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【パネルディスカッション・後編】九州新幹線西九州ルート整備促進シンポジウム2025 in 福岡 〜かもめ、その先へ〜

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九州新幹線西九州ルート整備推進協議会
2025/11/7 18:062025/11/7 18:06 更新)

 九州新幹線西九州ルートの整備促進について考えるシンポジウム「かもめ、その先へ」が8月29日、福岡市中央区のアクロス福岡で開かれ、約800人が参加した。西九州新幹線は、2022年9月に武雄温泉―長崎間が開業したが、新鳥栖―武雄温泉の整備方針は未定となっている。シンポは全線フル整備の気運を醸成しようと長崎県内の経済団体でつくる「九州新幹線西九州ルート整備推進協議会」が主催した。

 パネルディスカッションでは、登壇者が九州新幹線鹿児島ルートや北陸新幹線の事例を基に九州新幹線西九州ルートの全線フル規格整備がいかに九州の発展に寄与するか、さまざまな観点から強調した。(文中敬称略)

沿線で産業立地の期待を高める

大久保 新幹線はビジネスにも大きな効果を生みますね。

大谷 国土交通省の「旅客地域流動調査」によると、九州新幹線鹿児島ルート開業前の2010年度、熊本―大阪は73万5千人、鹿児島―大阪は122万人だったのが、23年度はそれぞれ、101万5千人、141万3千人と増加しました=グラフ③参照。

グラフ③

 新幹線は本数の多さに加え、飛行機との価格競争が促され、移動人口増につながったのです。既存のパイの奪い合いではなく、新たな需要を喚起しました。また、山陽3県と熊本、山陽3県と鹿児島の10年度と18年度の旅客変動を比較すると、それぞれ2.12倍、2.27倍になりました。

富山国際大学 現代社会学部 観光専攻 教授
大谷 友男氏
 

 1973年群馬県生まれ。広島大学大学院修了後、九州経済調査協会にて地域経済・社会に関する各種調査に従事。九州新幹線開業の影響について中長期的な視点で調査に取り組む。2021年より現職。経済地理学的視点から観光、交通に関する研究を行う。

 

岡田 熊本県では、まずJR熊本駅周辺の再開発で商業施設、ホテル、高層マンションなどが建設され、開業前からすると見違えるほどです。新幹線開業に伴う経済波及効果は359億円、宿泊業だけでも77億円と試算されています。

 大都市圏への人口流出(社会減)は開業前と大きく変わっていないものの、熊本県のGRP(県内総生産)は最近10年間で1兆円増え、6.5兆円になりました。新幹線開業をチャンスととらえ、熊本県が積極的な施策を打ち出したことも奏功しました。 開業に合わせた関西戦略で誕生した県のPRキャラクター「くまモン」は今も県職員として活躍しています。

公益財団法人 地方経済総合研究所 総合調査部長 岡田 欣也氏  

1991年4月肥後銀行入行、公務部企画渉外グループ長、県庁支店長含め4カ店の支店長を経験後2025年4月より現職。M&Aシニアエキスパート(一般社団法人金融財政事情研究会認定)。

 

大久保 新幹線が開通すると、地方は大都市圏にヒト・モノ・カネが吸い取られるストロー現象が懸念されてきましたが、熊本はTSMC効果もあるとはいえ、そうはなっていませんね。北陸はどうなのでしょうか。

コーディネーター テレビ長崎 常務取締役報道局長
大久保 昭彦氏
 

熊本市生まれ。1988年、西日本新聞社入社。東京報道部、都市圏総局長などを経て2017年取締役、24年テレビ長崎取締役、25年6月から現職。

 

税制優遇制度も寄与

大谷 北陸新幹線も開業前後で鉄道の乗客は約3倍に増えました。飛行機は競争力が弱まり、年間100万人減少する一方、新幹線で鉄道は年間600万人増加し、トータルでは大幅なプラスです。

 開業当初、富山県では、首都圏への大学進学者が増加するのではないかと心配されましたが、むしろ北陸内での進学が増加しています。首都圏が物価高などもあり、暮らしにくいことが背景にあるのでしょう。 富山大学では、関東からの学生数が明らかに増えました。北陸では、福井県立大学が福井駅前に地域政策学部を開設する計画があったり、小松公立大学が駅前広場に面した場所に大学を設けたりしています。新幹線通学を意識し、広域に学生を集める動きです。

大久保 富山県では、新幹線が企業立地をもたらしたと言われています。 一人当たり県民所得を比較すると、佐賀県が全国35位、福岡県が37位、長崎県が43位、富山県は6位です。九州からすると、どんな政策を打っておられるのか参考にしたいです。

富山国際大学 現代社会学部 観光専攻 教授
大谷 友男氏
 

 1973年群馬県生まれ。広島大学大学院修了後、九州経済調査協会にて地域経済・社会に関する各種調査に従事。九州新幹線開業の影響について中長期的な視点で調査に取り組む。2021年より現職。経済地理学的視点から観光、交通に関する研究を行う。

 

北本 富山県は、製造業が全体の産業の25%を占める「ものづくり県」で、日本海側では実質1位の工業集積があり、化学(医療品関係)、非鉄金属(アルミ関係)が主な産業です。

 企業誘致は、新幹線が開業したからだけで進んだわけではありません。開業に合わせて、当時の知事が本社機能移転の税制優遇制度(地方拠点強化税制)の創設を国に働きかけて実現し、それにあわせて首都圏の企業にPRしたところ、非鉄金属メーカーのYKKグループが東京から富山県黒部市に本社の総務部門を移転しました。創業家が富山県出身でマザー工場も富山県内にあるということも有利に働きました。

富山県 商工労働部 成長産業推進室 立地通商課長
北本 孝登氏
 

 富山県出身。平成9年に富山県庁入庁。平成28年から3年間、商工労働部立地通商課企業誘致係長として企業誘致に取り組む。その後、移住・Uターン促進事業や人事業務を担当後、令和7年4月より現職。

 

複数の交通手段で選択

大久保 YKKの本社移転のメリットはどこにあるのでしょうか。

北本 BCP(事業継続計画)の観点から、災害時での拠点分散を検討されたのです。東日本大震災から間もない時期でした。

 富山県と全く縁のない企業でも、例えばハンドクリームのユースキンは医薬品関連のサプライチェーンが富山に多数あったために工場を川崎市から富山県に移転しました。 工場は富山空港にも近く、新幹線の駅からもわりと近いです。飛行機の使えない場合のバックアップとして新幹線で移動ができます。

 医薬品メーカーの陽進堂も新幹線の開業を機に本社機能を富山県内に戻してくれました。新幹線駅ができたことで、バックオフィスや非製造業の企業も立地していただきました。

大久保 陸・空の交通手段が整い、税制の優遇策もあってBCPの観点から企業の移転が相次ぐというのは非常に興味深いですね。首都圏や関西圏の企業の本社の移転・分散先に九州がなってもいいですよね。

大谷 そうですね。大事なことは新幹線ができれば自動的に観光客や企業が来る時代ではないということは共通認識として持つべきです。各地が新幹線を生かして効果を高めるために真剣に考え、トライアンドエラーを繰り返した結果、発展している地域があります。新幹線を契機に地域のことを考え、何より行動することが経済効果を生んでいくと思います。

井上 北陸新幹線でも九州新幹線でもストロー現象は起きていません。観光にとっては、物理的なつながりも重要ですが、それ以上に心理的なつながりが大きな効果をもたらします。 西九州新幹線が全線開業してつながり、つながった地域が観光客に「次の駅で降りたい」「新幹線駅から派生する交通でどこそこに行きたい」と思わせる魅力を磨くことで地域は活性化するでしょう。

 長崎国際大学 人間社会学部長 国際観光学科 教授
井上 英也氏
 

1983年に全日空エンタプライズで人事や海外事業に従事。ナイキジャパン、カルフール・ジャパン、日本ロレアル、コーチ・ジャパンなどで人事部門をリード。2016年から長崎国際大学で国際観光学科の教授を務め、2019年より長崎県観光審議会会長として観光振興に貢献。

 

大久保 新幹線が西九州、九州、そして日本の発展につながるインフラだとあらためて確認できました。西九州新幹線の全線フル規格整備で地域を浮揚させましょう。

 

▼▼シンポジウム全編は下記の動画から▼▼

 

(参考記事)【パネルディスカッション・前編】九州新幹線西九州ルート整備促進シンポジウム2025 in 福岡 〜かもめ、その先へ〜

(参考記事)【基調講演】九州新幹線西九州ルート整備促進シンポジウム2025 in 福岡 〜かもめ、その先へ〜 

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