャパンレールパス」という鉄道や一部バスが乗り放題になる特別企画乗車券があり、全国版だけでなく、地域ブロック版もあるんですが、これまでは東海道新幹線を使うゴールデンルートが人気でした。

 けれども最近混雑するようになり、北陸新幹線ができて北陸ならではの歴史や文化に触れられることもあり、「北陸アーチパス」が後押しする形で「新ゴールデンルート」として東京―北陸―関西に行くルートの利用が増えています=イラスト①参照。

大谷 北陸新幹線沿線だと観光地の金沢の活況が知られていますが、富山では来客数よりも消費額を増やす政策が成果を上げています。富山市岩瀬の古い町並みでは、地元の蔵元が有名料理店を誘致し、客単価2万~3万円の高級飲食店が集まっていて人気です。フランスの俳優のジャン・レノが新幹線で富山を訪れ、高級店で食事をしたそうです。

富山国際大学 現代社会学部 観光専攻 教授
大谷 友男氏
 

 1973年群馬県生まれ。広島大学大学院修了後、九州経済調査協会にて地域経済・社会に関する各種調査に従事。九州新幹線開業の影響について中長期的な視点で調査に取り組む。2021年より現職。経済地理学的視点から観光、交通に関する研究を行う。

 

北本 ニューヨーク・タイムズ紙の「2025年に行くべき52の場所」に、日本から大阪市とともに富山市が選ばれ、注目されたこともあると思います。

富山県 商工労働部 成長産業推進室 立地通商課長
北本 孝登氏
 

 富山県出身。平成9年に富山県庁入庁。平成28年から3年間、商工労働部立地通商課企業誘致係長として企業誘致に取り組む。その後、移住・Uターン促進事業や人事業務を担当後、令和7年4月より現職。

 

松本 北陸が示す通り、新幹線の整備でインバウンドが地方分散の兆しが見えています。欧米系のスキー客は、かつては北海道が主流でしたが、最近は長野県白馬村、新潟県妙高市のスキー場などに分散してきました。

 日本で経験したいスキー、温泉、テーマパークなどに対し、リピーターも増える中で宿泊施設の心地よさ、穴場かどうか、コストパフォーマンスも考慮し、他エリアにシフトチェンジする傾向がみられます。新幹線で「行きやすい」点が追い風になっているのは明らかです。

鹿児島ルートでは激増

大久保 北陸新幹線に先んじて開業した九州新幹線鹿児島ルートの沿線の熊本県のインバウンドは開業前と後ではどんな変化があったのでしょうか。

岡田 劇的に増加しました。熊本県のインバウンド宿泊者数は、開業(2011年)前の2010年が33万人から足元では133万人と約4倍に増加しました。韓国からは24万人から35万人、台湾からは3万人から41万人に増えました。台湾のTSMCが熊本に工場を進出した影響もあると考えられるとはいえ、開業前と後では熊本の風景は大きく変わりました。

公益財団法人 地方経済総合研究所 総合調査部長 岡田 欣也氏  

 1991年4月肥後銀行入行、公務部企画渉外グループ長、県庁支店長含め4カ店の支店長を経験後2025年4月より現職。M&Aシニアエキスパート(一般社団法人金融財政事情研究会認定)。

 

大久保 中でも目を引いた出来事はありますか。

岡田 はい。熊本県出身の漫画家尾田栄一郎氏が描く漫画「ONE PIECE」は世界中で大人気ですが、熊本地震(2016年)からの復興プロジェクトとして、漫画のキャラクターの銅像が県内には10体あります。

 その銅像巡りのために海外のファンも多く訪れています。新幹線が開通し、熊本に来やすいイメージが広がり、唯一無二のコンテンツがインバウンドを引き付けています。

井上 「行きやすい」というのは本当に大事です。24年の九州7県のインバウンドの延べ宿泊者数をみると、熊本、大分両県で300万人超が宿泊し、佐賀、長崎両県では100万人未満です。福岡に入ったインバウンドは東回りをして西九州にあまり訪れていません。

 東九州には良い温泉があると言われますが、西九州にも嬉野、武雄、雲仙、小浜などの良い温泉があり、世界遺産も圧倒的に西九州に多い。観光コンテンツが東九州に負けているとは思えません。 西九州は「行きにくい」と感じられているんですね。これを解消するためにも西九州新幹線が全線フル規格となり「つながっている」と心理的にも認識してもらうことが重要です。

「仁川」の活用も視野に

松本 西九州新幹線が関西まで全線開通すれば、広島から西九州へのアクセスがスムーズになり、平和学習として広島と長崎を結ぶプランが魅力的になります。また、東京からゴールデンルートを通り、九州に入り、帰るために東京や関西の空港まで往復するのは非効率です。

  東アジアのハブ空港である韓国・仁川空港から福岡空港に入り、西九州を回って広島を経て北上し、関西、東京から空路、帰途に就くというルートもアピールしやすくなります。

井上 今観光業界では、その土地ならではのユニークな体験「USP」(ユニーク・セリング・ポイント)の重要性が言われています。偶発性が「私だけの体験」となりますが、偶発性は航空機移動では生まれにくく、途中下車もできる鉄道やそこから派生する自転車や徒歩の移動で生まれやすいです。鉄道は旅の魅力を広げます。

 

▼▼シンポジウム全編は下記の動画から▼▼

 

 

(参考記事)【パネルディスカッション・後編】九州新幹線西九州ルート整備促進シンポジウム2025 in 福岡 〜かもめ、その先へ〜

(参考記事)【基調講演】九州新幹線西九州ルート整備促進シンポジウム2025 in 福岡 〜かもめ、その先へ〜 

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